ラーガン
次の瞬間、ミネルバを中心として、底知れぬ悪意を孕んだ黒い焔が吹き上がった。現れたのは、奈落の使徒の中でも高位に属する枝切りの騎士の一人、足無しラーガンである。黒い焔は禍々しい渦巻きとなり、それが激しく弾けると、空間に蟠を巻いた巨大な青い蛇へと姿を変えた。
宮内純が聖なる光に包まれ、瞬時に白いセーラードレスを装着する。彼女は即座に力を放った。
「ーー神威あれ、否定の神の意よ」
敵の存在を否定せんとする純。しかし、ラーガンも即座に反応する。
「させんーー神威あれ、魔術神の智よ」
藤拓人が、あらゆる加護を無効化するスィンをさらに打ち消すべく、加護オーディンで対抗した。だが、ラーガンは力づくで自らの意志を通そうとする。
「神威あれ、魔術神の智よ」
「舐めるな! 重ねて願うーー」
「ーーーく」
こうして剣菱将たちの仲間である継承者たちは、加護の裁量権を死守する代償として、貴重なオーディンの加護二枚を失った。
「契約にしたがい剣王の城より来たれーー破魔の女公!」
収束した光の中から、一振りの巨剣が将の手に現れる。剣を構えながら、将は腹の底から叫んだ。
「ーー神威あれ、不動明王の炎よ!」
ラーガンが反撃の機をうかがうより早く、将が放ったアカラナータの業火が、巨大な蛇の身体を焼き尽くさんと包み込んでいく。
「重ねて願うーー神威あれ、雷神の槌よ」
「うちも行くで! ーー神威あれ、雷神の槌よ!!」
純と将、二人の意志が重なり、空を裂く二条の雷がラーガンを直撃した。
だが、ラーガンは不敵に笑い、最強の防御を振るう。
「させんよーー神威あれ、軍神の剣よ」
全ての攻撃を打ち消すティールの一枚で、積み上げられた連撃が無に帰す。だが、古藤三平がそれを許さない。
「神威あれ、詩神の歌よ」
三平の歌声が、拓人のオーディンを戦場に復活させた。
「ナイスパス、ーー神威あれ」
復活した加護により、ラーガンのティールは瞬時に消失した。




