35「ゲンの牛乳宣伝」
ショパンとラフマニノフは温泉に来ていた。
いつも来る温泉だ。
大きなライオンの石像の口からお湯がジャバジャバ出ている温泉。床や壁や天井など全て大理石。2人のお気に入りの場所で、最近は3日に1回は来ている。
ショパン「ああ、気持ちいいね。ここは最高だね。この白い
おしぼりの匂いがまた何とも言えない。最高!!」
ラフマニノフ「温かい熱っしたタオルの肌触りや匂いは実は
俺も好きなんだよ。だから、顔にそのタオルをかけて、温泉
に浸かるんだ。タオルは必須だよな」
ショパン「あっ!ゲン!来てたのか?最近、よく会うね!」
ゲン「ショパンさんとラフマニノフさんの裸の付き合いの仲になれることを嬉しいな」
いきなり、ゲンは牛乳を取り出した。
ゲン「霊界最高の牛乳、バンバです。よく、温泉後の牛乳は
みんな飲みますが、温泉に入っている最中に牛乳飲むのはなかなかやる人いないんじゃないかな。だから、斬新なことを大切にしているお二人なら一緒に飲んでくれますよね!」
ショパン「うーん。あれ、カメラがある。なんで?」
ゲン「今日はこの温泉のCM撮影を少し手伝ってもらいたい
んです。ショパンさんとラフマニノフさんに出演してもらい
たい。僕は実はこの温泉のオーナーなんですよ。知ってまし
た?」
ラフマニノフ「そうなんだ、ショパン。ゲンはコーヒー屋の
他に、この俺たちのお気に入りの温泉も経営しているんだ!
ゲンとは友達だから、どうか手伝ってあげようと思っている
んだが、ショパンもCMに出演してくれないか?」
ショパン「ギャラは?」
ゲン「僕のコーヒーで!」
ラフマニノフ「ゲンの淹れたコーヒーを毎日、飲むことがで
きる。それだけで十分だろ?ショパン」
ショパン「まあ、ゲンとは友達だし、たまにはノーギャラで
いいよ。話を察するに、温泉中に牛乳を僕らが飲んでいると
ころを撮影し、CMで使うということかな?」
ゲン「察しがいいですね。その通りです。二人には牛乳の温
泉に入ってもらいます。牛乳の温泉に入りながら、牛乳を飲
みながら、あるセリフを発してもらいます」
「いい湯だな。僕ら、温泉の牛乳が大好き。みんなで浸かっ
てしまうほどのおいしさ!ゲンの温泉牛乳なり!」
ショパン「えっ?? 牛乳に浸かるの?てか、牛乳を宣伝するの?」
ゲン「はい。コーヒーと牛乳はとても相性がよく、切っても
切り離せない間柄。牛乳も売り出したいのです!」
こうして、CM撮影が始まった。
まず、ショパンがピアノ演奏し、ラフマニノフが指揮をし、
ピアノ協奏曲を弾いている映像が流れます。
「ショパンとラフマニノフ。2人の天才音楽家が音楽をそっ
ちのけになってでも、気になって入ってしまう温泉。ゲン温泉!」
と僕がナレーションをし、ショパンとラフマニノフは演奏を
止め、いきなり退場してしまいます。そして、温泉に到着し、温泉に浸かる映像が流れます。
そしたら、
「その温泉の牛乳は、ショパンとラフマニノフがファンにな
り、気持ち悪くて吐いてしまうほど飲んでしまうほどの味わ
い!」
と僕のナレーションがかかります。
そして、3人で一斉に
「ゲンの満腹牛乳!」
と叫び、牛乳瓶を掲げて、飲み、終わります。
ゲン「ってな感じですかね」
ショパン「それなら僕からアイデアが!」
ラフマニノフ「なんだ?? アイデアって」
ショパン「僕たちがピアノ協奏曲を演奏しているところで、
ゲンが無理やり、僕たちを引きずりながらゲン温泉まで連れ
ていく。
そして、
『無理やり、連れていきたくなる温泉』
というフレーズを使った方がいいと思うんだけど」
ラフマニノフ「そうだ。俺からも提案なんだが、CMの最後に、腰にかけていて白いタオルが取れてしまい、股間を隠
し、恥ずかしがるというものはどうだ」
ショパン「出た!ラフマって変態な気が少しあるかもね。露
出狂とかじゃないよね??」
ゲン「そうですね。2人からアイデアをもらえるなんて嬉し
いです。自分一人だけの考えでCMを作っても、嬉しくな
い。みんなで作り上げることを一番大切にしたいことですか
らね。分かりました。それも全て採用しましょう」
こうして、CM撮影はなんとか終わった。
3人はCM撮影後、温泉にまた浸かった。
ゲン「なんとかCMが出来上がりました。オンエアが楽しみです。ショパンとラフマニノフが温泉のCMに出るなんて、なんか新しいことやってるなって嬉しくなります」
ショパン「ゲン。いつも思うんだけど、ゲンも僕らの音楽学
校に入らない?エキスパートピアノに。ゲンには才能がある
かもしれない」
ゲン「いえ、私はシンガーソングライターであり、ピアノの
才能はないです。それは、以前、僕もピアノに興味を持って
練習をたくさんしましたが、先生のラフマニノフに向いてないと言われてしまったのです」
ショパン「ラフマが『向いてない』って言ったの?君に?ラフマ
らしくないなあ。才能が無い人こそ、これから努力して、練
習して、天才にしてやるって、困難なことほど燃えるタイプ
の先生なのに」
ラフマニノフ「ゲンは本当に残念だった。ゲンはピアノの音
符を覚えることができないんだ。記憶力が欠如している。だ
から、いくら教えても上達しない。英雄ポロネーズも弾けな
いんだ。でも、ゲンの作る曲は、作曲はとてもセンスがあ
る。個性的だ。ピアノは弾けないが、それをカバーする魅力
がゲンにはある」
ゲン「自分でもとてもショックでした。ピアノが上手くなり
たいのに、それが叶わないなんて。才能がなかった」
ショパン「宇宙の神、ミヤザワトモヒデに頼んで、記憶力を
変えてもらえば?? そういう方法があるらしいよ。記憶力を意図的に秒速で向上させる機械があるらしいよ」
ゲン「いえ、それでは僕が僕ではなくなります。僕はありの
ままの自分でいたい。ピアノが下手なのも、自分という人間
のカラーなんですよ。ピアノが死ぬほど上手なショパンみた
いな人もいれば、逆の僕みたいな人もいます。それでいいん
です。自然に任せたい。でも、まだあきらめてないんです。
心の底では。だから、家に帰ってピアノをいじってます。記
憶力を上げる脳トレもしてますし。その目標や目指すべきも
のを達成するまでの過程が一番幸せだし、楽しいのです。過
程をこれからも楽しんでいきたいです。全てが初めからうま
くいき、持っている人には同情します。試行錯誤して、達成
するまでの面白さを味わえないのだから」
ラフマニノフ「そうだ。その意気だ?相棒よ」
ショパン「ちょ。相棒は僕でしょ?ゲンも入れるの?三角関
係じゃん。それじゃあ」
ゲン「ショパンさんのラフマ愛はとてつもないですね」