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風が吹く時

激闘の果て、剣菱将ケンビシショウたちの目の前で、自分たちの姿を模した「写し」が力なく崩れ落ちた。猛火がその役割を終えて消え去ると同時に、立ち込めていた熱気が一陣の涼やかな風にさらわれる。風が「写し」の亡骸を撫でると、それは肉の感触を失い、乾いた象牙色の塵へと姿を変えた。そして次の瞬間、塵は虚空へと吸い込まれ、そこには戦いの痕跡すら残らない静寂が訪れた。

「……終わったか」

将が呟く。その直後、足元の床が重低音を響かせて振動した。

地面からせり上がってきたのは、古びた、それでいて神聖な気配を纏った小さな祠だった。驚くべきことに、その中には一台のワッフルメーカーが鎮座している。それは禍々しいほどに赤く輝き、目に見えぬ「弱めの炎」によって熱せられていた。

「試験完了、おめでとうございます。さあ、その『遺物レリクス』に皆さんのシャードを挟んでください。五分ほど火に炙り、マナが定着するのを待てば、皆さんの加護を元にした世界に一枚のカードが出来上がります」

どこからともなく現れた、白衣を纏った研究者然としたガイドが、眼鏡の奥の瞳を好奇心にぎらつかせて一同を見渡した。

「悪趣味だ」

腕の火傷を庇いながら、藤拓人フジタクトが忌々しげに吐き捨てた。命を懸けた試練の報酬が調理器具のようなデバイスから生み出されるという事実に、生理的な嫌悪感を隠せない。

「そう言われましても。我々サジッタ社にとっても、このレリクス内部の構造はブラックボックス。外装を整えることはできても、中身を弄ることは不可能なのです。申し訳ありませんが、これが唯一の『成形』手段なんですよ」

ガイドは肩をすくめ、悪びれる様子もなく答えた。

「ホンマに……マイ・タイプX作るたびに、こんなシュールなことしてんのか?」

宮内純ミヤウチジュンが、引き気味に尋ねる。

「ええ、していますよ。そうしなければマナのバランスが崩壊します。シャード、いえ『アルシャード』が持つマナ補正能力というフィルターを通さなければ、エネルギーが暴走し、この世界に『奈落』を呼び寄せてしまうかもしれないんです」

ガイドの言葉はさらりとしていたが、その内容は戦慄すべきものだった。この「ワッフルメーカー」は、世界の境界を繋ぎ止める危うい均衡の上に成り立っているのだ。


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