32「ネコカフェ」
ショパンとラフマニノフはネコカフェに来ていた。
ユニークが売りのカフェらしい。
最近、音楽学校の活動で忙しくて、癒しを求めていた2人は共通でネコが好きなのだ。
「ネコカフェ ヘブンズキャット」
大きな看板ネコが店の入り口で客の呼び込みをしていた。
とはいっても座っているだけだ。
何故なら、この店は客がたくさん入るのは望んでいなくて、数名くらいの来客で構わないということらしい。
客は少なめのほうが、ネコカフェとしてお客様に癒しを提供できるのではないかという考えだった。
ショパンとラフマニノフはBMWの自動車を店のすぐ入口に
止めた。まるで、ショパンとラフマニノフの2人以外来てほし
くないというような感じに見えた。
看板ネコ「こらこら、こんなところに車を止めては、他の客の邪魔になってしまうじゃないか」
ラフマニノフ「いいじゃないか。私たちはこのネコカフェを
独占したいんだ。貸し切りにしたいくらいだ。金なら払う
ぞ?」
看板ネコ「そうか。それならば仕方あるまい」
店内の奥に入っていくと、店主もネコだった。
人間ではない。立っている。普通に人間のように歩いている。
店主ネコ「いらっしゃいませー。お二人様ですか?時間は何
分にしますか?30分、1時間、3時間、6時間とあります
けど」
ショパン「特に時間は決めたくない。フリータイムでいられ
るだけいたい」
店主ネコ「それならば3000時間なんてどうですか?」
ショパン「何の冗談だい?さすがにそんなにはいれないよ。私たちは音楽学校を経営していて、その仕事の束の間の休み時間をネコで癒されたいだけなんだから」
店主ネコ「前の客は3000時間ご利用しましたけど。で
は、いたいだけいてください」
ショパン「ここのコーヒーは200種類もあるんだ。
コーヒーに力を入れているんだね。ラフマ、よかったね。ラ
フマはコーヒー好きだからね」
ラフマニノフ「ここはセルフ式になっていて、どんなコーヒ
―も飲み放題だ。ちなみに187番のコーヒーは俺がブレン
ドの黄金比を開発した最新のものだ」
ショパン「えっ?ということはラフマはこの店に来ていたっ
てこと?この店と通じていたの?」
ラフマニノフ「自分のラフマブレンドをいつか霊界最大の人
気銘柄にしたいという野望を俺は持っている」
ショパン「壮大な野望だね」
店主ネコ「ここに注意書きがありますので、全て読んでくだ
さい。ぜひ、守ってください。それからネコは何匹くらいご
用意すればよろしいですか?」
ラフマニノフ「できれば多いほうがいいな」
店主ネコ「ただいま、準備いたします」
店主ネコは扉からたくさんのネコをいきなり出現させた。
たくさんのネコがショパンたちのいる客間に入ってくる。あ
っという間に。床がネコで見えないほどになった。
ショパン「ちょっと、店主さん。これじゃあ、多すぎだよ。
身動きとれないじゃないか」
ラフマニノフ「異様な光景だな。まあ、癒されることに変わ
りないが。ユニークが売りだから仕方ない」
ショパン「注意書きを見てみよう。どれどれ、『ネコを殺
さないでください』だって。当たり前だろ!!本当にユニークな注意書きだこと」
店主ネコ「ネコのおやつというものを買っていただくと、ネ
コにあげることができ、ネコはすごい喜びますよ〜〜」
ラフマニノフ「じゃあ、このキャットミートを20個くだ
さい」
店主ネコは空中から杖で呪文を唱え、キャットミートというネコが大好きな風味のついた肉の塊を出現させた。机にいきなりポンと魔法のように現れる様は霊界ならではだろう。
ネコは机に一斉に群がり、肉の奪い合いを始めた。その様は
まさにネコ戦争だった。
ラフマニノフはわざと大量のネコの数にしては少ない肉を用意し、ネコたちによる争奪戦交響曲を見たかったのだ。
そのネコたちが肉を求めて踊り狂っていると、一人の男が現
れた。
「カランコロン、カランコロン」
ゲン「どうも」
以前、知り合ったコーヒー屋のゲンである。
ショパン「ゲンじゃないか。久しぶりだね。君もネコに癒さ
れに来たのかい?」
ゲン「いや、ここのネコカフェのコーヒーの豆を配送してい
るんですよ。つまり、仕事です。ラフマニノフさんのラフマ
オリジナルも私が配送したんですよ」
ラフマニノフ「そうなんだ。ショパン。ゲンとコーヒーで仕
事仲間にまで発展したんだ。いい付き合いしてるんだよ」
ゲン「店主さん。豆はもう切れそうなんですよね。持ってき
ましたから、いつもの倉庫に置いておきましたから」
店主ネコ「いつもありがとう、ゲン」
ゲン「ちなみにこの店を知っているのはラフマニノフとショ
パンと私しかいません。3人だけです」
ショパン「えっ?つまり、3000時間利用した人って、ゲ
ンってこと?消去法だと」
ゲン「私とショパンとラフマニノフさん。この3人だけのネ
コカフェですよ。他の人は利用できません。そもそも、発
見できないようになっているんです。私たちしか」
ラフマニノフ「そうだ。ショパン。実はショパンに内緒にし
ていたが、ゲンとは俺がショパンとタッグを組む前からの、
昔からの知り合いでゲンとここのネコカフェでいつも一緒に
飲んでいたんだよ。時間が空いたときにな。作曲もここでし
ていることが多い。海の他にな」
ショパン「ウソ!!ゲン、ラフマは僕のものだぞ??」
ゲン「では、私たちはライバルですね。私もラフマニノフさ
んの相棒の一人ですから」
ラフマニノフ「3人、親友同士になろうぜ。私を取り合うん
じゃなくてな。モテる男も大変だな」
ゲン「本当はラフマニノフと私だけのネコカフェにしたかっ
たんですが、ショパンさんに悪いので、3人で楽しみたいと
思い、ラフマは今日、ショパンさんをこのネコカフェに連れ
てきたのです」
ショパン「ラフマ。ゲンと僕、どちらが大事なの?」
ラフマニノフ「両方大事だ!」
ショパン「どちらかだけにしてよ。ラフマは僕のものだけに
したいんだ」
ゲン「あはは。冗談ですよ」
ショパン「えっ?」
ラフマニノフ「本当にショパンは引っかかりやすいな。ゲン
とは確かに昔からの知り合いではあるが、私の相棒はたった
一人。ショパンだけだ。ゲンとここのネコカフェを昔から利
用してることは事実だが、ただの仕事仲間だよ」
ショパン「本当に?よかった!!安心したよ」
「ニャーーーー」
店主ネコ「皆さん、もっとネコの相手してあげてください」