24「入学式」
音楽学校「エキスパートピアノ」で入学式が行われていた。
ショパンとラフマニノフがW校長を務め、当然ながら出席していた。
「次は校長のラフマニノフ先生よりご挨拶です」
「ワーーワーーワーー!ラフマニノフ先生!!!素
敵!!!」
「あのラフマニノフが本当に登場だぜ?信じられるか?」
「すごい!!!!」
ラフマニノフ「皆さん、この度はエキスパートピアノにご入
学おめでとうございます。私やショパンに憧れて入学してき
た人も多いのではないでしょうか。しかし、たくさんの生徒たちがいるこの会場で少々、残酷なことを申し上げますが、私とショパンが直接指導できる人数は限られています。それ相応の能力や光るものが無ければなりません。しかし、皆様には自分には才能が無いと簡単にあきらめてほしくありません。なので自分の真の最大値の能力までとことんピアノ演奏と作曲をわが校で極めてください。やりきってください。ショパンや私を超える音楽家を輩出することがわが校の目標です。ぜひ、満足のいくまで音楽を追求してください。皆さまから、私やショパンを超える大天才が現れることを楽しみにしています」
「ラフマニノフ先生、ありがとうございました。次は、シ
ョパン先生、お願いします」
「……」
ショパン「何故、私が現れるときは黄色い歓声がないのか不
思議ではありますが、ショパンです。皆さん、こんにちは。
この会場にいる生徒たちに私から言いたいことは3つ。
一つ目は私たちに憧れの感情をもないこと。私たちを超え
るくらいの強い勢い、情熱を持ってほしいです。スゴイと思
っているかぎり、超えられないかもしれません。まずは、私
たちのレベルが普通だと思って、早く到達しようと試行錯誤
して、成長していってほしいこと。
二つ目は優秀な人への嫉妬や憎しみや妬みを悔しさと負けた
くないという気持ちに変えて、自分の向上の糧とすること。
健全な嫉妬を持ってください。嫉妬も使い方によっては人を
レベルアップさせます。
三つ目は僕のラフマニノフを横取りしないこと。僕はラフマ
ニノフの正式な相棒であり、もし僕を超える人が現れても、
ラフマをそそのかさないこと。
以上です。」
ラフマニノフ「おい、ショパン。気持ち悪いぞ!なんだその
セリフは」
「ショパンとラフマニノフってそんな仲なのかよ⋯⋯」
「やけにラブラブだな〜」
「なんか恥ずかしくない?」
ショパンの最後のセリフにより、会場中が変な空気になっ
た。
「ショパン先生、ありがとうございました。それでは、ショ
パン先生とラフマニノフ先生から握手会を始めます。順番通
りに並んでください。握手は一人10秒までです」
握手会が始まった。
「こうやって握手できるのが夢のようです。」
ラフマニノフ「ぜひ、私を驚かせるような音楽家を目指して
ください!」
「ショパンよーーー。抱いてくれ!頼む!」
ショパン「握手だけだよ。抱くのはラフマだけで十分だ」
ラフマニノフ「また、ショパン。勘違いされるようなことを」
「なんかショパンってキモくない?なにあの発言。天才は変
わり者なのかしら」
ショパン「聞こえてますよ。今、僕の悪口言いましたね?」
「だって、変なこと言うから。」
ショパン「抱くのはハグって意味ですよ。ラフマとハグした
ことがあったからそういっただけです」
「そのセリフもなんか浮いてますよ?」
ショパン「君はラフマを絶対にハグできないからヤキモチ焼
いているみたいだな。ラフマは僕のものだからな。絶対に渡
さない」
ラフマニノフ「ショパン。お前、いつも変だが今日は特に変
だぞ?酒でも飲んで酔っ払ったか?」
ショパン「僕はラフマの相棒だって言ってるんだ。正々堂々
と言ってみたかったんだ。君への愛だよ」
ラフマニノフ「ショパン⋯いつもの絶妙な距離感を取
り戻したまえ」
ショパン「僕は正直に生きることにしたんだ。隠したくな
い。全てさらけ出す」
この一連のやり取りはすべて霊界の新聞やテレビで生放送さ
れ、大いに話題になったとさ。