表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/46

第三十一話

 ラウルは偵察に出ていた。

 ティアは岩に腰をかけてケイととりとめのない話をしていた。


 丁度森と平原の境目で背後に森があった。

 ティアは森を背に座っていた。


 ケイは上の空だった。

 ティアと二人きりになって、どうすればいいのか分からないのだ。


 看病してくれたときから今までよりずっとティアが気になるようになっていた。

 不意に気配を感じてケイが身構えたとき、樹の背後から出てきた男がティアを羽交い締めにした。


「動くな」

 ティアのこめかみに拳銃を突きつけている。

 ミールだ。


 他に二人がケイの背後に回った。

 ラウルが偵察に出ているが、この三人には気付かなかったようだ。


 ラウルはすぐに戻ってきそうにはない。

 自分が殺されるのは仕方ないがティアまで巻き添えを食うのが心残りだ。


「一緒に来てもらおうか」

「え?」

 ケイは信じられない思いでミールの隊員を見つめた。


 普通ミールはその場で殺す。

 どこかへ連れて行くなんて初めてだ。


 しかし、これでチャンスが出来た。

 五人はどこかへ向かって歩き出した。


 ケイは、ティアを捕まえているミールの隊員から目を離さなかった。

 ティアに突きつけられている銃の狙いがそれたときがチャンスだ。

 

 ティアは引きずられるように歩かされていた。

 無理もない。ティアを捕まえてるのは大男で、ティアとは歩幅が全く違う。


 ティアは一度、自分を捕まえている隊員の足の甲を思い切り踏んづけた。

 しかし男はびくともしなかった。

 こういうときのためにミールで支給されるブーツは頑丈なのだ。

 少女に踏まれたくらいでは痛みすら感じない。


 森の中を歩いているとき、ティアが樹の根に(つまづ)いた。

 突きつけられている銃口が、わずかに上にずれた。


 今だ!


 ケイは地面に転がりながら銃を抜くとティアを捕まえている隊員を撃った。

 すぐに他の二人が撃ってくる。


 ケイの左腕を銃弾がかすった。傷口から血が流れ出す。


 ケイは転がりながら銃を連射した。

 一人が腕を押さえて倒れた。


 ケイのすぐそばを銃弾がかすめる。

 かまわずもう一人も撃った。


 ティアはもう馴れているのか巻き添えにならない場所に伏せていた。

 ケイは三人の生死を確かめて、生きていた隊員にとどめを刺した。


「無事か?」

「うん、平気」

 ティアはケイの手を借りて立ち上がった。


 来たのが少人数で助かった。

 おそらく大部隊だと遠くから気付かれるから少ない人数出来たのだろう。


 とはいえ、こいつらが戻らなければ、すぐに増援がやってくるだろう。

 しかしラウルが戻ってくるまでは動けない。


「ケイ、ケガしてる」

 ティアが驚いたように言った。


「かすり傷だ」

「手当てしないと」

 ティアはそう言うと、ケイの返事を待たずに荷物から薬を取り出した。


 ケイが上着を脱ぐと、ティアは傷口を水で浸した布で拭いてから傷薬をつけてくれた。それから、包帯を巻いた。


 ホントは包帯など、大袈裟だとは思ったのだが、ここで言い争っても仕方がない。


 手当が終わると、ケイとティアは樹の影に身体を寄せ合うようにして隠れた。

 ティアの身体がすぐ横にあると思うと気もそぞろで、ともすると集中力が落ちそうになる。

 鼓動が速くなって、それをティアに気付かれたらと思うと緊張した。


 ティアは自分のことが気にならないのだろうか。

 気にならないとしたら自分は男としてみられていないと言うことだろうか。


 二人は申し合わせたわけでもないのに無言で座っていた。

 永遠とも思える時間が過ぎ、ようやくラウルが戻ってきてケイはほっとした。


「二人とも、どうしたの、そんなところに隠れて」

 ラウルが驚いたように言った。


「ミールに襲われたんだ」

 ケイが答える。

「ホント!? 大丈夫だったの?」


「ああ、なんとかな」

「ごめん、気付かなくて」

 ラウルはしょげた様子で肩を落とした。


「気にするな」

「そうそう。気に病まないで」

 ティアはそう言うと励ますようにラウルの肩を叩いた。


「ケイ達を襲った奴ら以外には怪しいやつはいなかったから多分大丈夫だと思うよ」

 ラウルの言葉に、

「よし、それじゃあ、連中が戻ってくる前に行くぞ」

 ケイはそう言って歩き出した。


 ミールが戻ってくるとやっかいなので、その場から離れると備蓄庫を探した。


 幸い備蓄庫は二時間ほど探しただけで見つかった。

 今度は森の中を行くわけではないから途中で食料の調達は期待できない。

 ケイ達は備蓄庫に入ると携帯食と水を持てるだけ持った。


「その研究所って具体的にどこなの?」

 ティアが訊ねた。

「もう少し南だな」

 ケイは地図を見ながら言った。


 三人は川沿いの緑地帯にいた。


「偵察に行ってくる」

 ケイはそう言うと二人を残して偵察に向かった。


 大して広い緑地帯ではないので偵察には時間がかからなかった。

 二人がいるはずのところへ戻ってみると誰もいなかった。


 そのとき銃声がした。

 ラウルがミールか何かと戦っているのか。

 ティアも一緒だろうか。


 違うような気がした。

 何か嫌な感じがする。

 ケイは目をつぶって辺りの様子を探った。


 匂いだ。


 緑の匂いがさっきより強くなっているのだ。

 辺りを見回してみると樹の枝がいくつも折れているところがあった。


 銃声がした方向が違う。


 茂みを強引に通ったために折れたのだろう。

 枝が折れたから樹の匂いが強くなったのだ。


 ケイは茂みを抜けていった。

 樹のとぎれた川辺の茂みでティアがいた。


 ティアは地面に倒され男達に両手と口を押さえられていた。

 彼女に馬乗りになった男が上着を引き裂きズボンを脱がそうと手をかけていた。


 それを見た瞬間、ケイは頭に血が上って何も考えられなくなった。

 銃をとると男達を撃ち殺した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ