表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/52

幼馴染

「明ちゃん? 今日も周ちゃんが来てくれたわよ」


 ドア越しに母親の明るい声が聞こえる。


 テレビの砂嵐をぼんやり眺めていた明仁は、母親の声に何の反応も示さない。


 部屋の時計は、午後四時を指していた。


 また学校帰りに、プリントか何か持ってきたんだろうと明仁は予想する。


 明仁の幼馴染の石川周。彼は、理由もなく京一や淳と一緒に明仁をいじめていた。京一が事故に遭い、淳はこの街を去り、そして、明仁自身は自殺未遂を起こして……。明仁は事実を心の中に並べてみる。


「明ちゃん……?」


 明仁が何も返事をしないでいると、やがて母親は諦めて階下へと降りていった。


 明仁は勉強机の引き出しをゆっくりと開ける。引き出しの奥に青いハンカチを見つける。慎重に開いてみると、綺麗に磨かれた果物ナイフが鈍く輝いていた。


 廊下から、パタパタとスリッパで階段を上がってくる音がした。明仁は素早くハンカチでナイフを包むと、引き出しの奥へと戻した。


「明ちゃん? 周ちゃんが持ってきてくれたプリントとお手紙、ここに置いておくわよ。六時になったら、晩ごはん持ってくるわね。今日は明ちゃんの大好きなハンバーグよ」


 「ハンバーグ」と発音した時、母親の声のトーンが少しだけ上がった。明仁の脳裏に一瞬母親の嬉しそうな笑顔が浮かんだ。そして、それは彼の心を激しく苛立たせた。


 テレビのリモコンを乱暴に押してチャンネルを変える。聞き覚えのあるアニメの主題歌が流れ出した。それは、明仁が二年生の時に放送されていた、アニメの再放送だった。


 彼の記憶が、蘇ってくる。


 主人公の少年とロボットが一緒に旅をするストーリー。二人は仲の良い友達同士で、ロボットは少年とだけ会話することが出来た。


 当時の子供たちは皆、そのロボットのプラモデルに夢中になった。明仁と周もまた、毎日のようにアニメの話をしたり、そのプラモデルを一緒に組み立て分解して遊んだ……。


 回想がそこまで進んだところで、明仁は思考回路のスイッチを切るように、テレビの主電源を切った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ