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30「オーケストレーション上達進化コンサート」

「ショパンのオーケストレーション上達進化コンサート」が開催された。


 ショパンはオーケストレーションが苦手であるという常識をそろそろ打ち破り、みんなにオーケストレーションで認められたいという強い願望があった。


 なので、自ら企画したのだ。


 ショパンは大々的にこのコンサートの宣伝活動をしてきた。


 霊界の各地で新聞記事の広告も掲載し、テレビ局「ブラックホワイト」で放送するために局長に頼み込んだ。


 生前はそのような自身の宣伝活動をあまりしなかったショパンだが人は変化する生き物である。


記者たち「これからコンサートが始まります。みんなの期待はかなり高いと推測されます。大丈夫ですか??」


ショパン「緊張よりもワクワク感が強いです。これから僕が

より天才だということが証明されますからね。オーケストレ

ーションはとにかく苦手でありましたが、才能が無かったの

ではなく、努力をしなかっただけだったんだってね。楽しみ

にしていてください」


ラフマニノフ「自らハードルを上げるようなこと言わないほうがいいぞ?? 万が一って時にどうする??」


ショパン「オーケストレーションは極めたとまで言うつもりはないが、かなりの水準まで達した。ラフマより上手い思う」


ラフマニノフ「俺を超えたのか!!」


 ショパンのコンサートは霊界で最も権威と歴史のあるオガサイの「ミュージックドーム」で行われた。


 オーケストラの人が席に全員座り、指揮者の人も台に立ちショパンもゆっくりと歩いて登場した。


「パチパチパチパチ」


 大拍手する観客たち。歓声を上げるものもたくさんいた。


 コンサートでは以前、ショパンとラフマニノフがイチゴジャムを食べたときに使った小さな円形の机と同じものがたくさん用意された。


 そこで、ジンサ考案の食事をバイキング形式でコンサートの演奏が全て終了した後に食べるという斬新な食事会も企画されていた。


 全てショパンが考えた。


 観客の数はざっと1000人程。みんなショパンの根強いフ

ァンばかりだ。


 チケットの倍率は極めて高く、ショパンへのみんなの期待が表れているといえる。







 演奏が始まった。



 ラフマニノフは一番後ろで、優しく我が子を見るような眼差しでショパンを見守っていた。


 一番後ろにしたのはショパンがラフマニノフを意識して、緊張しないためだ。ショパンが一番後ろで見守っていてほしいと懇願したのだ。


 観客たちは静かに見守っていた。


 約1時間30分の演奏は順調に終了した。


 アンコールとしてショパンは贅沢にもラフマニノフのピアノ協奏曲3番を全楽章演奏した。


 今回演奏したのは『ピアノ協奏曲「夏」』だ。



このピアノ協奏曲「夏」は1時間30分の大作であり、ショパン史上最高に手をかけた傑作という自負があった。


 5楽章から構成されている。


1楽章「セミの鳴き声」

2楽章「夏祭り」

3楽章「ひまわり」

4楽章「海水浴」

5楽章「花火」


 ショパンはコンサート終了後にテレビ生出演するためにテレビ局「ブラックホワイト」に向かった。


 テレビで専門家たちとコンサートの感想や意見を言い

合い、討論するというものだ。これは霊界中で放送されるこ

とになっている。


 それはベートーベンとモーツァルトの2人が専門家のコメン

テーターとして呼ばれていた。


ショパン「それではよろしくお願いします。どうでした?? 今回の僕のピアノ協奏曲は。オーケストレーションは一応、全力を出したつもりですが」


モーツァルト「厳しいこと言います。全く上達していないどころかひどくなっているようだ。オーケストラと言えないレベルだ。下手なんてもんじゃない」


ベートーベン「同感だ。ショパンはやはりピアノしかうまくない。弱点克服はあきらめなさい。霊界に来て200年音楽をやってきたのに全然管楽器の使い方がなってない」


ショパン「そんなバカな。僕としてはラフマニノフよりも優れているように思えたが……」


モーツァルト「あなたの勘違いが凄すぎて爆笑ですし、誰から見てもかなり痛い人になってしまっている」


ショパン「観客のインタビューが聞きたい。どんな感想だったのか……」


記者「用意しております」


観客1「あれだけ大々的に宣伝しておいて、全くの期待外れ

でした。あれだけ期待外れにさせるのはショパンしかできな

いと思います。ある意味、本当に天才だなと」


観客2「ショパンの夏ってピアノ協奏曲はオーケストラが目

立っていなかったです。詐欺ですよ。コンサート名でオーケ

ストレーション上達進化って、恥ずかしいですね」


観客3「ピアノ曲しか上手く作曲できないのもショパンの魅力

なのかもしれませんね。本当にひどかったです。予想を遥か

に下回る出来に泣きたいです」


観客4「メロディー、旋律の美しさは申し分ない。ただ、そ

れだけだ。メロディーがいいだけだ」


ショパン「うわあああああああああ」


 ショパンは消え去り、、家に閉じこもってしまった。


 ショパンは自分にはオーケストレーションの才能がないのだと認めたくなかった。


ベートーベン「ああ、せっかくワシたちと意見交換し合ってい

るのに、、退場してしまった。どうしようもない男だな。無責任男だ!! テレビ生出演の仕事はどうでもいいみたいだな……」


モーツァルト「マイナスな批判をされただけで逃げてしまう

とは。相当、ショパンの今回のコンサートの思い入れは強か

ったみたいですね」


 ショパンは泣いていた。


「ううううううううう」




 ラフマニノフがいきなり姿を現した。


ショパン「今は一人にさせてくれないか。。こんな泣いてる姿を君に見られたくない。悔しくて残念で死にそうなんだ。絶望したよ。自分が憎い」


ラフマニノフ「コーヒーを淹れたから飲め」


ショパン「いらないよ。いつものやつだろ」


ラフマニノフ「今までにない俺オリジナルの最高のコーヒーだ」


ショパン「ん!!!うまい!!!!うますぎる!!!!!!ラフマでもこんなコーヒー作れるんだ!!!」


ラフマニノフ「お前が悔しくて泣いてしまっているときに慰

めになる癒されるコーヒーを内緒で開発していたんだよ!!!実はお前のコンサートでやった曲の楽譜を10日前に見てしまってな。これはダメだ。酷評は間違いないと分かったから、なんとかショパンが落ち込んだ時のためにと思って、この元気になるおまじないが入ったコーヒーを用意しようと必死になっていたんだ」


ショパン「君は最初からこうなることがわかっていたんだね。僕にはオーケストレーションの才能は無いから、あきらめたほうがいいのだろうか。今回の出来事は本当にショックだ」


 ショパンは顔を真っ赤にして涙を流しながらラフマに聞いた。


ラフマニノフ「でも、この元気になるコーヒーは俺のコーヒ

一屋で一番人気になったぞ!!!今までで一番美味しいって言ってくれた人が多かったんだ。そして、ダントツで売れている。霊界最大のコーヒー屋になれるかもしれないな。俺のコーヒー屋は。お前のおかげでな」


ラフマニノフ流の励まし方だった。


ショパン「それ、本当なの?? 僕がきっかけで作ったコーヒーがダントツで売れているの?? なんか元気出てきたし、励まされたよ。ありがとう。でも事実なの?? 作り話じゃなくて??」


ラフマニノフ「ショパンの作曲したピアノ協奏曲『夏』はこ

れから俺が一緒に作り直してやる。お前にオーケストラにつ

いて指導しながらな。そうすれば、この曲は俺たちの共作に

なる。力を共に合わせて作った大事な曲になる。だから、お

前の行動は無駄になってないし、逆に俺たちの絆を深めてく

れるんだよ」


ショパン「本当にありがとう」


 ラフマニノフはショパンの肩に手を乗せ、優しく支えながら励ました。


ラフマニノフ「目標ができてよかったじゃないか。もしオーケストレーションが俺よりも優れてしまったら、俺の存在価値が薄くなる。俺はお前のオーケストレーションが苦手なところを穴埋めする役目があるのかもしれないな。だから、ショパンはずっとオーケストレーションが苦手なままでいてほしいのが正直なところだよ。苦手だから俺たちうまくいくと考えてくれたらな。それに何よりオーケストレーションが苦手なショパンが好きだ。何もかも完璧な奴より欠点が何かしらあったほうが可愛く魅力的だ。人間は不完全だからこそ魅力的で愛されるんだよ」


ショパン「君は最高の相棒だ!! だけどオーケストレーションが苦手なままなのは嫌だから、、ラフマに教わりながら上達していこうと思う」


ラフマニノフ「オーケストレーション上達という目標を達成

するまでの道のりが一番面白いんだ。何もかも極めてしまっ

たら、次にあるのは退屈でつまらないという喪失感なのかも

しれないな。目標は達成するまでが面白いんだよ。明日から

このピアノ協奏曲『夏』を改訂していこう。俺たちでもっと

偉大も作品にしていこう。なんか俺が後からショパンと協力して作り直して俺達の友情の証みたいな存在になるって考えると本当に嬉しいよな。お前も喜べよ。お前のこのピアノ協奏曲は一切無駄になってない!!」


ショパン「ありがとう!!」

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