61「やればできる」
太陽の霊界ではショパンアンチの霊界最高責任者の「クスミマルタ」により、ショパンの作品はすべて太陽圏霊界では演奏禁止、コンサートも禁止、ショパンも立ち入り禁止となっていた。
そのきっかけはショパンのバラード4番を聞いたクスミマ
ルタがショパンの才能に嫉妬して、ショパンを認めたくないという妬みから、嫌がらせをしていたのだ。
表向きはショパンが太陽圏霊界では自分の作品を演奏しな
いようにとクスミマルタに頼み込んだことになっていた。
それは、ショパンがさらに自分以上のピアノ作曲家の存在が冥王星にいたことにより、もう少し、もっとさらにピアノ曲の作曲の技術を高めてから、太陽圏霊界には広まってほしいと思ったとされた。
裏の本当の理由はクスミマルタによるショパンの作品の妨害である。
クスミマルタの息子は地球圏霊界のそこそこ名の知れたピアノ音楽作曲家である。
しかし、ショパンの足元にも及ばないことから、クスミマルタはショパンが気に入らなくなってしまったのだ。
ショパン「僕としてはどうしても太陽圏霊界で自分の作品
が演奏されてほしいし、もっと愛されてほしい。太陽はこの太陽系で一番大きな星であり、一番大きな市場だから。太陽で僕の作品がたくさん演奏されれば、それだけ著作権料により莫大な収入が入るよね。でも、不可能だ。クスミマルタが僕のことを毛嫌いしているからね。あきらめるしかない」
ラフマニノフ「いや、あきらめるな。やればできる。最善を尽くしていないのに、最初からあきらめて何もしないのは最低だ。やれば絶対にできる。よほどのことじゃないかぎり」
ショパン「でも、クスミマルタを変えるなんて無理だよ。も
のすごい頑固で人の意見を聞かないらしいし。こればっかりはよほどのことだよ。だから、やってもできないよ。うまくいかないよ」
ラフマニノフ「まだ行動してないだろ?すべてのできること
をやり尽くしてから言うセリフだぞ?俺が証明してやる。やればできるってことを。不可能はないってことを!」
ショパン「だから!!!こればかりは無理だって!」
5日後、
すぐさま、ラフマニノフは太陽圏霊界のクスミマルタの元へと向かった。
クスミマルタはラフマニノフのことも大嫌いだった。
ショパンと仲が良いからだ。
太陽圏霊界の最上層部の最も高い塔の頂上にクスミマル
タは住んでいた。
クスミマルタは慌てて焦っていた。
自分の息子の「カイリス」が行方不明になったからだ。
3日前にピアノ学校からの帰り道にこつ然と姿を消してし
まった。
行方不明届を提出し、太陽系すべての星の霊界での捜索が開
始されていた。
ラフマニノフ「クスミマルタさん。地球圏霊界の音楽家のラ
フマニノフです。実は大事な話がありまして。時間を設けていただきたいのですが」
クスミマルタ「今、それどころじゃない。わたしの息子が行
方不明なのだ。それに、話し合いは絶対にしないからな。私はお前のことが嫌いだ」
ラフマニノフ「息子のカイリス君のことでお話があるのです
が……」
クスミマルタ「何??」
クスミマルタの表情が一変した。
クスミマルタはやむを得ず、ラフマニノフと話し合いの場を設けた。
クスミマルタ「どんな話だ?? カイリスについて何か知っているのか??」
ラフマニノフ「カイリス君。姿を現しなさい」
カイリス「はい!ラフマニノフさん!」
カイリスはラフマニノフの指示通りにクスミマルタの前に姿を現した。
クスミマルタ「カイリス!! どういうことだ??なぜ、ラフマニノフといるんだ?? 今までどこに行っていたんだ?? 死ぬほど心配したんぞ!!」
カイリス「ピアノ学校の帰りの途中にいきなり見知らぬ集団
に誘拐されたんだ。そして、牢屋に監禁されていたところを、ラフマニノフさんがいきなり現れて助けてくれたんだ」
クスミマルタ「ラフマニノフがだと?? なんでラフマニノフがいきなり息子を救い出すんだ?? なんで息子が誘拐された場所を知っていたんだ?? もしや、誘拐犯とグルだったとかないよな?? ラフマニノフよ、、、もしそうならこれは犯罪だぞ」
ラフマニノフ「カイリスが行方不明になっている噂を知り、私が3日間探しまくったんですよ。しかし、カイリスは必ずある場所に監禁されていると分かりました。実は、この手紙を見てください」
ラフマニノフはクスミマルタにある手紙を見せた。
そこには、カイリスを誘拐することと、誘拐場所にラフマニノフが来るようにという指示がされていた。
クスミマルタ「この手紙がお前のもとに来たというのか?? だから、その手紙通りにカイリスの元に向かったということか」
ラフマニノフ「この手紙をよこした誘拐グループのボスに会いました。そのボスはショパンの大ファンで、太陽圏霊界、つまりあなた方の星に住んでいたのですが、どうしてもショパンの曲を太陽圏霊界で演奏できるようにし、ショパンの作品を太陽圏霊界全体に広めることを許可してほしい。今までショパンを拒否していた考えを改めてほしい!という要望が誘拐の目的だったようです。もし、これを断れば、カイリスくんは永久にピアノ学校に通えなくなるし、あなたとも会えなくする。と誘拐グループが言っていました。誘拐はいつでもできると。ショパンのピアノ作品は素晴らしいから、どうしても許可してほしいと。そういうことを誘拐犯のボスからクスミマルタに伝えるように私が頼まれました。大事なカイリス君のために、ぜひ、太陽圏霊界でショパン作品の禁止を解除してください。でないと、カイリス君が危険です」
クスミマルタ「そんなことしたくない。悪に屈したくない。この件は各霊界の警察に任せ、カイリスにはボディーガードをたくさんつけて、誘拐する隙を与えないようにすればいいんじゃないのか??」
ラフマニノフ「なぜ、そこまでショパンを嫌うのですか?自
分の息子を危険に晒してまで……誘拐グループに狙われてしまえば、カイリス君は毎日、恐怖で本当に失踪してしまうかもしれません」
クスミマルタ「カイリスはショパンに憧れている。でも、更
に物凄いピアノ作曲家がこの太陽系にすでに誕生している。しかし、カイリスはショパンのピアノ曲の魅力、味、独創性は唯一無二でショパンにしか出せないから、一生、尊敬して、超えられるようになりたいと考えている。私は、そのショパンより優れたピアノ音楽作曲家に憧れてほしかったから、太陽圏霊界ではそのショパン以上のピアノ音楽作曲家の作品を太陽圏霊界でたくさん広まるように宣伝しているんだ。ショパンに憧れていたらショパンを永遠に超えられない。ショパン以上の作曲家に憧れたら、ショパンを超えられるかもとな。目標は高めに設定していけばいいと。基準は高めにということだ」
ラフマニノフ「お願いです。私のことが嫌いでしょうが、カイリス君のショパンへの憧れを大事にしてやってくれませんか。しっかり見てやってください。カイリス君はずっとショパンのみを愛してきました。ショパンを太陽圏霊界でどうしても演奏したいのだそうです。しかし、あなたがショパンを禁止しているせいで弾けないと苦しんでいるのです。まるで、飛びたいのに羽をもがれた鳥のようにカイリス君は葛藤していたのです。それに気づいていますか?」
カイリス君「パパ。お願い。今までパパが怖くて言えなかっ
たけど、ラフマニノフさんの言う通りなんだ。僕はどうしてもショパンをこの太陽圏霊界で弾きたい。演奏したい。もっとショパンをみんなに教えたいし、ショパンが愛されてほしい。だから、ショパン禁止をやめてほしい。お願いします。僕のために!!」
「ウウウウウ……」
カイリス君は号泣しながら土下座して、パパのクスミマルタに訴えて、お願いした。
クスミマルタ「負けたよ。ラフマニノフにカイリスを助けてもらった恩義、カイリスを誘拐グループから守るために、そして何より、カイリスの意思を尊重しなければな。わかった。これからはショパンを積極的にこの太陽圏霊界に採用する」
カイリス君「ありがとう。パパ。ラフマニノフさん。よかっ
たね。計画どおりだね!」
ラフマニノフ「バカ!それは内緒だ!」
クスミマルタ「何?計画どおりだと?どういうことだ」
ラフマニノフ「まあ、それは置いておいて……ショパンを
これからよろしくお願いします!」
ラフマニノフは太陽圏霊界から帰ってきた。
ショパン「どうだった?? 結局できたの?? 私の作品は太陽圏霊界で許可された??」
ラフマニノフ「ああ!! 許可された。クスミマルタの息子が我がエキスパートピアノに入学することにもなったぞ!!」
ショパン「ラフマって凄すぎない??」
ラフマニノフ「やればできるといっただろ。不可能なことなんてないんだよ!! 俺を誰だと思ってるんだ!! 天下のラフマニノフだぞ??」
ショパン「はああ!! ラフマよ!!この恩は必ず返すから。ありがとう。君にはいつも助けられっぱなしだね。大事なことを教えてもらったよ。やればできるんだって。不可能なことはないんだってね」