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Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


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第二十一話

 まだしてないのは単にタイミングの問題だった。


 そう、タイミング。

 結婚は問題ない。

 一花が承諾してくれるかは別として。


 結婚というのは形式にしかすぎないし、実際和実の両親も一緒に暮らしてはいても結婚はしていないが、それでも三十年近く連れ添っている。


 ただ子供となると話は別だ。

 和実も一花と子供を作りたいと思っている。


 でも、今は……。


 メディウスは中立とは言っても、いつまで戦火から逃れていられるか分からない。戦場は日々拡大している。

 いつメディウスが巻き込まれる日が来てもおかしくない。


 子供を戦火の中で育てたくはなかった。

 自分の子供には戦争などと言うものは知らないまま育って欲しい。


 和実がそう答えると一花はそれ以上何も言わなかった。

 とはいえ戦争が終わる日がいつ来るかも分からない状況では一花がすぐにでも欲しいというのも分からないではなかった。


 なんだかプロポーズを切り出しにくい雰囲気になったな。


 またお預けか……。


 勇んで指輪を買いに行った時の、弾んだような、くすぐったいような気持ちを考えると落ち込んだ。


 子供をすぐに作ることにして、結婚して子供を産もう、と言うのもなんだか子供を盾にしているようで心情的に切り出しづらかった。

 何より、やはり今産むことには反対だった。


  * *


 ミールは徹底的に村を破壊していた。

 ケイとラウルは辺りを綿密に捜索して、ミールが残ってないことを確認してから村――と言うか、かつて村だったところに足を踏み入れた。


 そこら中に黒こげの死体が転がっていた。異臭が鼻につく。

 数日たっているとあって遺体にはウジがわいていた。


 大人だけでなく幼い子供まで殺されていた。

 赤ん坊を抱いた女性が背中に銃弾を受けて倒れていた。

 女性を貫通した銃弾を被弾して赤ん坊も息絶えていた。


「ひどい」

 ティアが顔を背けた。目に涙が浮かんでいる。


 ケイとラウルは手分けして村の残骸を捜索した。

 ティアは何を探したらいいのか分からないらしく、ケイの後をついて歩いていた。


「ケイ、ティア、見つけたよ」

 ラウルが声をかけてきた。

 ある家の残骸の前で手を振っている。


 ラウルの前には、上にあった家が焼け落ち、むき出しになった地下室があった。結構広い。


 階段は残っていたので三人は下に下りた。

 ラウルが球形のものを指さした。

 ケイはその前にしゃがみ込んだ。


「これか。連中、回収するとき見落としたな」

「これがなんなの?」

 ティアが手を伸ばした。


「触るな」

「なんなのよ」

 ティアがむっとしたようにケイを睨んだが手は出さなかった。


「武器だよ」

 ラウルが答えた。

「武器? このボールみたいなのが?」


 銃をはじめとする火器や兵器はミールが独占してるから普通の人間にとっては武器と言えば刃物か弓くらいだ。


「手榴弾って言う爆弾だよ」

 ティアは爆弾というものを知ってるのか、それが何かは聞かなかった。

「ここにある物には一切触るな」

 ケイにそう言われてティアはつまらなさそうに階段のところにいくと座り込んだ。


「ケイ、もう少し言葉を選んで」

 ラウルは穏やかにたしなめた。

 ケイは肩をすくめる。


「大体のところは分かった。ミールが戻ってくるかもしれない。早いとこ、ここを離れよう」

 ケイはそう言うと先に立って歩き出した。


「ねぇ、このお鍋、持っていってもいいと思う?」

 ティアは焼け落ちた家の跡に残っていた鍋を指して言った。


「別に構わないだろ。ミールも鍋の数なんかいちいち数えないしな」

 ケイの言葉にティアは鍋と釜、フライパンを一つずつ取り上げた。


「そんなもんどうすんだ?」

「お料理に使うのよ」

 ティアが当然という口調で言った。


 材料は、と言いかけて滞在していた村を出るとき野菜を貰ったことを思い出した。

 野菜の中には生では食べづらいものもある。

 それにティアなら森の中で山菜などを調達が可能だ。


 ケイとラウルは辺りを警戒しながら村を離れた。


 三人は村から十分離れたところに野宿することになった。


 ティアが早速料理を作る。

 取れたての野菜に加えて今度は調味料まであるからかなり美味しかった。

 ティアは料理も上手いようだ。


「で?」

 食後、ティアが後かたづけをしながら言った。


「なにが?」

 ケイが聞き返す。


「どうしてあの村が襲われたの?」

「兵器を作ってたからだ」

 ケイが答えた。


「でも、あれは盗賊対策用でしょ」

「ミールも火炎瓶くらいなら目をつぶってくれたんだろうけどな」

 ケイが言った。


 もっとも、工場のない今、ガラス瓶は貴重品の部類に入るから、そう簡単には作れないのだが。

 だからこそ手榴弾を作っていたのだろう。


「前から聞きたかったんだけど、そのミールって何?」

 ティアが訊ねた。


「過激な平和主義者の組織だ」

 ケイが答える。

「なんで平和主義者が人を殺すの?」

 ティアが理解できないという顔で疑問を口にする。


「〝過激な〟って言っただろ」


『最後の審判』は戦争によって引き起こされたとされている。


 二度と戦争が起きないようにするためには審判前に使われていた武器や兵器を全て無くさなければならない、と言う信念の元にミールは作られた。


 だからミールの目的は『最後の審判』前に使われた兵器や武器の廃棄と、その製造方法と使い方を知っている人間、及び知識の抹殺である。


 ミールの隊員も『最後の審判』前の武器を使っているから役目が終わった後は全員自害することになっている。

 銃を使っているケイとラウルがいる限りミールの役割は終わらないから連中が死ぬこともないが。

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