【2夜目‐1】 情と絵美。ハーレムダッツの味。
翌日。昨夜と同じく、芽玖、情、別好、絵美の4人組+マンボウのおもちゃのマンボウくんが風呂場へとやって来た。
芽玖、情、絵美は昨日同様、俺のことを全く気に掛けていない。
唯一、別好だけが俺のほうをチラリと見た。
時刻は風呂場に壁掛けのデジタル時計では、夜9時半を示している。
芽玖が仕事から帰り、みんなで晩ご飯を済ませた後らしく、お腹がふくれていた。
情がマンボウくんを湯船に浮かべる。
体の汚れを落とし、めいめいが浴槽につかる。
別好だけ、特に体を洗い流すことなく湯船に入った。
芽玖は相変わらず胸が大きい。
俺は芽玖から目を逸らし、別好のほうへ顔を向ける。
青みがかった銀髪が濡れて輝いている。
髪の長さはミディアムボブくらいで、普段どういう服装をしてるのかなと気になった。
そんなことを考えていると、視線がかち合う。
「……………」
こくんと別好が頷く。
(──かわいい)
思わず心がぐらつく。
俺がときめいているなんて露知らず、小学生の絵美が「いただきまーす!」と元気に言って、カップアイスの蓋を開ける。
器用に、浴槽の縁にカップを置いて、食べ始めた。
腹はふくれているだろうに、別腹か?
しかも、高価なハーレムダッツ。
……令和の女子小学生、恐るべし。
「そのハーレムダッツ、何味?」
興味津々に、情が絵美に訊ねる。
「宇治抹茶タピオカミルクティー味」
「やっば、新作じゃん。
どこのコンビニでも売り切れだったんだよねー。
ねっ、ひとくち!」
「……算数の宿題1日分」
「んーー……、乗った!」
ちょっと悩むも、ほぼ即答だ。
「はい」
あーん、と開ける情の口に、スプーンを差し入れる絵美。
「おーいしーいーー!
──ね、もうひとくち!」
「ダメ、なくなる」
「けちーー」
情は、たいらな胸を反らして、不満を露わにする。
年長の芽玖は、2人の様子を微笑ましげに見守っていた。
そして、胸に抱いたマンボウくんの頭を、優しげに撫でる。
──そして俺は、そんな芽玖の後ろにいる別好を見ていた。




