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Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


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第四十一話

「そっか。うーん」

 ラウルが考え込む。

「和実の記憶があるケイに分からないんじゃ、僕らにはさっぱりだよね」

 ラウルがティアに言った。


「うーん」

 ティアが考え込むような表情になる。


 すぐに同意するだろうと思っていただけに、ティアのリアクションにどう反応すればいいのか分からなかった。


 ティアは何か心当たりでもあるのだろうか。


 そういえば……。


 すっかり忘れていたがティアも〝緑の魔法使い〟なのだ。


「ティア?」

 ラウルが訊ねるように声を掛けた。

「そうね。どうすればいいのかしら」

 ティアは曖昧に答えた。


 ケイとラウルは顔を見合わせる。


「全然分からない?」

 ラウルが再度訊ねた。

「うーん」

 ティアは首を傾げるだけだった。


 はっきりしないティアにじれてきた。


「何か心当たりでもあるのか? どこへ行けばいいとか」

「そう言うのは無い」

 ティアがきっぱりと言った。


 ケイはため息をついた。


 だったら今のリアクションはいったい何だったんだ。

 しかし、いくら待ってもティアはそれ以上何も言わなかった。


「そろそろ罠を見に行ってみるか」

 ケイは話題を変えた。


 今はこれ以上話していても建設的な答えは出てきそうになかった。


 ウサギはティアとラウルの罠にかかっていた。

 ケイのは上手く逃げられてしまっていた。


「たまたまよ」

 ティアはそう言うとウサギを料理し始めようとした。

「待った」

 ケイはティアを止めた。


「念のため、火は荒野で焚こう」

 ケイはそう言ってティアを止めた。


 隣の駅に着く頃には夕方になっているだろう。

 丁度夕食の時間だ。


「分かった。ケイはあっちで枝を集めて。ティアはケイと一緒に行って。僕はそっちで拾うから」

 ラウルはそう言うと立ち上がった。

 ケイとティアは薪になりそうな枝を集め始めた。


「どれくらい拾えばいいのかしら」

「とりあえず、持てるだけ持っていこう。荒野では手に入らないからな」

 ケイは拾う手を休めずに言った。


 ティアは分かったというように頷いた。

 薪を持てるだけ持って地下鉄の入り口に集合した三人は、そのまま中へと入っていった。


 隣の駅から外の荒野へ出たときには夕日は地平線の彼方に沈もうとしていた。


 ケイが薪に火をつけている間にティアとラウルはウサギの皮を()いだ。

 ティアは上手にウサギの肉を骨から切り取り、それをラウルが串状に削った枝に刺して火にかけた。


 二羽しかいないから肉を薫製にする必要はなさそうだった。

 一羽は今夜の夕食で食べてしまうし、もう一羽は明日には食べてしまう。

 長期間保存するわけではないし、もう大分寒くなってきているからよく焼いておけば大丈夫だろう。


 夜空は東から徐々に西へと進行していき、西の空はオレンジから青紫へと色を変えていった。

 焼けた肉のうち、明日の分は地面に敷いたハンカチの上で冷ましていた。

 残りを三人で分け合う。


「肉なんて久しぶりだね」

 ラウルは嬉しそうにウサギの肉を食べていた。


 ティアは猫舌なのか少しずつかじっている。

 ケイもしばらくは食べることに専念した。


 どうせ話題は「これからどうするか」しか無く、答えもまた無い。


 緑地帯でエビルプラントを見つけてからもう大分たつ。

 もたもたしている暇はないしケイはこの問題に対処するために和実の記憶を移植されたのだ。


 なのに打つ手が見つからなかった。

 多分、ヒントは一花の映像に隠されていたのだろう。


 一花達も、まさか映像の再生中に電源が落ちるなどとは考えもしなかったから一度再生されたら消去されるようにプログラムしてしまったに違いない。

 だが一度しか再生されないのなら不慮の事故への対策がとられているはずだ。


 しかし和実の記憶にはない。

 祖父も何も言わなかった。


 そうなると、後は?


 和実ならこんなとき、どうした?


 記憶はあるのに和実と同じ考え方は出来なかった。

 多分、本来の人格と移植された記憶が衝突しないようにするための処置なのだろう。


「ねぇ、やっぱり、何かあるとしたら研究所じゃない?」

 ラウルが言った。

「そうだな」

 確かに他に思いつくところはなかった。


 また地下鉄の線路を何日も歩くのかと重うとうんざりしたが仕方がない。

 最初に行ったとき諦めるのが早すぎたのだ。


 もっとよく探してみるべきだった。

 ティアにも異論はないようだったのでクィエス研究所に戻ることにした。


 幸い地下鉄の入り口はすぐそこにある。

 三人は山菜を採れるだけ採っていくことにした。


 最初の一日だけでも非常食を食べずにすむようにとの思いからだった。

 まともな食事――山菜や野菜、果樹など――を一度食べなれてしまうと携帯食は味気なく、ぱさぱさとした口当たりなど食べるのは心理的にもつらくなってきたのだ。


 本当に研究所で何か見つけられるのか。

 ケイは山菜を探しながら、そんなことを考えていた。

 まだ全てを思い出したわけではないのではないかという気がするのだ。


 多分、全て思い出せば……。


「ケイ!」

 物思いに耽っていたケイはティアの声で我に返った。

 いつの間にか囲まれていた。


 しまった!


 ミールの一人がティアを羽交い締めにしていた。

 ラウルも銃を突きつけられて両手をあげている。


「一緒に来てもらおうか」

 ミールが言った。


「どこへ連れてくつもり?」

 ティアは男を睨み付けた。

「知ってどうなる。どうせ死ぬんだ」

 ミールが答える。


「武器や兵器を持った人や、作ってた人を殺して回って、それでどうなるの!」

 ティアが男を睨んだまま言った。

「生意気な口を利くな!」

 ミールの隊員がティアを小突く。


「みんな必死で生きてるのに、そんなことして許されると思ってるの!」

「お前に分かるか! あの地獄を知らずに産まれてきたお前らに!」

 年輩の男が激高して怒鳴りつけた。


「生物兵器の研究施設から漏れだした伝染病で次々と人が倒れていった。家族や友が苦しんで死んでいくのをただ見てるだけだったんだ」

 男の言葉をティアは黙って聞いていた。

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