↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 38

「…ファラド…」


 私が、その写真に写った人物の名前を叫ぼうとしたところ、


 「…イケメンだな…」


 と、矢口のお嬢様が、腕を組んで言った…


 …なんだと?…


 私は、驚いた…


 この矢口のお嬢様は、私そっくり…


 六頭身の幼児体型で、顔も、ほぼ同じ…


 そんなお嬢様が、この写真のイケメンといっしょになっても、似合わないこと、この上ない…


 爆笑ものだ(笑)…


 このお嬢様は、本当に、自分がわかっているのか?


 ふと、思った…


 もしや、東大を出ているのも、ウソかもしれない…


 ふと、そんな考えが脳裏をよぎった…


 すると、私のそんな表情に、気付いたのか、


 「…矢田…」


 と、いきなり、矢口のお嬢様が、声をかけた…


 「…なんでしょうか?…」


 「…オマエ…もしや、アタシが、このファラドを好きだと、勘違いしたわけじゃあるまいな…」


 「…いえ…そのようなことは?…」


 「…アタシが、このファラドをイケメンだと言ったのは、単なる客観的な意見だ…別に、アタシが、イケメン好きでもなんでもない…矢田…アタシは、イケメン好きのオマエとは違うんだ…」


 矢口のお嬢様が、断言した…


 私は、頭に来た…


 どうして、このお嬢様は、私のことを、それほど、知りもしないくせに、この私をイケメン好きだと、断言するのか?


 それが、疑問だった…


 たしかに、私は、イケメン好きだ…


 しかし、


 しかし、だ…


 それを、こともあろうに、夫の葉尊のいる前で、暴露するのは、いかがなものか?


 頭に来た私は、


 「…そういうお嬢様こそ…」


 と、言ってやりたくなった…


 そして、そう言おうと、私が、口を開きかえると、


 「…プッ…」


 と、目の前で、リンダが、吹き出した…


 リンダが、目の前で、爆笑したのだ…


 なんだ?


 なにが、おかしい?


 私が、なにか、おかしなことをしたのか?


 気になった…


 だから、思わず、


 「…リンダ…なにが、おかしい?…」


 と、私が、言おうとすると、その前に、


 「…リンダさん…なにか、おかしいですか?…」


 と、矢口のお嬢様が、冷静に聞いた…


 リンダは、笑いを抑えながら、


 「…だって、二人とも、同じ顔をして、なんだか、いがみあって…漫才みたい…」


 と、言った…


 …漫才?…


 これは、衝撃的だった…


 実に、衝撃的だった…


 この矢田はいい…


 平凡な家庭の出身だ…


 が、


 このお嬢様は、スーパージャパンのご令嬢…


 金持ちだ…


 この矢田といっしょにされて、激怒するのではないか?


 私は、それを恐れた…


 だから、すぐに、矢口のお嬢様の顔を見た…


 どういう反応をするのか、知りたかったからだ…


 が、


 矢口のお嬢様は、


 「…それは、リンダさんの言う通りです…」


 と、冷静に言った…


 「…同じ顔が二人いる…しかも、他人…血の繋がりもなにもない…その二人が、どういうやり取りをするのか、私が、リンダさんでも、気になります…」


 矢口のお嬢様が、至極、冷静に言った…


 が、


 私は、その言葉を鵜呑みにしなかった…


 その言葉を額面通りに、受け取らなかった…


 なぜなら、以前、この社長室で、この矢口のお嬢様は、私のことを、


 「…葉尊社長…いい女を妻に娶(めと)りましたな…」


 と、褒めた…


 私は、そのとき、それをただのお世辞と受け取ったが、違うかもしれない…


 今、思えば、自分を褒めたいのかもしれなかった…


 ハッキリ言えば、自分そっくりの私を、妻に娶(めと)ったから、葉尊は、見る目があると、言いたいのかもしれなかった…


 もっと、言えば、長身で、イケメンの葉尊が、私を妻にしたから、葉尊は、見る目があると、言いたかったのかもしれない…


 つまりは、この矢口のお嬢様は、イケメン好き…


 もっと、ハッキリ言えば、自分も葉尊のような長身のイケメンと結婚したいのかも、しれなかった…


 私は、それに、気付いた…


 気付いたのだ…


 すると、今まであった、矢口のお嬢様に対するコンプレックスが、きれいになくなった…


 私は、勝ったと、思ったのだ…


 矢口のお嬢様に勝ったと、思ったのだ…


 矢口のお嬢様は独身…


 一方、この矢田は、葉尊という長身のイケメンを夫に持っている…


 つまり、私の勝ち…


 この矢田の勝ちだ…


 矢田は、矢口よりも優れている…


 矢田は、矢口にプラス(+)と、書く…


 だから、矢口よりも優れている…


 私が、考えたことは、間違ってなかった…


 今さらながら、それを思った…


 それが、表情に出たのだろう…


 「…どうした? …矢田?…」


 と、矢口のお嬢様が、不思議そうに、訊いた…


 だから、私は、


 「…別に…」


 と、答えたが、思わず、ニンマリと、笑いだしそうだった…


 矢口のお嬢様の弱点を見つけたのだ…


 「…おかしなヤツだな…」


 矢口のお嬢様は、言って、


 「…このファラドだが、リンダさんは、すでに何者か知っていますね…」


 と、いきなり、リンダに訊いた…


 リンダは、


 「…ハイ…」


 と、頷いた…


 …なんだと?…


 私は、驚いた…


 驚愕した…


 たしか、以前は、このリンダは、この写真の主のファラドは知らないと言っていた…


 このファラドは、リンダ・ヘイワースの熱狂的なファンだと公言していた…


 が、


 それは、ウソ…


 なぜ、それが、わかったかと言えば、リンダ・ヘイワースのファンは、世界中にいる…


 その中には、いわゆるセレブも多い…


 その筆頭が、イギリス王室のウイリアム王子だ…


 つまり、世界中に知られた、セレブたちの間で、リンダ・ヘイワースのファンのネットワークができている…


 要するに、情報網だ…


 そのリンダ・ヘイワースの情報網の中で、サウジアラビアのファラド王子が、リンダ・ヘイワースのファンだという噂が聞いたことがなかった…


 だから、リンダは、ファラド王子が、自分のファンだと公言したのを、ウソだと、思ったのだ…


 …だったら、一体、このファラドは、何者なんだ?…


 と、私は、言いたかった…


 すると、先に、


 「…乗っ取り屋ですね…」


 と、夫の葉尊が告げた…


 「…乗っ取り屋?…」


 思わず、声を上げた…


 すると、リンダが、


 「…狙いは、私じゃない…クール…あるいは、台北筆頭…」


 と、告げた…


 私は、驚いた…


 文字通り、驚愕した…


 「…それって、まさか、クールを乗っ取るつもりか? 台北筆頭を乗っ取るつもりか?…」


 私は、大声で、叫んだ…


 叫ばずには、いられなかった…


 葉尊が、黙って、頷いた…


 私は、それで、この社長室に入って来たとき、どうして、この部屋の雰囲気が、異様に、重苦しいのか、理解した…


 今になって、わかった…


 要するに、このクールが乗っ取られようとしているのだ…


 重苦しい雰囲気に決まっている…


 が、


 なぜ、クールなのか?


 さっぱり、わからんかった…


 だから、


 「…どうしてだ? …どうして、クールが、狙われたんだ?…」


 と、訊いた…


 訊かずには、いられなかった…


 「…外国企業だからですよ…」


 葉尊が、苦々しく言った…


 「…どういう意味だ? 葉尊?…」


 「…このクールは、元は、日本の企業ですが、経営危機に陥り、台湾の台北筆頭の子会社になりました…だから、純粋な日本企業と違って、日本政府も、仮に、クールの買収を、他国の企業が、買収しようとしても、熱心に守ろうとは、思いません…」


 「…」


 「…矢田…このクールは、トヨタとは、違うということだ…」


 矢口のお嬢様が、口を挟んだ…


 「…どういう意味ですか?…」


 「…このクールも大きいが、従業員は、グループを含めても、五万にも満たない…トヨタは、その十倍に近い…」


 「…十倍…」


 「…いや、連結子会社だけでなく、その他を含めれば、もっと多いだろう…だから、そんなトヨタが、外国企業に狙われれば、日本政府も焦る…いわゆる外人が、経営者になれば、本社も、海外に移転するかもしれないし、リストラもまたえげつないものになるだろう…それが、わかっているから、日本政府も、買収をなにがなんでも、阻止しようとする…」


 「…」


 私は、矢口のお嬢様の説明に、言葉もなかった…


 が、


 どうして、クールなのか?


 どうして、クールを買収しようとしているのか、それがわからなかった…


 「…どうして、クールなんだ?…」


 私は、訊いた…


 「…サウジアラビアの改革…」


 今度は、リンダが言った…


 「…改革? …それが、クールの買収となんの関係があるんだ?…」


 「…大ありです…」


 と、葉尊が答えた…


 「…サウジは今、脱石油を目指しています…」


 「…脱石油だと?…」


 「…つまり、石油がなくなった後、どうするかです…」


 たしか、以前も、これと同じ話題になったことがある…


 私は、それを思い出した…


 あのときは、脱石油を目指している、ファラド王子が来日して、クールが、ファラド王子を接待する…


 脱石油を目指す、サウジに対して、クールは、太陽光発電や、風力発電等の実績があり、それをサウジに売り込むことで、商売になると思ったと…


 が、


 それが、どうして、クールの買収に繋がるのか、謎だった…


 「…だって、葉尊…以前、オマエは、アラブの王族を接待することで、商売になると、言っていたゾ…クールの製品を売ると…」


 「…それです…お姉さん…」


 「…なにが、それです、なんだ?…」


 「…アラブの王族は、金持ちです…だったら、クールの製品を購入するのではなく、クールごと、会社ごと、買収すれば、いいと、考えたのです…」


 「…なんだと?…」


 私は、驚いた…


 文字通り、驚愕した…


 「…さっきも言ったように、クールは、所詮、外国企業です…だから、日本政府も、純粋な日本企業と違って、クールの経営陣を守らない…」


 「…」


 「…ファラド王子は、それに、気付いたから、クールを買収しようと、思ったのでしょう…いわば、抜け目のない、策略家です…」


 「…抜け目のない、策略家…」


 随分、大層な物言いだった…


 ほめているのか、けなしているのか、わからなかった(笑)…


 「…また、こちらも、その狙いに、気付かなかった…まさか、そんな相手を、接待して、日本に、招待するなんて、バカもいいところです…」


 葉尊が、告げた…


 その顔には、後悔がありありだった…


 「…この矢口さんの情報がなければ…」


 …なんだと?…


 …矢口の情報だと?…


 …まさか、このお嬢様から、聞いたのか?…


 …情報を得たのか?…


 私は、驚いた…


 ただの六頭身の幼児体型では、なかったということか?


 いや、


 私そっくりの外観を持つ女だ…


 やはり、優秀…


 優れているに違いない…


 やはり、東大を出ているだけのことはある…


 やはり、ソニー学園出身の私とは、違うのかもしれない…


 ついさっきまで、この矢口のお嬢様が、本当に東大を出ているか、疑問を持った私だったが、すっかり、そんなことは、忘れていた(笑)…


 しかし、


 しかし、だ…


 この矢口のお嬢様は、一体、どこから、そんな情報を得たのだろう?…


 謎だった…


 だから、私は、


 「…お嬢様…お嬢様は、どこで、そんな情報を?…」


 と、聞いた…


 私は、さておき、世界中にファンのいる、リンダや、クール社長の葉尊を知らない情報をどこで、手に入れたのか? 


 ずばり、気になったのだ…


 「…ムスリムだ…矢田…」


 お嬢様は、答えた…


 「…ムスリム?…」


 「…そうだ…ムスリム…つまり、イスラム教徒が、教えてくれたんだ…」


 「…イスラム教徒?…」


 「…そうだ…以前、このクールの本社にやって来たときに、うちのスーパーで、イスラム教徒が、食べる食材…ハラールを扱いたいと、言っただろ?…だから、ちょうど、イスラム教徒のファラド王子を、このクールの葉尊社長が接待するから、そのパーティーに、招待してもらい、ムスリムの人脈を得たいと思ったんだ…」


 矢口のお嬢様が、説明した…


 そういえば、たしか、そんなことがあったような…


 「…ファラド王子は、当然のことながら、人脈も広い…知り会って、損はないと思ってな…」


 「…」


 「…だが、同時に、ファラド王子という人間が、どういう人間だか、わからない…だから、他に知り会ったムスリムから、情報を得ていると、たまたまファラド王子が、このクールを狙っているという情報を得て、それで、葉尊社長に伝えたんだ…」


 「…」


 「…矢田…この葉尊社長は、なんといっても、オマエの夫…私も以前、オマエに助けられたことがあった…だから、その情報を得て、いてもたっても、いられなくてな…」


 矢口のお嬢様が、相変わらずの上から目線で、言った…


 私は、頭に来たが、そんなことより、クールが、ファラド王子に、買収されれば、大変なことだ…


 その方が、はるかに、気になった…


 と、ここまで、考えて、気付いた…


 たしか、今日は、矢口のお嬢様が、経営するスーパージャパンで、扱う化粧品のCMに、リンダを、出演させるために、このクールに集まったのではないか?…


 それは、一体、どうなったんだ?


 「…あの…お嬢様…リンダのCMの件は…」


 私は、恐る恐る聞いた…


 聞きたくなった…


 「…矢田…それとこれとは、話が別だ…」


 「…別?…」


 「…そうだ…」


 矢口のお嬢様が、あくまで、上から目線で、言った…


 私は、それで、気付いた…


 気付いたのだ…


 このお嬢様の狙いに、気付いたのだ…


 このお嬢様は、ずばり、葉尊に恩を売るつもりだ!…


 クールが買収されるかもしれない情報を掴んだから、真っ先に、それを葉尊に伝えて、自分のスーパーで、扱う化粧品に、リンダを出演させることを、了承させようとしたに違いない…


 いや、


 このお嬢様の狙いは、葉尊ではない…


 葉尊の実父の葉敬だ…


 台湾の大財閥、台北筆頭のオーナーの葉敬に恩を売り、その結果、リンダを自社で扱う商品のCMに出演させる…


 それが、狙いだ…


 つまり、あくまで、商売…


 この矢田に世話になったからとか、いうセリフは、ウソ…


 ウソ八百もいいところだ…


 私は、騙されん!…


 騙されんゾ!…


 この矢口のお嬢様が、どんな詭弁を弄しようと、そんなことに騙される、矢田トモコではない…


 断じて、騙される矢田トモコではない!


 この矢口のお嬢様には、過去に煮え湯を飲まされてる…


 元々、信用できん女だ…


 なにしろ、私そっくりの顔と体型…


 私は、私を信用しない…


 だから、私そっくりな女も信用しない…


 そういうことだ…


 この矢口のお嬢様の抜け目のなさは、空前絶後…


 ありえんぐらいだ…


 これに、匹敵するのは、峰不二子ぐらい…


 あのルパン三世の峰不二子ぐらいだ…


 それぐらい信用できない(笑)…


 だが、あの峰不二子と、このお嬢様は、ルックスは、真逆…


 似ても似つかん(笑)…


 だが、中身は、いっしょ…


 どっちも似ても焼いても食えん女だ…


 私は、この矢口のお嬢様の話を聞きながら、


 「…葉尊…用心しろ!…」


 「…このお嬢様の言葉を鵜呑みにするんじゃない!…」


 「…どこまでが、本当で、どこまでが、ウソか、皆目見当がつかん!…」


 「…全面的に信用するな!…」

 

 と、言いたかった…


 現に、心の中で、何度も叫んでいた…


 が、


 お嬢様の前では、なにも言えんかった…


 私は、この矢口のお嬢様の前では、文字通り、女王陛下と、家臣の関係だった(涙)…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。