11「霊界大浴場」
ある霊界の大浴場。
ラフマニノフは風呂についてる蛇口から水をひねり出し、勢いよく飲みだした。
ラフマニノフ「ガボボボボボ」
ショパン「風呂上がりにいつもコーヒー牛乳飲むんだから、
あまり水道水なんて飲まないほうがいいんじゃない?? 喉が
渇ききってから飲むから美味しいって言っていたくせに」
ラフマノニフ「お前は分かってないんだよ。ここの銭湯の水
道水はめちゃくちゃ美味いことをな。お前もほら、飲んでみ
ろ!! ほら!!」
ショパン「ちょっと……ガボボボボボ」
ショパンは強引にラフマニノフに頭を抑えつけられ、蛇
口から出る水を飲まされた。
ショパン「強引すぎるよ。それに僕はこれから美味しいココナッツミルクを飲むんだから水で腹満たしたくないよ。味もいまいち違いが分からないし」
ラフマニノフ「アームストロングも飲んでみろ」
アームストロング「なんか喉が気持ちいいですね。ミント
みたいな爽快感というか。スースーしますね」
ショパン「ミントなんて味しなかったけど」
ラフマニノフ「ここの水道水は美味いと思い込めば美味い水が、まずいと思い込めばまずい水が、普通の水と思い込めば普通の水が出るようになっているんだ。つまりその人が思っている水がそのまま出るってわけだ」
ショパン「アームストロングはミントの水を意識していた
ってこと??」
アームストロング「さっきチョコミント食べたから、そのミントの味が口に残っていただけだと思いますが」
ショパン「ラフマの嘘つき。そんな思い通りの水が出る魔
法の蛇口なんてあるわけないだろ」
ラフマニノフ「バレたか。まあ、いいじゃないか。だが、ここの水は霊界でも評判の美味しさらしいぞ??」
カノ「おーい、俺のこと忘れてない?? すごい疎外感なんだけど??」
ショパン「カノも飲んでみなよ!! この蛇口から出る水を」
カノ「うーん……やはり普通の水にしか思えない」
みんなが水について話している時に、ラフマニノフのピアノ協奏曲2番がいきなり風呂全体に流れ出した。
ショパン「ラフマのコンチェルトだ。なんでいきなり流れたの?? あれっ?? いつの間にかラフマがいない。どこいったんだ??」
風呂の中に大きなスクリーンが出現し空中に浮いている。
ラフマニノフがタオル一枚でピアノに向かい、ピアノ協奏曲2番を生演奏しているシーンが飛び出した。
生中継と書かれている。
アームストロング「そうです。内緒にしておいてと頼まれて
いました。ラフマは今日、この大浴場でコンチェルトをオーケストラと一緒に生演奏する企画を計画していました。
その名も『ラフマニノフが風呂後にピアノ生演奏』です。ラフマニノフのコアなファンから、風呂後にタオル一枚で飛び出て、体から出る湯気とともにピアノを演奏するラフマニノフが見たいという報酬付きリクエストがあったので、それに応えることになりました」
カノ「なんでそんなの引き受けたの?? 報酬が莫大とか??」
アームストロング「報酬は十億ポイントです」
ショパン「そんなに貰えるの??」
アームストロング「ショパンに半分、報酬を分けてやるんだ
って言ってました」
カノ「あいつ、なんだかんだいって人情の塊だな」
ラフマニノフはタオルで局部を隠し、ピアノ協奏曲2番を弾
いた。
しかし、あまりに魂込めて全力で弾いているので、タオルが徐々にずれて、股間が丸見えになった。
「キャーキャー」
観衆は騒いでいるが、ラフマニノフはお構いなく弾いてい
る。
ラフマニノフ自身の作品、2番を弾いた後、なんとショパン
のピアノ協奏曲1番2楽章ロマンスラルゲットを演奏したラフマニノフ。
ショパンは自分の作品を弾いてくれるラフマニノフに感激した。
ショパン「ラフマが僕のコンチェルトも弾いてる……」
ショパンは自分がラフマニノフに認められているよう
で嬉しかった。ただ、ラフマニノフの股間はみんなに丸見
えだった。
ラフマニノフは演奏後、床に落ちたタオルを拾い、股間を隠し、一礼した。割れんばかりの拍手と喝采。
アームストロングは言わなかったが、この企画は「ラフマの
貴重な全裸が見たい方必見!!すべて隠さず見せます」とい
うのが隠されたメインテーマだった。
ラフマニノフはショパンたちの元へ戻ってきた。
ラフマニノフ「どうだった?? 俺のライブは??」
ショパン「見てるこっちが恥ずかしくなったよ。股間丸見え
のままだったじゃないか」
ラフマニノフ「俺の立派な股間にはたくさんの需要があるのさ」
カノ「ただの変態じゃない?」
ショパン「十億ポイントのギャラのせいでラフマはここまで堕ちることになったのか??」
ラフマニノフ「細かいこというな。見たい人に見せただけだ。合法だ。ショパン、、5億ポイント受け取れ!!」
ショパン「なんで?? いらないよ。君のものだろ??」
ラフマニノフ「お前のピアノ協奏曲1番も弾いたんだから、
お前の作品を演奏した以上は、お前にもギャラを渡す義務が
ある」
ショパン「そうか。君がそこまで言うならもらおう。でも、一億でいいよ。演奏したのは君なんだし、2楽章しか演奏されなかったのに半分も受け取るわけにはいかないよ」
アームストロングはショパンに聞こえないように小声でラフ
マに耳打ちした。
アームストロング「ラフマ。わざとショパンの曲を弾いて、
ショパンにポイントをあげる口実を作ってあげたんだね。シ
ョパンがもらうのを拒否しないように。納得するように。い
いところあるじゃないか」
ラフマニノフ「あいつには救われてばかりだからな。普段は
照れくさくて言えないが、オレを孤独から解放してくれた恩
人だからな」