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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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30/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 30

私が、珍しく、そんなことを、考えていると、あの矢口のお嬢様のことを、思い出した…


 あの私そっくりの外観のお嬢様…


 スーパージャパンの、創業者のご令嬢だ…


 あの矢口のお嬢様は、外観は、私そっくりだが、中身は、真逆だった…


 矢口のお嬢様は、東大卒…


 片や、私は、ソニー学園出身…


 矢口のお嬢様は、当然、お金持ち…


 私は、平凡…平凡な家庭の出身…


 が、


 とりわけ違うのは、性格だった…


 私は、自分でいうのもなんだが、結構器用で、はしっこい…


 が、


 矢口のお嬢様は、不器用だった(笑)…


 自分の父親が、経営するスーパージャパンで、身分を隠して、働いても、終始、トロトロして、使い物にならなかったと、人づてに聞いた…


 要するに、頭でっかちというか…


 頭は、いいが、その頭の良さを生かすような仕事でないと、使い物にならないということだ(笑)…


 スーパーを例にたとえれば、末端で、商品を棚に並べるような仕事は、トロトロして、ちっとも、進まない…


 だから、同じ末端でも、スーパーの経営戦略とか、頭を使う難しい部署で、議論をしたり、資料を作るのが、あっていた…


 事実、矢口のお嬢様は、実家が、大手の安売りスーパーを経営しているから、そのような仕事に就き、着実に実績を伸ばした…


 つまり、東大卒の頭の良さを生かしたということだ…


 が、


 思えば、それは、ただ単に運がいいの一言…


 そんなにうまくゆく人間は少ない…


 以前、経済評論家の森永卓郎が言っていたが、自分と同世代の仲間内で、東大を卒業した人間で、成功したと、思われる人間は、わずか二割だと、言っていた…


 二割=20%だと、断言していた…


 日本で、一番、頭のいい大学を出て、成功したと思えるのは、わずか、20%の人間に過ぎない…


 いかに、少ないか?


 そう、思える…


 矢口のお嬢様の場合は、実家が、大手のスーパーを経営していたから、簡単に、父親が、娘の頭の良さを生かせるような職場に、配属したのだろうが、普通は、それは、無理…


 できない…


 当たり前だ…


 たとえ、東大を出ていても、仮にマクドナルドに入社すれば、最初は、店舗スタッフから、始めろと、言われる…


 当たり前だ…


 そして、店舗スタッフをすれば、正直、学歴は関係ない…


 たとえ、高卒の人間でも、テキパキ動く人間は、いるし、東大を出ているかといって、テキパキ動く高卒の人間に、勝てない東大卒は、多いだろう…


 だから、そんな高卒の人間に、


 「…アイツは、東大を出ているのに、なんなんだ?…」


 と、陰口を叩かれて、落ち込む東大卒の人間は、多いに違いない…


 マクドナルドは、わかりやすい例だが、どんな大企業も、最初は、誰もが、末端の仕事から、始めさせる…


 すると、当然のことながら、東大を出ても、自分に合わない仕事や、職場が、存在する…


 そうなると、地獄になる(涙)…


 が、


 あの矢口のお嬢様は、そういう心配がないのが、救いだった…


 自分の父親が経営する店=会社だったから、職場を選べた…


 だから、合わない職場に、長くいることもなく、オサラバできたわけだ…


 が、


 普通は、そうは、いかない…


 だから、自分に合わなければ、誰もが、職場の移動を人事に願い出るか、それが、叶わなければ、転職するか、のどちらかだろう…


 が、


 さらに言えば、あの矢口のお嬢様は、対人関係が、苦手だった…


 他人とうまく、付き合うことができなかった…


 他人とうまくつきあえないというのは、職場においては、致命的だ…


 職場で、ひとりで、任されてやる仕事は、ないではないが、ごく少数…


 大抵が、最低でも、二人で、組んでする仕事が多い…


 だから、コミュニケーション能力が、不可欠になる…


 学校の勉強では、一人で、やれば、よいが、仕事は、ひとりで、やる仕事は少ない…


 そういうことだ…


 だから、矢口のお嬢様は、それで、悩んでいたと、聞いた…


 だから、考えてみれば、あのとき…


 つまりは、スーパージャパンの再建方法を巡って、他の重役たちと、言い争いになり、他の重役たちを説得できないから、お嬢様は、自分の結婚式を隠れ蓑にして、勝手に、他社との提携の調印をしたのだろう…


 会社の重役たちと、うまく、コミュニケーションを取れないから、自分勝手に動くしかなかったのだろう…


 私は、それを思った…


 そして、たしか、あのお嬢様は、私に憧れていると言った…


 この矢田トモコに、憧れていると、言った…


 理由は、ただ一つ…


 私が、他人とコミュニケーションを取るのが、うまいからだ…


 あの葉問が、言ったように、私は、他人に好かれる…


 なぜか、わからないが、好かれる…


 私が、思うに、私が、頼りないのが、一因だろうと、思う…


 私は、実は、頼りない…


 だから、助けてやろうという人間が、必ず周囲に、存在した…


 これが、私とお嬢様の違い(笑)…


 また、私は、美人でも、なんでもなかった…


 これが、良かった…


 美人は、羨ましいが、困ることも、結構多い…


 なにより、なにもしていなくても、目立つ…


 これが、困る(笑)…


 また、美人だと、必ず、それを羨ましく思って、さまざまな、嫌がらせ=イジメを仕掛けてくる同性の女も存在する…


 要するに、美人が羨ましいのだ…


 だから、美人に生まれると、なにもしなくても、敵を作ることになる…


 が、


 私は、幸か不幸か、美人に生まれなかった…


 それが、幸いした(笑)…


 だから、そのような敵はいなかった…


 また、なにより、愛想が良かった…


 そして、人間が、軽かった…


 だから、いつも、矢田ちゃんだった(笑)…


 矢田ちゃんと、軽く呼ばれていたから、周囲の人間が、助けてくれたのだ…


 これは、ラッキー…


 ラッキーこの上なかった…


 これが、男ならば、困るかもしれない…


 会社に入社して、数年は、それでいいかもしれないが、ずっと、そういうわけにはいかないからだ…


 歳を取り、後輩もできたにもかかわらず、いつまでも、矢田ちゃんと軽く呼ばれて、威厳もなにもないのは、困る…


 困るに決まっている…


 正直、女の私でも、困るが、男は、もっと困るだろう…


 やはり、上に上がった以上、威厳は、欠かせないというか…


 同じことをやるにしても、威厳があると、周りを説得しやすい…


 どうしても、同じことをする場合、誰が、言うか? で、周囲の反応も変わって来るからだ…


 はっきり言えば、


 ○○が言うと、納得しないが、○○が言うと、納得するというか…


 仕方ないと思うかもしれないが、納得する…


 それは、威厳のせいも、あるし、正直、人間性の部分もあるだろう…


 あんな奴に言われても、となることは、誰もが、経験することだからだ…


 私が、こんなことを、書くのは、何度も言うように、短大を出て、さまざまな職場を経験したからに、他ならない…


 どうしても、一つの職場しか経験しないと、視野が狭くなる…


 たとえば、以前の職場で、こんなことがあってと、別の職場の人間にいっても、


 「…そんなこと、あるわけないじゃん…」


 とか、


 「…アンタ…話を盛っているんじゃない?…」


 と、言われたこともあるからだ…


 どうしても、その職場では、ありえない話だから、信じてもらえないことが、多い…


 なぜなら、その職場では、そんな人間は、存在しないからだ…


 たとえば、さっき例に挙げた、高卒で、出世を目指した人間のことを言っても、普通に、考えれば、


 「…偏差値40の工業高校を出て、出世なんて、できるわけないだろ?…」


 と、なる…


 だから、


 「…そんなヤツ、いるわけないだろ?…」


 と、なる…


 が、


 現実に、私は、そんな人間を知っている…


 が、


 そんな人間を見たこともなければ、私の話を信じないだろう…


 それも、また、よくわかる…


 人間は、何事も経験だ…


 歳をとって、それがわかって来た…


 経験しなければ、どんな話を、聞いても、ホントに、そんなことがあるの? と、眉唾物にしか、聞けないからだ…


 だから、同じように、以前、年収400万円の、三十代前半の女性の看護師が、私は、年収一千万円の男としか、結婚しないと、断言したのを、聞いて、呆れたというのを、ネットで、見た…


 その看護師は、ルックスも平凡にも限らず、大言壮語していたそうだ…


 話を聞いた女性が、


 「…そんな年収がある男性なら、もっと、いい女性と結婚するでしょ?…」


 と、話しても、頑として聞き入れなかったそうだ…


 普通に考えれば、頭がおかしいの一言だが、たしかに、世の中には、そんな人間も存在する…


 だが、そんな人間を知らなければ、


 「…ホントにそんな人間が、いるの?…」


 とか、


 「…矢田は、ウソを言っている…私を騙している…」


 としか、言えないだろう…


 なにしろ、そう考えるのが、普通だからだ…


 要するに、世の中には、色々な人間が、いるということだ…


 私と矢口のお嬢様のことを、比べていたが、いつのまにか、話が、別の方向に転んだ…


 いつものことだった(笑)…


 そして、あのお嬢様…


 私が、苦手なのは、あのお嬢様が、策士だからだった…


 悪く言えば、ずるがしこい(笑)…


 私を身代わりにして、自分の結婚式を隠れ蓑にして、会社の提携の調印を、したのが、その実例だ…


 私とお嬢様が、同時に結婚式を挙げる…


 すると、まったく同じ顔をした、二人だから、どちらが、本物のお嬢様か、わからない…


 どっちが、本物のスーパージャパンのご令嬢の矢口トモコか、わからない…


 それを狙って、私を身代わりにした…


 結婚式の会場は、同じ…


 同じ結婚式場で、同じ時刻に、結婚式を挙げる…


 つまり、お嬢様の真の目的に気付いた、スーパージャパンの重役たちが、お嬢様を止めようとしても、どっちの式場に乱入すれば、いいのか、わからなかった…


 一か八か…


 二つに一つ…


 そういうことだ…


 こうすれば、お嬢様の狙いに、気付いても、時間を稼ぐことができる…


 現に、お嬢様の狙いに気付いた関係者たちは、お嬢様の狙い通りに、間違って、私の結婚式場に、乱入した…


 つまり、お嬢様は、そのおかげで、時間を稼ぐことができたのだ…


 と、


 ここまで、考えて、気付いた…


 あのとき、なぜ、お嬢様の結婚式場ではなく、身代わりである、私の結婚式場に、関係者が、殺到したのか?


 今、考えれば、謎だ…


 もしかしたら?


 もしかしたら、あのお嬢様…誰か、関係者の中に、わざと、ミスリードするように、操作する人間を、手配していたのかもしれない…


 そう気付いた…


 あの混乱の中で、私とお嬢様が、同時に、結婚式を挙げれば、どっちの会場に乱入すれば、よいか、わからない…


 判断に苦しむ…


 そう言ったときに、誰かが、


 「…こっちの会場に行こう…」


 とでも、言えば、皆が、そっちの会場に向かう…


 どうしても、人間は、混乱していると、正常な判断ができなくなるからだ…


 それが、わかっていた、お嬢様は、あらかじめ、そんな人間を、手配して、重役たちの中に潜ませていた…


 あるいは、反対する重役たちの中に、事前に、内通者を、潜ませていたのかもしれないと、気付いた…


 そして、さらに言えば、その内通者は、おそらく、お嬢様ではなく、お嬢様の実父に頼まれたのかもしれない…


 今さらながら、そう気付いた…


 私と同じ年代のお嬢様に頼まれても、お嬢様よりも、はるかに、年上の、スーパージャパンの重役たちは、動かないだろう…


 しかしながら、お嬢様の実父である、スーパージャパンの社長に頼まれたならば、動くに違いない…


 すると、どうだ?


 私は、思った…


 スーパージャパンの再建策…


 あのときは、あのお嬢様が、再建の主役を演じていると、思ったが、実は、違った可能性が高い…


 本当は、お嬢様の実父の社長が、陰で、糸を引いていた可能性が高い…


 いや、


 可能性ではない…


 おそらく、それが、事実に違いない…


 あるいは、実父の社長でなければ、その妻…


 つまりは、お嬢様の母親や、叔父や叔母の可能性が高い…


 なぜなら、あのお嬢様の年齢では、何度も言うように、自分より、はるかに年長のスーパージャパンの重役たちを動かすのは無理だからだ…


 私は、それに気付いた…


 ということは、どうだ?


 今回の件…


 アラブの王族との接待の件にしても、実は、これは、お嬢様の発案でない可能性もある…


 お嬢様の実父や、それ以外の身内の可能性も高い…


 私は、そう気付いた…


 あのお嬢様が、自分の経営するスーパージャパンに、イスラム教徒が、食するハラールという食材を置くためというのは、わかるが、それが、口実の可能性もある…


 考えれば、きりがないが、あのお嬢様が、一筋縄ではいかないところに、さらに、その上がいたのかもしれないと、気付いたのは、痛かった(笑)…


 もしかしたら、とんでもないモンスターが出てくるかもしれない…


 私は、思った…


 あのお嬢様ひとりだけでも、十分、強敵なのに、それ以上の強敵がいては、困る(涙)…


 私は、思った…


 思いながら、実は、内心、ドキドキした…


 それも、面白いかも、と、思ったのだ…


 ジェットコースターではないが、ドキドキする…


 刺激がある…


 どんなモンスターが、あのお嬢様の背後に控えているか、見てみたい気持ちもある(笑)…


 いわば、怖いもの見たさ…


 子供のような、純粋な好奇心だ(笑)…


 あのお嬢様が、誰かの操り人形ならば、そのお嬢様を操っている人間を、見てみたい…


 どんな人間が、あのお嬢様を操っているのか、見てみたい…


 そういうことだ…


 そして、そのお嬢様の背後にいる人間の狙いを知りたい…


 当然、アラブの王族の接待に、お嬢様が出席することで、なにか、狙いがあるはずだからだ…


 それは、もしかしたら、純粋に、お嬢様が言ったように、ハラールかもしれないし、それ以外に目的があるかもしれないからだ…


 いや、


 それ以外に、本当の目的が、隠されていても、おかしくはない…


 が、


 本当のところは、わからない…


 ただ、俄然、面白くなってきた…


 そんな気がした…


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