86「等価交換取引」
ショパンとラフマニノフは「等価交換取引所」に来ていた。
等価交換取引所のコーヒーブレイクエリアには、パソコンを触っている1人の女性が。
ラフマニノフ「この人の等価交換取引を解除してほしい」
等価交換取引所の所長に会い、ゲンの取引をやめさせるように頼んだが。
所長「等価交換取引は本人以外は解除できないようになっています。委任状や本人代理証明書がなければ無理です」
ラフマニノフ「いくらでも金は払う。俺達の大事な友達なんだよ!! 俺達の夢を叶える代わりに、俺達の記憶を失うというものだ。解除してほしい取引した人はゲンという」
ショパン「所長さんならいくらでも解除できるはず。なんでも言う事聞きます。どうか、ゲンという人の等価交換を終わらせてほしい」
所長「あなた方がゲンさんの大事な友達という証拠を用意できますか??」
ショパンとラフマニノフはマスクとサングラスの変装を解いた。
所長「なんと……ショパンとラフマニノフだったとは……」
所長は驚いた様子でまた聞き返した。
所長「ゲンさんと親しい間柄という証拠はありますか??」
ラフマニノフ「一応、このUSBメモリーにゲンとの親しいという今までの証拠が保存されている。見てみてくれ!!」
所長がパソコンにラフマニノフから渡されたUSBメモリーを挿すと、後ろの女性が「ヨッシャ!!」と声を上げて、みんな女性を見た。
女性「ああ、すいませ〜ん」
女性は頭を下げ、奇声を上げたことを謝罪した。
所長「写真がたくさんありますね。しかし、写真だけでは証拠になりません。いくらでも加工捏造できますからね」
ラフマニノフ「いくらなんでも厳しすぎないか?? 俺達は有名な音楽家で、最近までゲンは俺達の経営する音楽学校の副校長をしていたし、俺のコーヒー店の店員もしていたし、周りの人に聞き取り調査をすれば、すぐに俺達がゲンの親友だって分かるはずだが……」
所長「ルールですので。私は所長です。いくら金を積まれても、買収はできません。等価交換取引はゲンさん本人の意思で行われたものです。ゲンさんを無理やり連れてきて、解除させるしかありません」
ショパン「ゲンは連れてこれません」
所長「では、あきらめてください。ルールは絶対です。所長としてたくさんの部下を裏切ることはできません」
すると、
「やったー!!」
また、後ろの女性が奇声を発した。
所長は女性に「所内ではお静かに!!」と注意した。
「すいませ〜ん!!」
女性は嬉しそうに返事した。
所長「ラフマニノフ様、お引き取りを。ゲンを連れてきてください。それか本人代理証明書を持参して、また来てください」
ラフマニノフ「話にならないな!! ショパン行くぞ!!」
ショパン「うん!! この所長さんは融通が利かないね」
ラフマニノフとショパンが等価交換取引所を出ていくと、奇声を2度も発した女性も二人を追いかけるように出ていった。
ラフマニノフ「バイオレット!! 上手く行ったか??」
バイオレット「ええ!! ハッキング完了したわよ。もう、ゲンの等価交換取引は解除されたわ」
ショパン「バイオレットがハッキングの達人だったとはね。助かったよ」
そう、ラフマニノフは恋人のバイオレットに頼み、等価交換取引所のセキュリティをハッキングして忍び込み、ゲンを取引から救ったのだ。
ラフマニノフが所長に渡した「USBメモリー」に、バイオレット特製のハッキングウイルスが入っていた。
ショパンとラフマニノフはゲンに会った。
ゲン「僕の等価交換を勝手に解除したのか??」
ラフマニノフ「ゲン。俺達がゲンを犠牲にしてまでして叶えたい夢なんかあると思うか?? なぜ、あんなことをしたんだ??」
ゲン「どうやって僕が等価交換取引したことを知ったんだ??」
ショパン「君が地上世界で書いたノートを見たんだよ。そこに書いてあったから分かったんだよ」
ゲン「ノートを運悪く見られたのか。ついてないな。ショパンとラフマニノフが夢を叶えてくれるなら、僕は2人の前から消えてもよかったのに」
ラフマニノフ「まだわからないのか?? なんで気づかないんだ!!!!」
ラフマニノフはゲンを思いっきり殴った。
ゲンはラフマニノフの怒りと友情のパンチを顔に食らい、
その場に倒れた。
ゲン「ラフマ……」
ラフマニノフ「お前を失うくらいなら、夢なんて捨てたほうがマシだ!! もう、絶対に勝手なことするんじゃないぞ!!」
ゲン「……」
ショパン「ゲン!君が地上世界でノートに等価交換取引について書いて、そのページを開いて僕らに見れるようにしていたことで分かったんだよ。本当は、君は等価交換取引したら、僕らが止めに来ると気づいていたんだよ。だから、ノートを開いたままにした。開いてなかったら、僕らはゲンが等価交換取引したことを知らないままだったよ。霊界から地上世界のノートをめくることはできないからね」
ゲン「勝手なことしてごめん。でも、君たちの夢はこのままじゃ叶わないよ。ベートーベンとモーツァルトのフルビットミュージックを超えるにはオーケストレーションを学校の指導プログラムに入れないと」
ラフマニノフ「だからこそ、優れたシンガーソングライターのゲンが必要なんじゃないか!! シンガーソングライターとしてオーケストレーションの指導も、クラシック音楽家の私たちと違ったものができるしな。俺達の夢を叶えるにはゲンが必要だ!!」
ショパン「オガサイ音楽コンテストランキングで我がエキスパートピアノ音楽学校が1位のフルビットミュージックを超えること!! ゲンがいないと叶いそうにない。これからも僕達のそばにいてくれるね??」
ゲンは涙を流しながら頷いた。
ゲン「もちろんです」