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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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130/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 130

…どうやったら、この場から、逃げれるか?…


 私の頭の中にあるのは、それだけだった…


 みっともないも、恥ずかしいも、ない…


 生きることが、大事だ…


 生き延びることが、大事だ…


 それが、なにより、大事だった…


 35歳のシンデレラと言う呼称も、クールの社長夫人としての、地位も、もはや、どうでも、よくなった…


 すべては、生きていることが、大事…


 なんとか、この場から、逃げ出すことが、大事だと、気付いた…


 だから、そのことに、気付いた私は、一目散に、走り出した…


 セレブの保育園の正面玄関に、向かって、正々堂々と歩いていた私だったが、正面ではなく、どこか、横の方に、行って、この場から、逃げ出そうと、思ったのだ…


 だから、そんな私を見て、


 「…アッ!…」


 とか、いう声が、聞こえた…


 それは、女の声…


 あの木原という女刑事の声だと、思ったが、振り向かんかった…


 あの木原には、痛い目を、見せねば、ならんと、一時は、心の底から、思った私だったが、今や、そんなことは、二の次、三の次…


 ここから、逃げ出すことが、なにより、大事だと、気付いたのだ…


 もはや、恥も外聞もなかった…


 なかったのだ!…


 私は、セレブの保育園の横の方に、行って、そこから、柵を超えて、逃げ出そうとした…


 が、


 そこには、当たり前だが、私服の警察官が、いた…


 がっしりとした、身長は、180㎝は、優に超える、屈強で、大柄な男が、何人もいた…


 当たり前のことだった…


 ファラドが、このセレブの保育園で、園児を人質に、立てこもったのだ…


 そのために、大滝も、あの木原も、やって来たのだ…


 考えて見れば、このセレブの保育園は、すでに、完全に、警察に包囲されてる…


 当たり前のことだった…


 そんなことも、気付かない、私は、バカだった…


 バカ丸出しだった(涙)…


 きっと、頭に血が上っていたに違いなかった…


 あの木原のことで、頭に血が上っていたに違いなかった…


 だから、気付かんかった…


 気付かんかったのだ!…


 私は、思った…


 そして、しばらくすると、冷静になった…


 冷静になって、なにをなすべき、考えた…


 私が、なすべきは、ファラドと会うこと…


 そのために、このセレブの保育園を、訪れたのだと、あらためて、考え直したのだ…


 本当は、今、セレブの保育園の正面玄関から、向かって、右に、走って、柵を超えようと、思ったから、今度は、左に、行きたかった…


 そうすれば、もしかしたら、警官が、いないかも、しれないからだ…


 が、


 そんなことが、あるはずも、なかった(涙)…


 誰もが、考えて、そんなことが、あるはずが、なかった…


 ファラドが、このセレブの保育園に、立てこもっている限り、このセレブの保育園の、四方すべて、警官に囲まれている…


 包囲されているに、決まっていた…


 そんなことは、頭の中では、わかっていたが、


 …もしや?…


 とも、思った…


 もしや、どこか、抜け道が、あるかも、しれん…


 もしや、どこかに、逃げ道が、あるかも、しれんと、考えたのだ…


 要するに、私自身が、追い詰められて、つい、自分に、都合が良く、考えた結果だった…


 それは、自分自身、痛いほど、わかっていた…


 だから、本当は、他の三方にも、行って、本当に、このセレブの保育園が、警官に囲まれているか、自分の目で、見て、確かめたかった…


 が、


 さすがに、それは、できんかった(涙)…


 それでは、いくら、なんでも、私の行動が、怪し過ぎた(笑)…


 それでは、誰が、どう見ても、この場から、逃げ出そうとしているのが、バレバレだったからだ…


 だから、逃走は、諦めた…


 逃げ出すのは、諦めた…


 その代わりに、どこか、このセレブの保育園の建物の、どこかから、中を覗いて、どうなっているか、確かめようとした…


 どうなっているか、状況を確かめようと、したのだ…


 やはり、忍者ではないが、一体、今、どういう状況に、このセレブの保育園が、なって、いるのか、知りたい…


 あのファラドが、どうしているのか、知りたかった…


 だから、それを、思った私は、素早く、壁に身を寄せた…


 この矢田トモコ、35歳…


 実は、スポーツ万能…


 なんでも、できる女だった…


 だから、ピザ屋でも、寿司屋でも、華麗に、三輪車にまたがり、誰よりも、早く、正確に、お客様の元に、商品を届けた…


 誰にでも、できることではない…


 この矢田トモコだから、できたのだ…


 いや、


 誰にでも、できるかも、しれん…


 が、


 この矢田トモコほど、素早くは、できまい…


 私には、その自信がある…


 自信が、あるのだ!…


 だから、今も、まるで、くノ一のごとく、窓に顔を寄せ、中の様子を探った…


 一体、中は、どうなっているのだろう?


 私は、興味津々だった…


 私は、窓を見つけると、素早く、その窓に、顔を寄せた…


 中の様子を探るためだ…


 が、


 さっぱり、わからんかった…


 なにやら、子供たちが、集まっているのは、わかる…


 が、私の見る窓の位置からでは、よくわからんかった…


 私の見る窓からは、子供たちが、集まっている、のが、ごく一部の部分しか、見えんかったからだ…


 ちょうど、窓の一部分に、子供たちの姿が、見えるだけだった…


 だから、私は、仕方なく、場所を変えようと思った…


 と、


 そのときだった…


 偶然、足が滑った…


 だから、勢いよく、窓に、頭をぶつけてしまった…


 「…イター!…」


 私は、思わず、声に出した…


 声に出さずに、いられんかったからだ…


 声に出さずに、いられるほど、私は、辛抱強くは、なかった…


 なかったのだ…


 思わず、目から涙も流れた…


 私の細い目から、涙が、うっすらと流れたのだ…


 それほど、痛かった…


 が、


 問題は、それだけでは、なかった…


 あろうことか、中から、保育園児の声で、


 「…あっ? …矢田ちゃんだ!…」


 と、いう声が、聞こえてきたのだ…


 …マズい!…


 とっさに、思った…


 私が、今、この場所で、中を偵察していたのが、バレるのは、マズいと、思った…


 まだ、ファラドに会う前だ…


 中の様子が、どんなだか、わかってから、ファラドに会いたかった…


 が、


 私が、そんなことを、考えている間にも、


 「…あっ? 矢田ちゃんだ!…」


 「…矢田ちゃんだ!…」


 と、なにやら、セレブの保育園の中が、騒がしくなってきた…

 

 私は、焦った…


 どうして、いいか、わからんかった…


 だから、とっさに、身を隠した…


 身を隠したのだ…


 が、


 あろうことか、中からは、


 「…あっ! 矢田ちゃんが、かくれんぼをしている…」


 と、いう声が、聞こえてきた…


 …これは、かくれんぼじゃない!…


 私は、言ってやりたかった…


 かくれんぼをしているわけじゃない!


 遊んでいるわけじゃない!


 と、言って、やりたかった…


 これは、偵察だ!…


 立派な任務だ!…


 この矢田トモコに、与えられた任務なのだ!…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 が、


 私は、どうして、いいか、わからんかった…


 本能のせいか、よくわからんが、急いで、この保育園の、正門前に集まった、あの木原や、義理の父親の葉敬の方に、目をやった…


 が、


 どんな表情をしているのか、わからんかった…


 あまりにも、距離が、遠すぎたからだ…


 が、


 なにやら、私が、歓迎されてないことは、直観で、わかった…


 わかったのだ…


 きっと、


 …なに、やってんだ? …アレ?…


 とでも、言うような声が、聞こえてくる…


 そんな予感がした…


 だから、戻ることは、できんかった…


 残念ながら、戻ることは、できんかったのだ(涙)…


 すると、中から、


 「…矢田ちゃん…もしかして、忍者ごっこ?…ナルトの真似しているの?…」


 と、近くの窓から、女のコが、顔を臨み込むようにして、聞いた…


 なんと、マリアだった…


 私は、思わず、


 「…マリア…大丈夫か?…」


 と、聞いた…


 聞いたのだ…


 「…大丈夫って? …矢田ちゃんこそ、そんな恰好をして、どうしたの? …忍者ごっこじゃないの?…」


 「…違うさ…」


 私は、言った…


 「…忍者ごっこじゃないさ…」


 「…だったら、スパイダーマンごっこ?…」


 「…スパイダーマンごっこ? …どうして、スパイダーマンごっこなんだ?…」


 「…だって、矢田ちゃん、さっきから、ずっと、窓に顔を張り付けて、こっちを見ていたでしょ? …まるで、クモみたい?…」


 なんと?…


 マリアは、この矢田の行動を、ずばり、見ていた…


 中から、見ていた…


 いや?


 ということは、マリアだけではない…


 きっと、中で、この矢田の行動に、気付いたのは、マリアだけではないはずだ…


 中では、ファラドが、このセレブの保育園に立てこもっているはずなのに、一体、どうして?


 どうして、そんなに、自由に、動き回れるのか?


 疑問だった…


 わけが、わからんかった…


 そして、真っ先に、脳裏に浮かんだのは、


 …ファラドだった…


 あのイケメンだった…


 だから、急いで、マリアに、


 「…ファラドは、どうした?…」


 と、聞いた…


 聞かずには、いられんかった…


 「…ファラド?…それ、一体、なに?…」


 マリアが、意外な言葉を言った…


 …なんだと?…


 …一体、どういうことだ?…


 意味が、わからん…


 私は、考えた…


 このセレブの保育園は、ファラドに、占領されているんじゃ、なかったのか?…


 私は、思った…


 すると、途端に、誰かが、背後から、私の肩をガシッと、掴んだ…


 この矢田トモコは、159㎝…


 この矢田トモコより、はるかに、背の高い人物だった…


 いや、


 この矢田トモコは、女の中では、平均だが、男から、比べれば、明らかに、低い…


 だから、当然、背後から、私の肩を掴んだのは、男だと、思った…


 …もしや、ファラド?…


 とも、思った…


 思いながら、背後を振り返った…


 そこには、やはりと、いうか、長身の男の姿が、あった…


 いや、


 男ではない…


 男の格好をした女…


 女だった…


 男装した、リンダ・ヘイワース…


 ハリウッドのセックス・シンボルの姿が、あった…


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