38「二人の出会い」
霊界の著名人限定の交流パーティーに来ていたフレデリック
ショパンは数ある有名人の中でも、別格で人気な音楽家だっ
た。
「ショパンさーん、ショパンさんですよね?? 握手してください!」
「ピアノを弾いてください。ショパンさんの生演奏をぜひ、
聞いてみたいんです」
たくさんの人から注目されて、ショパンは困り顔どころか、
自分が必要とされているという喜びから、嬉しくて仕方なく
て、そういう頼みには嫌な顔一つせずに、対応していた。
ショパンは自身のポロネーズ第6番「英雄」変イ長調を演奏
していると、横から口を出してくる人物が一人いた。
その名は、セルゲイ・ラフマニノフ。
ラフマニノフはショパンのピアノ演奏を聴きながら、様々な指摘を横からしてきた。ショパンはラフマニノフのその遠慮しない態度に激怒した。
ショパン「ちょっと!! ラフマニノフだな。君は空気というものが読めないのか?? 演奏中は指摘はやめてくれよ!聞いてくれている人が感動できなくなるだろう?」
ラフマニノフ「ショパン。お前の音色は力強さが足りない。
ピアノ演奏では私の方が上だな。英雄ポロネーズのような勇
敢な曲には、元気よくハキハキと演奏した方がいい。お前の
演奏は静かすぎる」
ショパン「では、君も私の英雄ポロネーズを弾いてみろ!ど
っちがみんなに好かれるか、対決しよう」
ラフマニノフは大柄な体で、ショパンとは全く逆の演奏をした。音が元気よくて、目立つ、ピアノで表現できる最大限の大きな音だが、繊細さも含んだ完璧なポロネーズを演奏した。
それを見ていた観客たちは、一斉に黄色い声を上げた。
「ラフマニノフさんってこんなに上手にピアノが弾けたんで
すね?? ショパンの演奏より、全然迫力があって、心が躍りました。こんなに魂が震える、魅力のある演奏は生まれて初
めてです」
「ショパンより良い!!こんなに魅力的にショパンを弾ける人は今まで会ったことがないです」
みんなショパンよりラフマニノフの方が演奏の達人だという趣旨の発言をし、ショパンは赤面して、悔しがった。
「ショパンさん。あなたはラフマニノフさんにピアノ演奏を
教えてもらったほうがいいです。ショパンに足らない全ての要素をラフマニノフさんは兼ね備えています」
ある客がいう。
ショパン「冗談じゃない。ラフマニノフより繊細な演奏が僕
の魅力なんだから!僕のオリジナリティーが失ってしまうか
もしれないじゃないか。確かにラフマの演奏は凄い上手だけど……」
ラフマニノフ「ショパン。一回、騙されたと思って、オレ
と組んでみないか?ショパンのピアノ協奏曲はオーケストレ
ーションの役割が縮小されているように思う。オーケストレ
ーションの使い方も教えてやる。もちろん、ピアノの演奏も
お前に足らない要素を見抜き、指導してやる」
ショパン「なんで、上から目線なんだよ?偉そうにするな!」
2人が言い合いになっていると、霊界のトップ「シナメ
ルド」の秘書が来て、直接、ショパンとラフマニノフに契約
書と任命状を見せた。
シナメルドの秘書「これはこれはちょうどいい。ショパン。
ラフマニノフ。あなた方2人に、霊界の最高設営責任者のシ
ナメルド様から、任命状が届いております。私はシナメルド様の秘書であるマルクと申します」
ショパン「えっ?どういうこと?シナメルド様から?どんな
内容なの?」
マルク「霊界の政治家としてシナメルド様の元で活動してほしい。力を貸してほしい」
とのことです。
ラフマニノフ「しかし、我々は音楽家だぞ?政治の素人だ
ぞ?役に立つのか?」
マルク「とにかくこの任命状を見てください」
ラフマニノフ「なるほど。音楽家として、音楽学校の設立の許可をもらいたくば、政治家になってほしいということか。確かに、ショパンとオレは自分たちの音楽学校を持ちたいと思っているからな」
ショパン「僕はピアノの演奏と作曲の専門音楽学校を作りた
いと思っているんだけど、そのためには政治家としての仕事
をしないと、許可がもらえないってことか」
ラフマニノフ「ショパン。オレと組もう!!!正式に!!!神様のいたずらか、俺たち2人が音楽家代表として霊界トップのシナメルドから選ばれたんだよ!!!俺もピアノ専門の学校が作りたかったんだ!お前とオレは同じ夢に向かって進む同志なんだよ」
ショパン「でも」
ラフマニノフ「お前がいくら嫌だって言っても、オレはお前
とバディになるからな!!!」
ショパン「バディって何?」
ラフマニノフ「相棒ってことだよ!!!」
こうして、2人は霊界で音楽の活動と、政治家としての活動
を両方やっていくことになる。