23「演技の才能」
ショパンは音楽学校に大きな劇場を作る計画を立てていた。
ラフマニノフ「生前は役者としても結構イケてたって噂だ
が、どうなんだ?」
ショパン「今、台本を書きまくっているからそれが完成した
ら劇場で生徒たちに発表してみたい。ラフマにも出演させる
けどね」
ラフマニノフ「えっ?俺も?」
ショパン「音楽家ばかりじゃなくて、俳優の演技も極めてい
こうよ。僕、俳優の世界にものすごい興味が昔からあっ
たんだ。生前では、ピアノ音楽の作曲の道に進んだから、役
者として活躍できなかっただけで、役者として本格的に頑張
ったら、名俳優になるとまで言われていたらしい」
ラフマニノフ「お前の名演技か・・・期待はずれにならないようにな」
ショパン「期待していていいよ。自信があるからね」
ラフマニノフ「じゃあ、今、ここで何か演技してみろ」
ショパン「わかった。行くよ!」
「ああ、神様!!!なぜ?なぜ私はオーケストレーションが
こんなにも下手なんでしょうか。なぜ?ああああああ!!!
私より彼のピアノ協奏曲のほうが評価されている。こんなの
悔しくないわけないではないかーーーー!ピアノ曲だけ上手
かったと言われるのはもうこりごりなのにーー!ウウウウウ
『できれば涙を流す』。神よ、何かを得るということは何か
を失うということなのか。ピアノ曲が得意な代わりに、オー
ケストラが苦手。いやいや、待てよ」
ラフマニノフ「もういい!ショパン」
ショパン「まだ、途中だよ?ラフマ。せっかくこれからいい
セリフが出てくるのに」
ラフマニノフ「期待外れで俺を楽しませてはくれないらしい
な」
ショパン「じゃあ、ラフマはできるんだろうね。やってみせ
てよ!今のセリフをもう一度⋯⋯」
ラフマニノフ「いや、俺は俺の考えたセリフでいく!」
「怒涛なる静かな難しい和音から始まる私のピアノコンチェ
ルト。今や地上では世界で最も人気で評価されている最高峰
のコンチェルト。全て私のおかげなのだ。しかし、その曲の
アイデアは神が与えてくれたのではないかと。才能も結局は
神の気まぐれ。運なのだという輩がいる。しかし、断じてち
がーーーーう!すべて私の実力なのだ!私がこのピアノコン
チェルトを完成させるまでに払った犠牲、使用した時間、酷
使した精神力は計り知れないだろう!!!だから、神のおか
げではないーーー!」
ショパン「なっ⋯⋯⋯。ラフマ。お前!!!なんて演技力だ!圧巻だった。ラフマはオーケストレーションだけでなく、演技力でも俺の上を行くのか!!!ふざけるな!僕は認めない!認めないぞーーーー!」
ラフマニノフ「迫力がお前とは違うだろ?どうだ?参った
か?」
ショパン「いつからそんな上手くなったの?どのくらい練習したんだ?」
ラフマニノフ「まだ1年も経ってない。お前と付き合い始め
てから、いつかお前をビックリさせてやろうと披露するのを
楽しみにしていたんだよ。まさか、お前から機会をくれると
は夢にも思わなかったけどな」
ショパン「僕は長年、演技の研究をし、自分なりに才能を磨
いてきたのに。たった興味を持ち始めて1年弱のラフマにも
う抜かされてしまうとは⋯なんでーーーーーー!」
ショパンは悔しがって、這いつくばって、床を手でどんど
ん叩いて、喚いた。
ラフマニノフ「俺がこだわっているのは、いかに短時間、少
ない練習量で、少ない努力量で向上するか、才能を伸ばせる
か、上達スピードを最も気にしている。やはり、何となく工
夫もしないで考えないで練習していても全く上達は遅くなっ
てしまうだろう。ショパンより俺の方が努力の質が高かった
ということかな。ショパンには絶対に負けたくない。勝ちた
いと常に思ってきたからな。何事もお前には勝ちたいんだ
よ!お前にその気概はあるのか?自分は演技が上手い!と油
断して、満足しながら、全力じゃなく、手を少し抜いてい
た。甘い努力の仕方をしていたんじゃないのかな」
ショパン「言い返せない⋯まさかラフマが陰でそんな下
積みをしていたなんてね⋯これからは油断しないよ。
ラフマ。君は最高のライバルだ!見直したし、君は大したも
のだ!!!」
ラフマニノフ「俺が負けたくない。負けてたまるか。絶対に
勝ちたい!この強い感情が湧き上がるのはショパンくらいし
か今のところいない。うぬぼれるのはやめたほうがいいが、
お前こそ、俺にそう思わせるのは大したものだな!」
アゲハ「お互いに認め合っていて、競い合っていて、最高のダチじゃない」
ショパン「ゲッ!アゲハ。いつの間に。神出鬼没だな。毎
回」
アゲハ「私もその劇に出させてくれないかしら?ギャラはい
らないわ」
ラフマニノフ「この劇はショパンと2人で行う神聖なもの
だ。手出しはさせん」
ショパン「でも、3人の方がより面白くなるから、アゲハに
も役をあげよう。今、台本を書き直すから」
ラフマニノフ「決して、アゲハを俺ら2人が奪い合うみたい
な三角関係愛憎劇にしないでくれよ?」
ショパン「そんなのあり得ないよ。アゲハにそんな奪い合い
されるほど魅力ないし、美人でもないし」
アゲハ「あら、そんなこと言っていいの?ショパン。ラフマ
にあのことバラすわよ?」
ショパン「それだけはやめて」
ラフマニノフ「なんだ?あのことって??」
アゲハ「実は⋯」
ショパン「わかったよ。アゲハも主役にしてあげる。3人が
主役ってことでいこう」
アゲハ「はーーーーー。楽しみだわーーー!!!」