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Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


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第二十七話

 近くの備蓄庫に入るとティアが傷の手当てをしてくれた。


「ごめんなさい。私のせいで」

 ティアが涙を拭いながら言った。


「ティアのせいじゃない。あれはどう考えても逆恨みだろ」

「でも……」

 ティアは自分を責めているようだった。


「大したケガはしなかったんだ。もう気にするな」

 ケイはそう言ったがティアは納得出来ない様子だった。


「これがボディガードの仕事だ」

「そうだよ、ティア。これからもこういうことはあるかもしれないけど、僕らが進んで引き受けた仕事なんだから気にしないで」

 ケイとラウルが言葉を()いだ。


「ありがと。ケイ、ラウル」

 ティアはしばらく考えてから、

「あの母娘、あそこにおいてきちゃって大丈夫だったかしら? 私が連れてきたからって言う理由で嫌がらせされたりしたら……」

 と心配そうに言った。


「村長がなんとかするだろ。ティアにまた来て欲しいなら大事に扱うはずだ」

 ケイはそう答えた。


 殴られた時の打ち身が思ったより酷かったので大事をとって備蓄庫で二日ほど休んだあと、ケイ達はまた南に向かって旅立った。


 途中、果樹の森で再び樹になっている実をもてるだけ採った。

 盗賊にあった場所に戻ってみると、やはり父親の遺体は野犬に食い荒らされていた。

 ケイ達は浅瀬を探して上流へと(さかのぼ)っていった。


 三人はかなり上流まで行ってようやく渡れる浅瀬を見つけた。


 ここまで来るのに緑地帯に入ってから三日もかかってしまった。

 シーサイドベルトに戻るのにも三日かかる。


 その間ミールの連中と鉢合わせしなければいいが……。


 この前襲われたことを考えると、ミールの本体が近くにいる可能性が高い。

 ケイは前によった備蓄庫で、ゴムボートを持ってこなかったことを悔やんだ。


 ゴムボートさえあれば……。


 こんなに川を遡る前に渡っていればもっと早く南に向かえたはずだ。


  * *


 ジムは研究の合間にぼんやりとコンピュータを眺めていることが多くなった。

 眺めていれば家族の連絡が入るのではないかというように。


 研究に没頭しているかと思うとモニターの画面を見詰めている。

 そんな日々が続いていた。


 和実としても隣に座り、同じプロジェクトに関わってるよしみでなんとかしてやりたいとは思ったが、出来ることはなかった。

 コンピュータで死者や行方不明者を調べたくても政府が死者行方不明者リストをネット上で公開していないのではどうしようもない。


  * *


 ケイ達はようやくシーサイドベルトへ戻ってきた。

 ここからまた南へ向かうことになる。

 秋は着実に深まっていた。


 夕暮れ時、ケイ達は必死で備蓄庫を捜していた。

 今日は特に寒くて野宿するのはつらいから出来れば建物の中で眠りたかったのだ。

 そんなとき、遠くに村の明かりが見えた。


「あそこに一晩泊めてもらえないかな」

 ラウルが言った。

「ダメでもともとだもの。聞いてみましょう。この暗さで備蓄庫を捜すのはもう無理よ」


 確かにもう草に埋もれた小さな標識を探すのは無理だろう。

 この辺にあるのかどうかさえ分からないのだ。

 ケイ達は村へと向かった。


 三人は村に着くまで、どうやってお礼をするかで頭を悩ませていた。


 とっくに農繁期は過ぎてるから労働力が必要かどうか……。


 リンゴはとっくに食べてしまっていた。

 果物は貴重だから、あれば泊めてもらうお礼として差し出せたのだが生物(なまもの)だからいつまでも取っておくことは出来ない。

 せめて種だけでも取っておけば良かったのだが。


 村についてみると先客がいたが村長は嫌がりもせずにケイ達も向かえてくれた。


「あの、泊めてもらうお礼に何か出来ることありますか?」

 ティアが訊ねた。


「さぁて。考えておくよ」

 村長はそう言うとケイ達を部屋へ案内してくれた。


「荷物を下ろしたら外に来なさい。面白いものが見られるよ」

 ケイは荷物を下ろすと腰に拳銃をさしてラウルと共に外へ出た。

 ティアはもう来ていてケイ達に手を振った。


 村人達の大半が村の広場に集まっていた。

 みんな一方を向いて座っている。

 ケイとラウルはティアの横にスペースを空けてもらって座った。


「何が始まるんだ?」

 ケイの問いは歓声で消された。


 ケイ達の先客が広場に出てきたのだ。

 先客はクラウンの化粧をしていた。

 一礼すると赤いスカーフを空中から取り出す。


 クラウンはそのスカーフの中からステッキを出した。

 ステッキが花束に変わる。


 ケイは幼い頃に戻っていた。

 まるで祖父が生き返ったみたいだった。――祖父はクラウンの化粧はしてなかったが。


 スカーフの色が変わり、スカーフの中からスカーフが何枚も出てくる。


 クラウンはスカーフの中から鳩を取りだした。

 ケイはハッとした。


 そうだ、あのとき祖父がスカーフから取りだしたのはデータディスクだ。

 もし緑の魔法使いに会えなかったらこれを見ろと言ったのだ。


 あのディスクはどこへやった?


 ケイは拍手の音で我に返った。

 手品は終わっていた。


「面白かったわね!」

 ティアは頬を上気させている。

「そうだね。僕、この前ケイにみせてもらうまで見たことなかったんだ」

 ラウルも嬉しそうだった。


「私は何度かある。ケイはしょっちゅう見てたのよね」

「そういえば、おじいさんが手品師だっていってたね」

 ティアとラウルは興奮気味に話している。


「ああ」

 ケイは上の空で答えた。


 あのディスクがあれば緑の魔法使いの居場所が分かる。

 少なくとも手がかりは見つかるはずだ。


「ケイ?」

 ティアがケイの顔をのぞき込んだ。

「すまん、先に寝る」

 ケイはそう言うと部屋へ戻った。

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