48「残酷な真実」
ラフマニノフは霊界で最も人気な占い師の店に来ていた。
3か月予約で一杯だったので、待ちに待った来店だ。
ラフマニノフ「オレの相棒の音楽家とはこれから先、仲良く
やっていけるでしょうか?それともいつか別れは来てしまう
のでしょうか。オレはそれだけが不安です!」
占い師「誓い確定機に誓ったから、あなたとショパンは間違
いなくずっと一緒に、永遠ともいえる時間、一緒にいれる可
能性があります」
ラフマニノフ「なぜ、誓い確定機のことを知ってるんだ?ど
うやって知った?」
占い師「だてに、売れてる占い師じゃありませんよ!」
ラフマニノフ「本当にショパンとはいつか別れることにならないんだな?」
占い師「今、ショパンについて調べます。5分ほどお待ちを」
ラフマニノフ「あなたは何でも調べられる最高の占い師らしいな。期待しているぞ!!」
数分が経った。
占い師「……なるほど。そう来ましたか。ラフマニノフさん。今からとても残酷な事実を申し上げますが、覚悟はいいですか??」
ラフマニノフ「ああ!!」
ラフマニノフはドキドキしながら返事をした。
胸の鼓動が早く打っている。
占い師「今から1年以内にショパンはある危機に見舞われます。ショパンの存在自体を消滅させるかもしれない
大危機です。ラフマニノフさん。あなたは、それを助ける
か、助けないかを選択させられます。一番大事な夢と引き換
えにね」
ラフマニノフ「どういう意味だ?」
占い師「あなたの夢である音楽学校や音楽の仕事をあきらめ
るというものです。ショパンが消滅しないで済むためには、
その夢を捨てるしかなくなります。しかし、ショパンはラフ
マニノフに音楽の夢を託し、自分は消滅することを選ぼうと
します。あなたがどうするかで未来は変わります。音楽の夢
を捨ててでも、ショパンを守るか、ショパンを消滅させてで
も自分の音楽の夢を守るかの残酷な2択を要求されるでしょ
う」
ラフマニノフ「嘘だろ?? 信じられん。初耳だ」
占い師「ショパンはもともと、私たちとは違う生まれ方をしたのです。私たちは万物を創造した神から作り出されましたが、ショパンはあるものから生まれたのです。それはピアノです。あるピアノがいつの日か、我々と同じような心を持つようになり、その心がやがて、ショパンというピアノの詩人を生み出したのです。ショパンはそのピアノそのものなのです。ショパンはピアノに戻る選択をするか、迫られます。ショパンの消滅とは、そのショパンを生んだピアノに戻ることなのです。ショパンの生命は有限で限りがあります。私たちの永遠の生命とは違うのです。ショパンはきっと自分の生命が有限であることを隠しています。自分がいずれ、消滅してしまうことを必死に忘れようとしているのです」
ラフマニノフ「ショパンがいずれ、消滅する運命だと?有限
の命だと?じゃあ、永遠にずっと一緒にいようねって言って
いたのは、俺を喜ばせるための嘘だったのか?」
占い師「ショパンは今、自分が有限であることを知っているし、それを回避するには、ラフマニノフに一番大事な音楽の夢を捨てさせるしかないので、その事実を言えなかったのだと思います。またショパンが1000年生きるためにはそれなりのものを代償に差し出さなければいけません。だから、ショパンは平気なフリをしていて、実際はかなり悩んでいたと思います。1000年に1度、ショパンは消滅の危機を迎えます。それが今から1年以内に起こるというものです。ピアノの「物霊」から霊の生命「真霊」と一時的に進化させてもらうときに『神に一番大事な夢と引き換えに、1000年の真霊の命を与えてもらう』と、取引をしたのです。1000年の人間としての霊としての命を手に入れる代償がありました。ちょうど、その1000年後をまもなく迎えるので、生命の更新の時期を迎えたのです。あなた次第ですよ。ショパンがまた1000年生きられるかどうかは」
ラフマニノフ「そんなバカな。では、最初の1000年の時
は、どんなものを犠牲にしたんだ?」
占い師「音楽家としてオーケストレーションをずっと永遠に
下手くそになるというものです」
ラフマニノフ「何!! では、オーケストレーションが苦手なのは、そのせいだったのか。ショパンはそれを隠していたのか。ショパン。あいつ⋯⋯」
占い師「残酷な運命ですよね。ショパンは自ら消滅すること
を選ぶでしょう。あなたがショパンと一緒にいたいなら、必
ず阻止してください。音楽はあきらめることになりますが」
ラフマニノフ「あいつ、一人で悩んで、苦しんでいたのか……しかし、なぜ、今度、生命更新の時には俺の音楽家としての夢を差し出さないといけないんだ??」
占い師「それがショパンにとって最も大事な夢だからです。自分より大事なあなたという存在を見つけたのです。ショパンは生命更新の1年前になると、生命更新の記憶が蘇るようになっています。なので、今まで強制的に生命更新の記憶を消されてましたが、今、生命更新の1年前になったので、生命更新の事実を知った頃でしょう。ショパンはかなり今、苦悩してると思います」
ラフマニノフ「そんなバカな……酷すぎる」
ラフマニノフはショックで涙が止まらなかった。