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蒼穹の騎士

藤拓人の放った「オプチカル・タイフーン」は、ドラゴンの半数を消し去ったものの、いつきはタケミカヅチの加護によってそのダメージを反射した。衝撃に打ちのめされ、全身の魔力回路が悲鳴を上げる中、拓人はブレイクで踏みとどまる。

「……まだだ、詠唱は……止めない……!」

満身創痍、肉が弾け飛ぶような苦痛に耐えながらも、拓人の口からは古代の秘術が紡がれ続ける。その不屈の闘志に応えるように、剣菱将が前へ出た。

「神威あれ、不動明王アカラナータの炎よ!」

将の叫びと共に、戦場に黄金の火柱が立ち昇る。邪悪を焼き尽くす不動明王の金炎が、いつきを包囲するように迫った。しかし、黒き巨躯ブラックフレアがいつきの盾となり、その身を焼かれながらも退かない。ダメージを反射するタケミカヅチの加護がある限り、攻めあぐねる膠着状態が続く。

「ようやくタメが終わりや……。行くよ、空間反転同時攻撃——『ダブル・サンダークロス』!」

静寂を切り裂く宮内純の声。彼の姿が揺らぎ、空間が歪んだかと思うと、純の姿が二人へと分かたれた。鏡合わせの双子のように動く二人の純は、拓人の援護を無駄にせぬよう、最大火力を練り上げる。

「神威あれ、詩神ブラギの声よ、我が友にネルガルの加護を今一度」

二人の純が互いの手首を合わせ、空中に拳を突き出した。ネルガルの死神の力が、詩神の歌声によって増幅される。

「神威あれ、雷神トールの槌よ!」

放たれたのは、文字通り落雷のごとき轟音を伴うエネルギーの奔流だった。その拳速は物理的限界を超え、主を庇おうとしたブラックフレア、そしてその後ろに立ついつきの二人を同時に貫いた。

第三章:爆炎の果ての回生

凄まじい雷撃がブラックフレアといつきを直撃する。だが、いつきは執念でタケミカヅチの反射を発動させた。純の放った破壊力は、そのまま彼女自身へと跳ね返る。最高位のルーンメタルの守護さえも貫く反射の衝撃に、純はブレイク寸前まで追い込まれた。

「純、しっかりしろ!」

古藤三平が動く。彼は自身の魔力を純へと流し込み、その傷を強引に癒した。失われかけた生命力が復し、純の瞳に光が戻る。

一方、金色の「不動明王の炎」に焼かれ続けたブラックフレアは、ついに限界に達していた。雷撃のダメージと重なり、その巨躯は大地へと沈む。しかし、ブラックフレアはただ消えることはなかった。内包した膨大なマナを暴走させ、自爆という名の最期の爆炎と化す。

「……っ、爆発するぞ!」

純はルーンメタルの演算能力をフル回転させ、爆炎の軌道を見切って紙一重で躱し切る。三平は錬金小太刀のチャンバーを全開まで回し、障壁を展開。自らが盾となって将を庇ったが、その代償として瀕死の重傷を負い、ついにブレイク——戦場から離脱した。

しかし、この犠牲は無駄ではなかった。拓人は純の「イドゥン」の力によって、気力と体力を完全に取り戻していた。彼の詠唱は、一度も途切れることなく臨界点に達していたのだ。

「頼むぜ、破魔の公女! 光の進化だ!!」

拓人の叫びと共に、巨大な光の刃が射出される。

「神威あれ、雷神トールの槌よ!」

再びトールの雷が公女に落ち、光の刃に雷の刃が重なる。二つの神威を同時に受けたいつきは、ついにその膝を折った。

「とどめはコレだ! 神の加護でなく、人の叡智を喰らえドラゴンクイーン! 合成魔法『オプチカルタイフーン』」

拓人の最後の一撃がいつきを飲み込み、戦いに終止符が打たれた。いつきはなすすべなく倒れ、戦場に静寂が戻る。

将は横たわるいつきに歩み寄り、静かに祝詞を唱えた。

「神威あれ、大地母神ガイアの愛よ、いつきに許しを」

「……許しなど請わぬ。私はダークレジェンド、ドラゴンクイーンだ」

いつきは最後までその誇りを捨てなかったが、将は苦笑して首を振った。

「ダークだ、シャドウだって、そんなに大事か? 俺は分からねえよ」

「餓鬼が」

「餓鬼で結構。傷が癒えたら殺しに来いよ、また返り討ちにしてやるからさ。……あ、行くところがあるんだったな。それからでいいか?」

いつきが「行く、とは……」と問いかける。将は空を見上げ、確信に満ちた声で答えた。

「願いが叶うって理想郷、アスガルドに行って、純をホンモノの女の子にしてもらうんだ。待ってろよ、純」

「いややで将、何処までも一緒や……!」

純の瞳から涙が溢れ出す。その想いを受け止めながら、将は仲間に最後の言葉を残した。

「じゃあ、三平、拓人、先生には巧くいってくれや。それから、ブラックロータスさんには就職するからよろしくと……。コードネームは『破魔の狩人』で頼むな」

光の中に消えていく二人の背中。

後に七瀬市が再び闇に落ちかかった時、ふたつのガイアを持つ少年少女が空から救世の手を差し伸べるであろう。

故に呼べ、救世者(セイヴァー)「蒼穹の騎士」と。

大御霊の理中枢の、遺物レリクスミネルバはそう語り継いでいる。


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