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Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


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第三十六話

 しばらく河原を歩いていくと大きな岩がいくつかある場所に出た。

 これらの岩は川の上流から押し流されてきたのだろう。


 大きな岩が、それよりは小さいがある程度大きな岩の上に乗っていて、下に狭いがなんとか二人が座れる程度の空間が空いている場所があった。


 ケイはティアと共にその下に潜り込んだ。

 二人とも寒さで震えている。


 ケイは危険を覚悟で火を焚くことにした。


 濡れた毛布を取りを出し二枚重ねてティアをくるむと焚き火になりそうな枝を探して外に出た。


 凍えながらも辺りを警戒しつつ枝を拾い集める。

 岩の下に戻ると火を(おこ)した。


 火の勢いが強くなるとケイもティアと一緒に毛布にくるまった。

 二人はぴったりとくっついたが今回は色気も何もない。

 毛布の前を開けて濡れた服に火を当てる。


「ね、服脱いじゃダメ? 濡れてて冷たくて……」

「ダメだ。乾いた着替えがあるなら別だが、そうじゃないなら冷たくても着てろ。下手に脱ぐと体温を奪われて凍死する」

 ケイが言った。


「冷たい服着てても凍死しそうなんだけど」

「焚き火に当たってればそのうち乾く」


 その前にミールに見つからなければいいが……。


 夜だから煙を見つけられる心配はない。

 焚き火の明かりさえ見えなければなんとかなるはずだ。


 岩に遮られているので火の明かりはほとんど見えないと思うが、それでも火の周りに樹の枝を立てて濡れた着替えを干した。

 これでほとんど外に明かりは漏れなくなったはずだ。


 狭い空間に煙が充満して息苦しかったが暖かい空気が逃げないのは有難い。

 中は暑いくらいの気温になった。


 服の前面が乾いたので背中を火に向けた。


「ちょっと暑いね」

「寒いよりはましだろ」

「まぁね」


「服と毛布が乾いたら火は消す」

「どうして?」


「火の明かりでミールに見つかりたくない」

「そっか」


 服も毛布も速乾性の素材を使っていたのかすぐに乾いたので火を消した。

 途端に辺りが暗くなる。

 岩の下にいるから月明かりも届かない。


 ケイはまた毛布を二枚重ねるとティアと二人でくるまった。


「これなら明け方でも寒くないだろ」

「……うん」

 毛布からはみ出ないように二人は寄り添って座った。

 今度はすぐそばに感じるティアの温もりに鼓動が早くなった。


「ね、ここ、横になれると思う?」

「え?」

 ケイは一瞬、自分の心を読まれたような気がして心臓が飛び出しそうになった。


「下、岩ばっかりで横になって寝るの難しいかなって」

「……ああ、そうだな」

 二人はしばらく横になったり座ったりしていたが結局座って寝ることにした。


 ティアの言うとおり平らではないところで横になるのは結構苦しい。

 二人が寄り添っていて寝返りを打つ余地もほとんどないからなおさらだった。


 座って寝ると言っても岩は奥へ傾斜しているからもたれることが出来ない。

 二人のうち片方が倒れそうになるたびにもう片方も引っ張られて起きてしまい熟睡は出来なかった。


 翌朝、ティアは眠そうな目をしながら川に顔を洗いに行った。

 ケイも荷物をまとめてから隣で顔を洗う。


「ね、ラウルとはぐれちゃったけど、どうするの?」

「落ち合う場所は決めてある」

「そうだったの?」

 ティアが驚いたように言った。


「川沿いの緑地帯ではぐれたら河口で落ち合うことになってる」

 かなり戻ることになってしまうが仕方がない。

 うまくいけば途中で会えるかもしれない。

 二人は支度を住ませると川沿いの道を河口方面へ戻り始めた。


  * *


 周りの心配をよそに、ジムはどんどん様子がおかしくなっていった。

 研究をしているかと思えば、一人でぶつぶつとなにやら呟きながら研究所内をうろついていた。


 服も何日も着替えてないのか薄汚れていた。

 シャツはズボンからはみ出しボタンも掛け違えていた。


 皆が遠巻きに見守る中、スパイドだけが肩を組み言葉をかけていた。


 ジムが研究所内を徘徊するようになると、敷地内の病院に入院させられた。

 しかしジムはすぐに抜け出しては研究所内をさまよっていた。


 誰もジムが何をしているのか、スパイドが何を企んでいるのか、見抜けたものはいなかった。


  * *


 二人が倒木に座ってティアが見付けた山菜を食べていると茂みがざわついた。

 ケイはとっさにティアの前に出て銃を構えた。


「ケイ! 僕だよ!」

「ラウル!」

 茂みの中から出てきたのはラウルだった。


「良かった、ここで二人と会えて。河口まで戻るのかと思ったら、ちょっとうんざりしちゃって……」

「ラウルも無事で良かった」

 ティアが安心したように言った。


 三人がいるのは河口の方へ半日ほど戻ったところだった。

 浅瀬がある上流までは、ここから一日半くらいだろう。


「このまま上流へ向かうでしょ」

 ラウルが言った。

「そうだな」

 ケイは頷いた。


 結局、二日かかってようやく川を渡れるところまで辿り着き、更に二日かけてシーサイドベルトに戻ってきた。

 戻るのは下りだから行きよりは早かった。


 シーサイドベルトに出たところで備蓄庫を見つけた。


「どうする?」

 ラウルが訊ねた。


 まだ日は高い。

 休むには早いが、かといってここにあると言うことは、夕暮れ時に辿り着く辺りにはないかもしれない。


 ケイはしばらく迷った末、

「ゴムボートを探したいから今日はここで休もう」

 と言った。


 中に入るとまずゴムボートを探した。


 今でこそ、この備蓄庫は海から離れた場所にあるが、ここは審判前には海辺だったはずだ。

 探し回ってようやく隅の方で見つけた。五十センチ四方で厚さ三センチ。

 それをバックパックに入れる。

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