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68「児童養護施設」

 ショパンは「慈悲院」と呼ばれる児童養護護施設にいた。


 貧しくてピアノが買えない、ピアノを習えない子供たちが大勢いて、自分にも何か力になりたいと定期的に訪れているのだ。


 慈悲院のボロボロのピアノでバラード5番を弾いていると、

ひとりの男の子が近づいてきた。


男の子「いつもありがとう」


ショパン「自分が好きでやっていることです。ただの自己満

足ですからね。でも、もし、私に恩を感じることがあるなら、将来、困っている人たちを私と同じように助けてあげられる人材になってください」


男の子「ショパンさん。僕は貧しいです。食費も事欠くよう

な日々です。なぜ、僕みたいな弱い立場の人たちが生まれるのでしょうか。生きている価値があるのでしょうか?? 助けてもらわないと生きていけないなんて、あまりに情けなくて、生きているのが苦痛です。いっそ、こんな弱い立場に生まれてしまったなら、自分の存在ごと無かったことにしたいです」


ショパン「なぜ、弱い者がいると思う?? それはね、この世の法則だからだ。強い者もいれば弱い者も当然いるんだ。強い者になればなるほどその人数は少なくなってくる。弱い者が強い者よりも多いのがこの世界の法則なのさ」


男の子「でも、どうせなら才能があったり、お金がある強者に生まれたかったです。悔しいです」


ショパン「初めから強い者だったら、弱い者の気持ちが分からない。でも、弱い者に生まれたら、同じ弱い者、困っている人達の気持ちが理解できる。助けてあげられるんだ。だから、同じ弱い者のために生きられる人になってほしい」


男の子「僕にも使命があるのでしょうか?? 何ができますか??」 


ショパン「実際に、私がこうやって君たちに奉仕してあげる

ことで、私は幸せをもらっている。喜びをね。それだけでも、君たちの、弱い者たちの存在価値は十分あるんだよ。私も弱かったよ。音楽の才能が破格の天才だが、過去には、前世では、貧しい社会的弱者に生まれたこともある。音楽の才能がいくらあっても、環境や状況的に、才能を開花させられない、生かせない環境になってしまっていて苦しんだよ。人生が苦痛だった。そんな過去もあるよ。環境は自分で作るもの、選ぶものっていったって、限界がある。国から出られない場合もあるし、その国が独裁的で貧しい国だったりしたら、お手上げだしね。私も弱い立場だったから、君たちの気持ちはとてもよく分かるよ。でも、ありがとう。私が君たちにピアノの演奏や資金の提供をしていることで逆に、自分が人の役に立っていて、善いことしているって喜びを感じられているわけだから。君たちに感謝してる」


男の子「こんな僕にもできることがあるんでしょうか??」


ショパン「もちろんだよ。できることしかない!!!どうし

ても後ろ向きの感情が出てきて、落ち込んだり、マイナス思考になったり、消えたくなったりすることはあるだろう。でも、君の使命はこれから強くなって、同じ弱い者の人たちのために行動することだよ。お互い、弱かった者同士ならば、共感

の嵐を呼ぶ。『強い者には私達の気持ちなんてわからない』と反発されることもない」


男の子「成功者で強い者であるショパンさんがこんなにも僕達のために時間を使ってくれていて、なんと言葉をかけたらよいのか分かりません。本当にありがとう」


ショパン「これから強くなっていこう。そこの至るまでの過程を楽しむゲームを神様から与えられたんだよ!!これから、成功して、弱い者たちを助けられる人になろう!!!」


男の子「弱い者でよかったです。だからこそ、弱い者を助け

られる。気持ちをわかってやれる。

決して、悪いことではなかったんですね!!!これから強く

なっていきます。ショパンさんに負けないくらい!!!」


ショパン「元々弱い者であった人が、努力して、強い者

になる、成功者になるほうが物語としては感動するじゃないか。ドラマ性があって。だから、そういう感動の物語をつくるために、あえて、弱い者に生まれてきたんだよ。最初から強かったら、なんか逆につまらない物語になると思う」


男の子「僕の生命の旅路も、物語なんですね。RPGだ!!」


ショパン「成功するまでの道のり、苦労や努力を楽しむため

に、今はスタート地点だ。これからたくさん楽しめるゲームなのさ」


「ショパーーーン!!!ケーキを買ってきたぞ!!!」


 ラフマニノフが遅れて登場した。


ラフマニノフ「さあ、みんな好きなだけ腹一杯食べていいぞ!!」


男の子「わーーー。ありがとう!!!」


 慈悲院の15人ほどの子供たちがショパンとラフマニノフの

周りに集まり、ケーキを食べ始めた。


ラフマニノフ「いつ見てもいいな!!!こうやって、みんなが美味しそうに食べるところは!!」


ショパン「みんなが泣いて喜んでくれる。これが僕たちの最大の幸せなんだよ」


 2人の天才音楽家は弱い者への善行を喜んでやっていた。


 自分たちが以前、弱い者であったように、今度は、強い者になった自分たちが、同じ立場になった弱い者を助けてあげたい。


 いつまでも利他の心を忘れずにいたい。


 それが2人の生き様なのだ。

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