表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/86

37「ショパン出生の秘密」

 よく晴れた日、ショパンは生前、夢の中で見たある風景の場所が霊界で存在しないか調査していた。


 覚えているのは、普通の土の道路に、横に草や木が生えて、

ある場所でひとつの交差点にさしかかる。


 そこには「立ち入り禁止」の看板が立てられてて、その看板

の先にはまた同じような道路が続いている。


 そこに古民家がひとつあった。


 その看板の先に行こうとすると、地面に大きなワープホール

みたいな穴が開き、そこに吸い込まれて、夢から覚めたの

だ。


 人間は睡眠中、霊界を訪れていることがあるから、もしかしたら霊界に本当に存在するかもという期待があったが、今まで200年ほど経つが、まだ実際に本気で探し始めたことはなかった。


 今度こそと思っていた。


 ラフマニノフは不在だった。


 ラフマニノフは音楽学校の校長としての仕事をしていた。


 ショパンは霊界の「人生記録所」に来ていた。


 自身の生命コードを入力すると、自身の今までの前世や物質界での生活の様子など、自分のすべてを細かく、詳しく調べ

ることができるのだ。


 睡眠中の夢の内容まで調べることができるが、その夢の場所も調べられるかもしれないと思ったのだ。


 しかし、いつ見た夢なのかも見当つかない。いつ見た夢なのか、日時を入力しないと調べられない。片っ端から、全ての夢を調べるわけにもいかない。


「ピコーン」


 ラフマニノフから生命時計で連絡が来た。


ラフマニノフ「大丈夫か、ショパン。お前は今、人生記録所に来ているね。俺には分かる。でも、そこではお目当ての場所は探し当てられないだろう。実は、映像から場所を特定して

くれる映像による場所特定所があるらしい。今、お前が心配

で俺も何かできることがないかって、いろいろと音楽学校の

仕事の休憩中も考えていたんだ。今、場所特定所のアドレスを送るから、そこに行ってみろ!」


ショパン「なんでラフマが僕の必要なものを知ってるか分からないけれど、とにかくありがとう。君には本当に助けられているよ!必ずこの恩返しはするから」


ラフマニノフ「今日、夕飯にお前特製のショパンチャーハン

を作ってくれ。楽しみに待っているからな」


 ショパンはラフマニノフに紹介してもらった「映像による場

所特定所」という胡散臭い名前の場所に向かった。


 東京ドームの10分の1くらいの大きな丸い形の建物で、全

体が虹色に光っていた。


 ショパンは受付で、生命ポイントを10万ポイント払い、椅

子に座った。そして、大きなヘルメットみたいな装置を付け

た。


担当の者「ショパンさん。では、あなたが場所特定したい映像を可能な限り鮮明にリアルに頭の中で思い浮かべてくださいな」


ショパン「はい」


 ショパンは道路というより、あの立ち入り禁止の看板と、そ

の先の古そうな家を思い浮かべた。


 印刷機から、紙が出てきた。場所が書いてある。


ショパン「これでやっとあの不思議な夢の場所まで行ける。

本当に実際に霊界で存在していたとは。脳が作り出した無意味な幻覚かなと思ったけどな」


担当の者「もし、その場所に行きたいのなら、こちらの台に

移動してください」


ショパン「行くことができるのか。よかった」


担当の者「行ってらっしゃい。ショパンさん」


 空間を移動して、ワープしてたどり着いた場所は、あの夢で

見た場所だ。ショパンがずっと気になっていた、幻想的な感

覚にさせられる場所。


 生前から気にしていた。


 この場所を想うと、なんともいえないMagicにかかったような魔法のようなファンタジーともいうような感動があった。


 ショパンは立ち入り禁止の看板の前に立った。


ショパン「これを越えようとして、いきなり地面から時空が歪み、穴が現れて、邪魔されたんだよな。今回は大丈夫かな??」


 ショパンは立ち入り禁止の看板をどけずに、またがって、越

えた。何も起こらなかった。


 ショパンは安堵した。不思議の国にお邪魔するような迷い猫のようなワクワク感と一種の不安もあった。


 でも、内心、ウキウキが止まらなかった。こういう冒険は好きだった。


 看板の先の家の前に立った。


ショパン「誰かいませんか?こんにちは。フレデリックショ

パンといいます」


 ショパンは誰も応答しなかったので、扉を開けて、中に入っていった。


 そこにはおばあちゃんがいた。白髪頭の安心感のある感じだ。


 中には古そうな年季の入ったグランドピアノがあった。


ショパン「と、突然入ってしまってすいません。実は」


おばあちゃん「何も言わなくてもあなたがここに来ることは全てわかっていましたよ」


ショパン「えっ?どういうことですか?私はあなたを知らないのに。どこかで会いましたっけ??」


おばあちゃん「このピアノで何か弾いてください」


ショパン「おばあちゃん。その前に答えてください。なぜ、ここに僕が来ることを前もって分かっていたんです」


おばあちゃん「ここはあなたが生まれた場所だからです」


ショパン「えっ、僕が生まれた場所??」


おばあちゃん「あなたという生命そのものがこのピアノから

生まれたのです」


ショパン「このピアノから僕が生まれた?? どういうことで

す??」


おばあちゃん「あなたが何よりピアノにこだわり、ピアノを

愛しているのは、あなたがこのピアノから生まれたためです。あなたはピアノそのものだったんですよ。ピアノが意思を持ち、やがてそのピアノがただ弾くための道具として存在するだけじゃなくて、ピアノ曲を作りたいという、作曲して活躍したいという強い想いを持ち、それがあなたという存在を誕生させたのです」


ショパン「信じられません。ただの妄想ではないですか」


おばあちゃん「あなたは戻ってきたのです。このピアノにま

た再会するために。さあ、何か弾いてください。あなたの一

番大好きな曲を」


 ショパンは「相棒」というピアノ曲を弾いた。ショパンがラフマニノフに感化されて、作曲された20分程度の大曲であ

る。


おばあちゃん「今まで、どうでした?? いろいろあったかと思います。辛いことも苦しいことも。もし、あなたが自分の存在を一時的に消したいならば、このピアノに戻ることができます。意識も何も無くなるので、存在していることが苦しいと

感じることがなくなります。あなたが生前、この場所を睡眠

中の夢で訪れたのは、すごく苦しかったロシア軍によるワル

シャワ蜂起で、絶望したあなたは死にたいと強く想ったので

す。なので、このピアノに会い、存在ごとまたピアノに戻

り、意識を無くし、苦しみから逃れたいという想いがあなた

をあの時、ここに連れてきたのです。しかし、立ち入り禁止

の看板をくぐろうとして、あなたは地面に穴が開き、失敗し

た。もし、穴が開かなかったら、失敗しなかったら、あなた

は睡眠中に亡くなっていたのです。何か邪魔が入りました。

それは、私でも説明ができません。誰かによる仕業でしょ

う」


ショパン「話が難しくなってきて、混乱してます。とにか

く、私はもうピアノに戻りたくないです。今、ラフマニノフ

という相棒がいて、私がピアノに戻ったら、絶対に泣くと思

います。彼の涙を、悲しむ姿を想うと、どうしてもピアノに

は戻れない。僕はずっと存在することを、このまま生きていいきたいのです」


おばあちゃん「ラフマニノフさんですね。きっと。何か方法

を考えて、ショパンを止めたのでしょう。ラフマニノフさん

が霊界から何かしたのかもしれませんね。ラフマニノフさん

はショパンさんが気になっていたらしいですから。ずっと昔

から」


ショパン「ずっと昔から?? どういうことですか。それよりも今日、ラフマニノフにチャーハンを作ってやる約束なんです。だから、ピアノに戻ることはできません。どんなに苦しいことがあっても生きていきます」


おばあちゃん「でも、どうしても辛くなったら、またこの場

所に来なさい。いつでも無に戻れる。意識を一時、失い、存

在している苦しみを取り除くことができるという事実は、あ

なたを安心させることでしょう」


ショパン「それにしても、このピアノが僕、自身だったなんて、ピアノから僕が生まれたなんて、あまりに感慨深いです」


おばあちゃん「私はこのピアノの守り神です。この場所で待

っています。定期的に、来てください。私はあなたをずっと

見ています。私はあなたの親ですから」


ショパン「えっ??」


おばあちゃん「私はこのピアノの製造者です」


ショパン「じゃあ、あなたがいなかったら、僕はいない??」


 ショパンは本物の自分の生みの親に会うことができた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ