必殺の五ターン
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剣菱将たち四人は、寮に戻された。FC社にしてみれば、社屋を半壊させた彼らの扱いは災難以外の何物でもなかったが、暴走を止めるための緊急避難という側面は拭えなかったためである。
無論、部屋の外に古藤三平がお目付け役として立っているのは、サクセサーを止められるのはサクセサーだけ、という理論に基づいているのかもしれない。実質的な監視下にある不自由な状況ではあったが、彼らには止まっている暇はなかった。
そこで冬巡いつき対策という事で、前回までのサモニング・モンスター世界大会の動画を見て、将にも勝機がないかを改めて討議することになった。
「ええか、これが冬巡のタイプXや」
宮内純がモニターを指さす。映し出されているのは、エースカード(タイプX)、竜帝ホワイトフレアを主軸に据えた冬巡の対戦映像だった。
「防御や相手への妨害といった要素は全くない、超がつくほどの重量級モンスターデッキ。自分から守る気ゼロや。潔いというか、狂ってるというか……」
藤拓人の解説によれば、いつきのデッキは全てが竜帝降臨のために最適化されているという。拓人の話は熱が入るあまり、過去のデータや他プレイヤーの逸話が混ざってあちこち内容が前後したりもしたが、要約すれば恐るべき事実が浮かび上がった。
「結論として、向こうのコンボパーツが揃うのは最短で五ターン。つまり、いつきがタイプXを出す五ターンより早く、いつきを無力化するしかない。それ以降は、俺たちのカードじゃ太刀打ちできない領域になる」
拓人が指を五本立てて強調すると、純が深いため息をついた。
「言って出来たら苦労せえへんが。あの冬巡相手に、五ターンでケリつけろってか。無茶苦茶言いよるな」
「でも、やるしかないんだろ」
将が静かに口を開く。
「向こうに守りがないなら、こっちが先にその喉元に食らいつく。それ以外に道はない」
高校生らしい無駄話や軽口を交えつつも、四人の視線は鋭かった。最強の矛が突き立てられるまでのわずか五ターン。その極限の時間の中で、いかにして勝利の糸口を掴むか。夜が更けるのも忘れて、彼らの議論は熱を帯びていった。




