【4夜目‐1】 芽玖と絵美。別好の好きなひと。
翌日。風呂場に現れたのは、芽玖、別好、絵美の組み合わせだ。
情はどうしたのかな? と思っていると、芽玖と絵美の会話から、すこし風邪気味なのだとか。
別好に視線を向ける。
彼女は、芽玖と絵美の胸元を見ていた。
ふたりはスタイルがいい。
ツーショットで、アンスタにあげたら、大バズり間違いなしだろう。
別好は僅かに膨らむ胸に手を当てて、すこし元気なさそうだ。
芽玖と絵美は入念に体を洗い湯船に。
別好はすでに浴槽内にいた。
「絵美ちゃんは学校に、好きな男の子とかいないの?」
芽玖が優しく訊ねる。
「いや、いないってぇー……。
このあいだも話したけど、ふざけてばかりの男子とかしかいないんだから……」
湯船に浮かぶマンボウくんを手に取った絵美が、自分から話題を逸らすように、別好へ矛先を向ける。
「別好の好きな人はー?」
「……………」
別好が無言で俯く。
「まあ、別好は男子苦手だったからね〜〜。
いないか」
(──男子苦手なのか?
苦手どころか、俺と普通に相風呂してるんだが……)
「芽玖姉は、彼氏とかいないの〜?」
今度は芽玖へと問う。
「わたしは、みんながいればそれでいいのよー」
芽玖が穏やかに目を細める。
「それ、いちばんズルい返しだよぉ〜〜!!」
絵美が目をうるうるとさせる。
……なんだか意外だな。
「あっ、明日提出する作文、書かなきゃ!」
先ほどまで泣いていた赤鬼が、パッと表情を切り替えて、立ち上がる。
それに応じて芽玖も立ち上がり、マンボウくんを抱えて風呂場をあとにする。
静けさがおとずれ、完全に別好とふたりきりになった。




