62「ラフマニノフのコーヒー屋さん」
コーヒー屋のゲンに手伝ってもらいながら、ラフマニノフは
念願だった自分の店である
「俺のコーヒー」をオープンしようとしていた。
店の内装カラーはピンク色で統一して、異色のコーヒー店と
して有名になることが目標であった。
最終目標はこの地球圏霊界において、最も人気で有名なコー
ヒーブランドへと成長させること。
「ラフマスペシャル」という独自のコーヒーを開発した。
ショパンも協力してくれているのだが、コーヒーに関しては素人なので、あまり味に対して的確なアドバイスはできなかったが、かえって、コーヒーのプロであるゲンと素人のショパンが素晴らしい相乗効果を生み、貴重な意見として参考にできることも。
ラフマニノフ「ショパン、どうだ?? 俺の店だぞ」
ショパン「やはり予想的中したな。ピンク色で店内を統一す
るとはね。ラフマらしいっちゃらしいが……」
店内は机と椅子がたくさん並び、約500名がコーヒーを楽
しめるくらいの規模の、コーヒー専門店としては破格の広さを誇っていた。
地球圏霊界で最大規模である。
ラフマニノフは霊界で一番大きなコーヒー専門店というのにこだわったのだ。
ゲン「僕もラフマブレンドが霊界で一番人気な銘柄になるま
で、この店のスタッフをするつもりです。ラフマニノフと一緒に仕事ができて嬉しいです。ラフマニノフの夢を叶えてやりたいのです。ラフマニノフとコーヒー店をやることは、私の昔からの夢だった」
ショパン「でも、ゲンの店は大丈夫なの?」
ゲン「店はしっかり機能させていますから大丈夫です!」
店はオープンした。
前々から大々的に宣伝していたこともあり、たくさんの来客があった。
500人なんかあっという間に超え、入場制限をしなければ
ならなくなった。
本日の客は3000人ほど。
ショパンとラフマニノフがW校長を務めるエキスパートピアノの生徒が約6割を占めていた。
エキスパートピアノでチラシや口頭で、ラフマニノフの
コーヒー専門店「俺のコーヒー」を宣伝したからである。
オープン記念で100生命ポイントという超格安の料金でコー
ヒーをおかわりし放題だった。
あまりにたくさんの人が来たため、なるべく多くの人に楽しんでもらえるよう、一旦、入店したら30分以内に店を退出しなければならないという決まりも急遽、定めた。
入場制限で店に入れない人を少なくしたかった。
看板メニューはもちろん「ラフマブレンド」
これを霊界最大の銘柄にしようという野望があった。
その他に、メニューは15種類。
その中には「ショパンブレンド」「ゲンブレンド」も含まれていた。
ショパンとゲンが開発した特製オリジナルブレンドであ
る。
ショパンが最もおいしいと感じる豆の配合を。
ゲンも同様だった。
ショパンもラフマニノフにそそのかされ、コーヒー開発を忙
しい合間を縫ってしていた。
それから、
「ラフマブレンドを用いた特製カフェオレ」
「メープルシロップとマーガリンのパンケーキ」
などもある。
ラフマが一番気になっていたのが「ラフマショパンゲンブレンド」だ。
それぞれの3人の名前が冠したコーヒー豆をブレンドしただ
けの単純なものだった。
この「ラフマショパンゲンブレンド」がとても美味しいという声があった。
ほとんどが「ラフマブレンド」を注文したが、少ない客が、この「ラフマショパンゲンブレンド」を注文して飲み、賞賛してくれた。
そして、ラフマの中でこういう感情が芽生えだした。
「3人で力を合わせたこのラフマショパンゲンブレンドこそ
霊界最大の人気コーヒーにしたい。一人だけのラフマコーヒーより、みんなで喜びを分かち合えるからだ」
接客で忙しかったが、あらかじめ用意して作ったコーヒーを
コップに注ぐだけ、客にカウンターまで来てもらい、渡すだけなので、自分たちもコーヒーを飲む暇があった。
「ラフマニノフ ショパン ゲン」この3人のみで店をどうしても回したいというこだわりがラフマニノフにはあった。
他にスタッフは雇いたくなかったのだ。
支払いはどんなに飲んでも100生命ポイント。
今日だけだが。
オープン記念なので特別価格での提供だった。
それは生命時計と呼ばれる時計を、あるレジのタッチ画面にかざすだけで支払いが済むようになっている。
地球圏霊界に住むすべての人たちは「生命時計」を腕に装着
している。
それには自分の「生命ポイント」が表示されていて、その生
命時計で支払いができる。
生命ポイントは霊界でのお金と同じ役割があり、あればあるほど様々なサービスを受けられる。
この霊界に来る前の地上世界での、物質界での肉体的苦痛、精神的苦痛、人や社会での善行、貢献量により、生命ポイントがいくらもらえるのかが決まる。
つまり、生きていて今まで味わった苦痛が多ければ多いほ
ど、天国の霊界ではお金がもらえるというシステムであり、苦痛を無駄にしないという神からの配慮があった。
全宇宙に存在する無数の霊界でも、霊界に来れば、同じように「生命時計」が自然に装着されるようになっていて、これを無くすことはできない。
時計自体を見えなくすることは可能でも、生命レベルで深く結びついていて、万人に生命時計は存在する。
3000人ほどの客を接客するのにとても忙しくて、しか
し、喜びでいっぱいの3人であった。
ラフマニノフは自分のコーヒーを飲んでくれる客たちの「美味しい!最高だ!素晴らしい!」といった言葉とコーヒーを飲んでいるときの幸せそうな表情に、これ以上の喜びはないというくらいであった。
ラフマニノフ「俺たちのコーヒーがみんなを幸せにして、癒
しの時間を与えている。こんな嬉しいことがあるか?? しかも、ショパンとゲンまで一緒になって、志事している。最高だな」
ショパンとゲンもこの日初めて「ラフマショパンゲンブレンド」を飲んだ。
ショパン「少し酸味があって、香りがすごくいい!ブラッ
クで飲むことの魅力に気づかせてくれた。これからはブラックでコーヒーを味わうよ!」
ゲン「強烈な味だね。これがナンバーワンになるには、時間
がかかる。改良を重ねよう」
そして、ラフマニノフはショパンとゲンに今日の報酬を払った。
100万生命ポイントずつだ。
ショパン「いらないよ。僕はお金より大事なものをもらった
から。ラフマと一緒に志事ができた幸せをね」
ゲン「僕はもらいたいな。何故なら、霊界の恵まれない子供
たちを救うための食糧と家を購入する資金にしたいから、お金が必要なんだよ!」
ラフマニノフ「そうか。でも、ショパン、受け取ってくれ。それにしても、俺たちは似た者同士だな!」
ショパンとゲンはそれぞれラフマニノフから今日の給料をもらい、ショパンはなんと、それをゲンと同じ恵まれない可哀想な子供たちのための団体に寄付した。
ラフマニノフは自分で子供たちを救う団体を立ち上げるための活動資金にするために使うことを決めた。
ショパンとゲンは子供たちを救う寄付を。
ラフマニノフは子供を救う団体を自ら立ち上げる。
3人は心の根っこが同じだった。
「最も弱い者のために生きたい」
3人は確かに生き方が似ていたのだ。