表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/52

りょうと咲子

「りょうちゃん大丈夫?」


「……うん。今日は大分調子いい。明日には学校に行けると思う」


 可愛らしいイルカベースの青いパジャマを着て、ベッドに腰掛けていたりょうは笑ってみせる。


「良かった! あっ、はいっプリント!」


 咲子は鞄から藁半紙に刷られた算数の計算プリントを取り出すと、りょうに手渡した。


「うげぇ~。宿題がたまっていく……また熱出そう……」


 りょうは首を前に倒してうなだれる。そんないつものりょうを見て咲子は少し安心した。


「ねえ、サキ?」


「うん?」


「ふ、深水のバカは……」


 下を向いたままのりょうの声は、不明瞭で聞き取りにくかった。


「え?」


「深水くんは、どうなったの?」


 りょうはポツリと呟くように言った。


「うん……まだ入院中だって、ホームルームで先生が……だから今、みんなで千羽鶴折って、寄せ書き書いてるんだ」


「そう……」


「大丈夫だよ。深水くんいつも元気いっぱいじゃん! きっとすぐ良くなって学校に戻って来るよ!」


「うん。そうだね。深水のバカは、元気だけが取り柄だもんね」


 そう言って無理に笑おうとしたりょうの瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。そして、そのまま声を上げて泣き崩れてしまった。


「りょうちゃん……」


 どう声をかけていいのか分からない咲子は、りょうの隣に座って、ただ背中を優しくさすってあげるだけだった。


「ごめんね……ひっく……ひっく……」


 血だらけで倒れているあの姿を思い出すと、りょうには深水がすぐに良くなって学校へ来るとはとても思えなくて、溢れ出てくる涙を止めることが出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ