85「自己犠牲」
ショパン「ゲンとの位置情報共有アプリでも、ゲンの居場所が表示されない。ゲンは僕たちにどこにいるのか知られたくなくて位置情報共有を解除したみたいだね」
ラフマニノフ「……なぜ、急に。なんか不自然だ。裏がある気がしなくもないな」
ショパン「擬人猫化したピンクダイヤモンドとオレンジダイヤモンドが現れたのと何か関係あるかも。だって、ゲンの失踪と同じ日に擬人猫が生まれたからね」
ショパンとラフマニノフは擬人猫の2匹を問い詰めた。
ピンクダイヤモンド猫「本当に何も知らないの」
オレンジダイヤモンド猫「ピンクダイヤモンドに同意です」
ラフマニノフ「何故、ダイヤモンドから擬人猫が生まれたのか調べないとな」
ショパン「実は前に僕がピアノから生まれた理由を調べたけれど、まさに、この霊界でも解明されてない自然現象らしい。物質がいきなり心を持つことから始まったという仮説はあるらしいけれどね」
ラフマニノフ「ゲンがいきなりキレていなくなるなんておかしいよ。俺たちといる時に一番笑顔で幸せそうだったからな」
ショパン「こうなったら、ゲンには悪いけれど、地上世界のゲンの肉体に会いに行き、睡眠中の幽体離脱時に、ゲンに聞くしかないよ!ゲンは僕らに会いたくないだろうけれど」
ラフマニノフ「地上世界のゲンの肉体はどこにいるのか調べられるからな!! いくらゲンでも肉体からは逃げられないからな」
ショパン「地上世界のゲンの肉体に会いに行こう!! 今すぐに!!」
地上世界のゲンの肉体に会いに行ったショパンとラフマニノフ。
ゲンは自宅で作曲をしていた。
地上世界で新たに配信リリースするオリジナルアルバムを制作していたのだ。
DTMなどがある音楽制作の部屋にショパンとラフマニノフは霊体でゲンのすぐ目の前にいた。
ショパン「ねえ、ゲンの作曲している姿は初めて見るよね」
ラフマニノフ「コーヒーは『金の微糖』だな。飲んだことないな」
ショパン「一口、飲んでみれば??」
ラフマニノフ「いや、今は早くゲンが睡眠に入り、幽体離脱してもらうことを待つしかない。コーヒーは後回しだ」
2時間程、音楽制作に没頭したゲンは、ノートに何やら書き出した。
ショパン「ゲンがノートに何か書いてるよ」
ラフマニノフ「『ショパンとラフマニノフには何としてもオガサイ音楽学校コンクールで1位になって、夢を叶えてほしい。そのためには猫たちに活躍してもらうしかなかった。僕はショパンとラフマニノフから離れる代わりに、二人の夢を叶える力になりたいと考えた。二人と会っている時だけ、二人のことは忘れ、記憶喪失になるという代償を支払い、猫たちを誕生させた。猫たちはオガサイ音楽学校コンクールでエキスパートピアノを1位にさせることができる幸運の猫だ。ショパンとラフマニノフが夢を叶えてくれるなら、僕は二人から離れ、記憶を失っても構わない……』」
ショパン「そんな!! ゲンがそんなことを考えていたなんて」
ゲンは日記を机に開いたまま、眠りについた。
ゲンの肉体から霊体が現れ、空中に上昇してゆく。
ゲンの霊体はすぐに瞬間移動した。
ラフマニノフ「しまった!! ゲンが瞬間移動してしまった。だが、肉体から幽体離脱した場合、シルバーコードと呼ばれる魂の緒がついている。それを辿ってゆけば、ゲンに会えるさ」
ゲンのシルバーコードを辿っていって、霊界を彷徨うゲンの肩を掴んだ!!
ラフマニノフ「ゲン!!」
ゲン「何ですか。誰ですか??」
ショパン「やはり、記憶を失ってしまったのは、ゲンのノートに書かれていた通りみたいだね」
ラフマニノフ「ゲン!! 俺だ!! 目を覚ませ!! ゲン!!」
ゲンの肩を掴みながら、体全体を揺さぶり、ラフマニノフは必死にゲンの記憶が戻らないか期待したが……
ゲン「やめろよ!! なんだいきなり!! いい加減にしろよ!!」
ゲンはラフマニノフをはねのけたが、ラフマニノフはゲンを強引に強く抱きしめた。
ラフマニノフ「ゲン!! すまない。ごめんな。俺たちの夢を叶えるために、記憶を失ってまでして、、、そこまでして……」
ラフマニノフはゲンを抱きしめたまま泣き出した。
ゲン「離せ!! 何の話をしているんだ?? あんたなんか知らないよ」
ショパン「ゲン……」
ゲンはラフマニノフから逃れ、霊界の彼方へと消えていった。
ショパン「ラフマ。。ゲンのはたぶん、等価交換取引だよ。自分が大事な親友の記憶を失う代わりに、僕たちの夢を叶えさせようとしたんだ」
ラフマニノフ「なんとしてもゲンの記憶を取り戻す!!クソみたいな取引も終わらせる!!」
二人はゲンの自己犠牲に心を痛めた。
そして、必ずゲンをいつものゲンに戻してやることを決めた。