40「夢の中で」
ラフマニノフ『じゃあな、ショパン!元気でな』
ショパン『そんな!何故行ってしまうんだ!行くな!行かな
いでくれ!頼む!』
ラフマニノフ『いつか別れは来るんだよ。お前との日々は永
遠に忘れないよ。ありがとな』
ショパン『何かの間違いだろ?冗談だって言ってくれ!』
ラフマニノフ『楽しかったな!色々あったな。今まで』
ショパン『僕とラフマと永遠のパートナーになるって約束し
たじゃんか!』
ラフマニノフ『別れがあるから、人はより有り難さが分かる
んだ。少し、ショパンから離れることにするよ。お前がいる
ことが当たり前になりすぎた。ショパンがいることは計り知
れない幸福であるのに、それすら飽きて、慣れてきてしまっ
たんだ。だから、しばし、放浪の旅に出かけたい。これは一
時的な別れかもしれないし、二度と帰ってこないかもしれな
い』
ショパン『僕はラフマだけが生きがいなんだ。せめて、ビデ
オ通話だけでもできないのか?』
ラフマニノフ『お互いに、一度離れてみて、何を得るか試し
てみよう』
ショパン『本当にそんなことのためだけに僕と離れるの?』
ラフマニノフ『俺が離れたら音楽学校はどうなるんだ?』
ショパン『戻ってくるんでしょ?』
ラフマニノフ『いや、10年は戻らない』
ショパン『絶対に!絶対に行かせない!絶対に!!!ラフマ
が僕の全てと言っても過言じゃないんだ!君がいなくなれば
音楽学校は閉校する!』
ラフマニノフ『俺の心はいつもお前のそばにいる!』
ラフマニノフは行ってしまった。
ショパンは引き止められなかった。
っていう夢をショパンは頻繁に見る。寝ているときにだ。
ショパンは夢から飛び起きて、ラフマニノフに会い、
熱く抱きしめる。
『もし、ラフマが本当に去ってしまったら?』
って考えて、今、ラフマが自分の相棒であり
いつも一緒にいれる喜びを再度、噛み締め、味わうために。
そのような見たい夢を自由に選んで見れるマシーンをショパンは密かに買ったことは、ラフマには内緒にしてある。