表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/46

第四十五話

「よせ!」

 ケイの言葉はラウルに届いていないようだった。


「ある日、目覚めたら世界は全く変わってしまっていた」

 ラウルはティアの方を向いた。

「レイミア。君もいない」

 ラウルは銃口をティアに向けた。


「やめろ!」

 ケイが声を上げる。

「ラウル、俺に任せてくれ。ちゃんとこの星を元通りにする」


「それで?」

「だから、こんな事はやめてくれ」


 ケイはこんな事になってもまだラウルのことは友達だと思っていた。


 ラウルはスパイドの犠牲者にすぎない。

 それにケイが友達だと思っているのはデート博士ではない。

 ラウル本人の人格だ。


「どうして?」

 ラウルはケイのことが分からないような表情で言った。


「この星が戻ったからってどうなる? 僕のいた時代には戻れないのに」

「分かってる、それでも……」


「うるさい! 手に入らないものなんか無くなればいいんだ! みんな消えてしまえばいい!」

 ラウルは叩きつけるようにエンターキーを押した。


 目に見えない(レーザー)光線がラウルを打ち抜く。


「ラウル!」

 ケイはラウルに駆け寄った。


 ラウルは事切れていた。


 ケイはラウルを部屋の隅に運んだ。

 たとえ裏切られていたのだとしても友達だったのだ。

 後で手厚く葬るつもりだ。


「何故、あいつにやらせなかったんだ……」

 ケイが呟く。


 あの男に入力させていれば死んだのはあの男だったはずだ。

 ラウルなら、ケイが嘘を教えたと気付いても良さそうなものなのに。


「どっちでもいいと思ったんじゃないかしら」

 ティアの声にケイは驚いて振り返った。


 いつの間にか意識が戻っていたらしい。

 ティアはコントロールパネルの前に立っていた。


「だって、この星を壊したら、どちらにしろ自分も死んじゃうんでしょ。だったら、あの場で撃たれて死んでも同じじゃない」

 ティアが言った。


「博士はホントはずっと死にたかったのかもしれない。でもラウル自身は死にたくなかったから今まで生きてきたのかも」

 ティアの言葉にケイはラウルの顔を見下ろした。


 そうなんだろうか……。

 そうかもしれない……。


 死にたいデート博士と、死にたくないラウル。

 その二人の意識がせめぎ合っていたのかもしれない。


 スパイドは自分の野望のために大勢の人間を傷つけた。

 和実がジムを騙したスパイドを許せないと思ったように、ケイもラウルやデート博士を利用したスパイドを許せないと思った。


 しかしスパイドは既に死んでいる。

 ケイはラウルの顔にハンカチをかけた。


「これからパスワードを入力する」

 ケイはそう言ってコントロールパネルに向かおうとした。

「待って」

 ティアの何かを決心したような声にケイは顔を上げた。


「三十年も放っておかれたもなんでしょう。正しいパスワードを入力しても誤作動であの兵器に撃たれるかもしれない」

 そう言うとティアはパネルの上に手を置いた。


「だが……」

 入力しないならここまで来た意味がない。


 ケイは訳が分からないままティアを見た。


 ティアは、


 E


 のキーを押した。


 ケイがハッとする。


 まさか……。


 A


「よせ! 本当に誤作動したらどうする!」


 R


「あなたが無事なら直せる」


 T


「やめろ!」


 ティアだけは失いたくない!


 H


 ケイが駆け出す。


 ケイがティアに飛び付くのと彼女の指先がエンターキーに触れたのは同時だった。


 その瞬間、全ての明かりが落ちた。

 室内が暗闇に包まれる。


 腕の中にティアの息づかいを感じてケイは胸を撫で下ろした。

 誤作動はしなかったのだ。


「これって、この研究所を封印するためのパスワードだったの?」

 ティアが驚いたように言った。


 違う……。


 ケイが答える前に、真っ暗な部屋の中央に青い球形の立体映像が現れた。


 青い球体は白いものをまといながらゆっくり回転していた。

 所々に緑が見える。


 あれはこの星(アウラ)


 違う。


 あれは地球。


 全ての生物と人類の母な(Mother)る星(EARTH)

 ゆっくりと惑星の映像が変化していき、やがてアウラに変わった。


 ケイとティアが映像に見とれているうちに、三十年間眠っていた装置が息を吹き返した。


 次々と装置のランプがついて部屋が明るくなっていく。

 ケイがコンソールを操作すると中央の巨大なスクリーンに星系図が映った。


「これ、なに?」

 ティアが見上げる。

「この星系だよ。四つ目の丸いのがこの星だ」

 ケイが指差す。


 更にいくつかの操作をした。

 星系のアウラの部分が拡大した。

 アウラに点の集まりが徐々に近づいてくる。


「この星に近づいてくる点は?」

「ノア・(ワン)だ」


 審判前、戦争を終わらせるために進行中だったプロジェクト・ノア。


 その一環としてアウラの植物はノア・(ワン)に、動物はノア・(ツー)に乗せられてアウラの衛星軌道上を回っていた。


 プロジェクト・ノアは戦争を終わらせるために立てられた計画だった。


 水槽に新しい魚を入れると前からいた魚と争いになる。

 それをやめさせるには、いったん水槽の水を半分にして、それまでの縄張りを壊してやる必要がある。


 プロジェクト・ノアの原理もそれと同じである。

 いったんアウラの住民を全てアウラⅡに移すことで国家という縄張りを崩し、その間に荒れたアウラの大地を復旧するはずだったのだ。


「ノアⅠ、Ⅱが下りてくればアウラに動植物は戻る。だけど今のように内陸に雨が降らないんじゃどうしようもない。かといってもう一度大地を動かしたら今度こそアウラの人間は全滅する」


「じゃあ、どうするの?」

 ティアが訊ねた。


 ケイがコンソールを操作するとアウラを取り巻くように二百以上の点がついた。

 アウラの周りを回る無数の人工衛星だ。


 気象衛星などもあるがほとんどは軍事衛星である。

 戦争の負の遺産だ。

 衛星軌道上からレーザー兵器で地上に狙いを付けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ