80「そしてまた始まってゆく」
ショパンとラフマニノフがW校長を務める「エキスパートピアノ音楽学校」は入学式を迎えていた。
250名の新入生たちが会場に集まっていた。
「これより校長先生からの挨拶です」
舞台の袖から勢いよく逆立ち歩きしながら現れたのはラフマニノフだった。
「ワアアアア」
新入生の大きな歓声が巻き起こる。
逆立ち歩きという発想はある知り合いから得たものだった。
マイクの前に立つと一呼吸おいてものすごい大声で挨拶を始めた。
「新入生……」
キーン!!
あまりに大きな声で叫んだので、、マイクがキーンとなった。
声量を調節しながら、キーンとならない程度の最大の大声で話し始めたラフマニノフ。
「新入生の皆様!! 我がエキスパートピアノにご入学おめでとうございます。私がなぜ逆立ちしながら登場したかというと、皆様方には今までにない斬新さを最大限にこだわってほしいからでございます。逆立ちしながら登場する校長先生なんて
私以外いないでしょう」
ラフマニノフが独特の挨拶をし終えた。
「続きまして、、もう一人の校長先生からの挨拶です」
司会がその言葉を発した瞬間に、、ピアノの音が流れ出した。
これはショパンの舟歌だとピアノ好きの新入生たちはほとんどが理解した。
壇上の袖からグランドピアノがエスカレーターのように流れてくる。
そこには一人の男が。
「ワアアアアアアアアアアアア」
新入生の怒涛の大歓声が起こった。
どうやらこの男が舟歌を弾いていたようだ。
その男は舟歌を弾き終えると、先ほどラフマニノフが挨拶したマイクの前に立った。
「みなさん!! 私がこのエキスパートピアノのショパンです!! ご入学おめでとう。私が舟歌を弾きながら登場したように、『意外性』を何より大事にしてください。それが何よりの魅力の一つになるでしょう」
「ラフマー!!!」
ショパンはラフマニノフを呼んだ。
そして、、二人は声を合わせながら
「私たちのことを超える音楽家を目指してください!! 憧れるのをやめ、ショパンとラフマニノフのレベルが当たり前なんだと頭の中をブランドチェンジしてください!! 憧れるのをやめなければ、私たちを超えることはできません!!」
とマイクの前で叫んだ。
二人は固い握手をして袖に退場した。
新入生250名たちはたくさんの拍手を送った。
その後、映画館にあるような巨大なスクリーンが登場し、30分ほどの映像が流れた。
「天才音楽家『ショパン&ラフマニノフ』を凌駕するための学校。それがエキスパートピアノ!!」
「ピアノの魅力を知るために、まずはピアノの音色を大好きになること」
「なぜ、、ショパンとラフマニノフがバディを組み、ピアノの発展と貢献に尽力するか。それは……」
映像を見終えた後は、、ショパンとラフマニノフと直接、握手できる「握手会」が行われた。
ショパンとラフマニノフに一人につき10秒ほど握手し、会話できる。
壇上にショパンとラフマニノフが横にならび、新入生達が列をなして、握手していく。
中にはわざと壇上で転び、ショパンとラフマニノフに手を貸してもらうことで、握手する時間を増やす知能犯もいたが、ショパン達はそのことを大いに褒めて嬉しがって称賛した。
そこまでしてまで握手する時間を増やしたい。ショパンとラフマニノフと触れ合っていたいという積極的で願望が強い。
「みんなもこのわざと転んで握手する時間を増やした者のように、願望を強く持ち、創意工夫していくことだ!!」
とショパンとラフマニノフはどんなことも無駄にはならないことを新入生に教えていた。
入学式が終わった後の校長室にて。
「俺達が現れた時にどちらが生徒たちの歓声が大きいかを競うゲームだが、、ショパンのほうが3倍、俺より生徒たちの声が大きかったな!! 俺の負けだ!!」
「当然だよ!! 僕のほうが人気も実力もラフマより優っているからね!!」
「いつかお前を超えて見せるからな!!」
「楽しみにしているよ!!」
「おう!! これから必ずショパンを超える!! ショパンはピアノ曲を生み出す最大最高の天才だ。だが、オーケストレーションとピアノの演奏の実力では俺のほうが上だ。必ずショパンを超える!! 音楽家として総合力でな!!」
「ピアノ曲以外でラフマは僕より勝っているところがたくさんあるから、本当は負けているとはいえないけどね!!」
「それよりショパンに会えて本当によかったよ」
「ラフマに会えて本当によかった!! 今までたくさんのことがあったよね」
「なあ、ショパン!! これからも様々な冒険が俺達を待っているよな!!」
「ワクワクするね」
「ショパンと一緒ならどんな困難も余裕で超えていけるさ」
「ラフマこそ、、僕から離れるなよ??」
「当たり前だ!! 俺達は宇宙最高のバディだぞ?? ショパンが俺に自分が存在していることに喜びを与えてくれた!! 永遠に人生は続くのも悪くないと思わせてくれた!!」
「僕こそラフマには感謝しきれないよ。本当にありがとう。君がいなければ僕は今頃、ピアノに戻っていただろうね」
二人は固い握手をして、、互いの絆を確かめた。
この二人なら乗り越えられない壁はない。
どんな時も協力し合い、助け合い、思い合い、
夢を叶えてゆくだろう。