ミネルバ
「明よ、我が周囲に結界を」
剣菱将が青いアルシャード、明に命じて可能な限り大きな結界を張る。今までのクエスターの枠を破った、継承者たちは結界内のマナの流れに乗って空へと舞い上がる。
「将、いつでもいいぞ」
藤拓人が黒い二十面体アルシャード、夜を通じて合図を送る。
「臨兵闘者皆陣烈在前ーー神威あれ、不動明王の炎よ」
「ーー神威あれ、死神の手よ」
「おまけだーー神威あれ、死の女王の息よ」
古藤三平が、ダメ押しとばかりに加護を切る。黄金の炎が巨大な竜巻となり、視界を埋め尽くす霧をのみこんでいく。そして次の瞬間、直径三百メートルはあろうかという半球状の空間が広がっていた。中央部には一台のゲーミングPCと、静謐な空気を纏う鳥籠がある。中には一羽の白いフクロウが居るのみであった。
「アナタはこの時代のヒトですか?」
フクロウから、心へ直接染み入るような思念が届く。それは非常に理知的であった。
「うん、そうやで、フクロウはん。うちは宮内純やで、よろしゅうな」
純は全く物怖じすることなく、その不思議な存在に応じた。
「ありがとうジュン。こちらから名乗るべきだった。ワタシはミネルバ。アルフの創りし、遺物だ。情報処理機能は多分すごいと自負している」
「これがレリクスーーまるで生きてるようだ」
拓人がその構造を観察し、隠しきれない好奇心を露わにする。
「生体ユニットなんだ。キミタチを強引に呼びだてしてスマナイ。ワタシはここではメタ演算システム、大御霊の理(GSQ)の中枢だ。そして今、奈落に侵されかかっている。アノいつきというオンナの仕業だ。彼女はダークレジェンドだ、キヲツケロ」
ミネルバの声に宿る切迫感は、この平穏な空間が長くは続かないことを予感させていた。




