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Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


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第十三話

「おい、ボブ! ボブが倒れた!」

 突然、村の青年が声が聞こえてきた。


 その声に農作業をしていたもの達が集まってきた。

 ボブというのは二十歳を少しすぎたくらいの青年だった。

 真っ赤な顔をして倒れている。


「熱中症だな」

「急いで涼しいところに運べ」

 近くにいた人達が言った。


 ケイと村の青年がボブを日陰で風の通る場所へと運んだ。

 村の女性がバケツに入れた水を運んでくる。


 ボブの上着を脱がせ、水を吸わせて絞った布を額と首と脇の下に当てた。

 それから水を飲ませる。


「すまない、こいつも頼む」

 そう言って別の若者が運ばれてきた。

 照りつける日差しがきつく、熱中症で倒れるものが次々と出た。


「熱いわね。夏だから仕方ないんだけど」

 午前の仕事が終わり、昼食を食べた後、水を飲みながらティアが言った。


「雨が降れば少しは涼しくなるんですが」

 ケイ達に食事を出してくれた年配の女性は、そう言うと台所に戻っていった。


「どうして雨が降ると涼しくなるんだ?」

 村の若者の一人が不思議そうに言った。


「水が蒸発するとき地面の熱を奪っていくから気温が下がるんだ」

 ケイが説明した。


「それなら打ち水でも同じじゃないのか」

 若者が言う。


「雨なら広範囲に水が()かれるから、より涼しいって事じゃないのか。それに雨なら空気中の熱も奪うだろうし」


 打ち水は水を汲んでこなければならない関係で人が運べる範囲にしか()けない。

 しかし雨なら辺り一帯が濡れるし量も遙かに多い。

 その分、打ち水より効果があるのだろう。


「そんなもんかね」

 若者はそう言うと行ってしまった。


 一番暑い時間帯は熱中症をさけるためにも休みになる。

 木陰で涼みながら昼寝をするものもいた。


 ケイ達は大抵涼しい場所でおしゃべりをしていた。


 作物の生育は順調だった。


「こんなに実がなっているのは前回ティア様がいらしたとき以来だ」

 村人は口々にそう言ってティアを有難がる。

 この調子なら、よほどのことがない限り豊作は間違いない。


「すごいね、魔法みたいだ」

 ラウルが感心して言った。


 昼食をとった後、三人で固まって座りながらお茶を飲んでいた。

 食後に三人で固まるのが習慣になっていた。

 村にもケイ達に年が近い人間はいたがやはり三人はよそ者だ。


 ティアはこれだけの美少女なのだから、もっとモテても良さそうなものだが賓客(ひんきゃく)ということで近付きがたいのだろう。


 ティアのアドバイスの成果を見ていれば大事に扱って正解だったのがよく分かる。

 だから敬意は払っているが友達になろうとはしなかった。


 ティアは最初のうち、村人、特に同世代の人間と親しくなろうと心を砕いていたようだったが結局諦めた。

 声をかけられれば返事はするが会話まで発展しないのだ。


 ティアに声をかけられると嬉しそうにする青年達も、大人達に睨まれてすぐに離れていってしまった。


 最初から心を開いていたのは幼い子供達で、ティアは暇があると子供達と遊んでいた。

 それを見るとラウルは樹の枝を取ってきて削り始めた。


「何してるんだ?」

 ケイが訊ねた。

「あの子達におもちゃでも作ってやろうと思って。動物なら多少()れるんだ」

 ラウルが木彫りの人形をあげると子供達は喜んで遊び始めた。


 ティアやラウルが子供達と遊んでいるところを眺めているとティアがやってきた。


「ケイは子供、嫌い?」

「別に嫌いってわけじゃない」

「じゃあ、一緒に遊ばない?」

 ケイは返答に詰まった。

 子供が嫌いなわけではないが、どう接すればいいのか分からない。


 ティアやラウルのように自然に子供達の中に入っていくのはケイにとっては難しかった。


「ケイのおじいさん、手品が出来るって言ってたわよね。ケイはそれ教わってないの?」

 ティアが訊ねた。

「多少なら……」

「なら、それを見せてあげれば?」

 ティアはそう言うとケイを子供達の前に強引に引っ張っていった。


 失敗しないように祈りながら久しぶりの手品を始めた。


 空中からコインを取り出して見せ、それを握って手のひらを開いたときには消してみせる。

 そしてまたコインを出すと今度は二つ、三つと増やす。


 一動作ごとに子供達が歓声を上げた。

 多少失敗してしまったが、それさえもウケたようだった。


 終わると子供達は教えてくれとせがんだ。

 ケイは簡単なものを教え始めた。


 ティアやラウルも子供達と一緒になって真剣にケイの説明を聞いていた。

 簡単な手品が村の子供達の間でちょっとした流行になった。


 ある日、指導へ行った村からの帰り道、ティアが珍しく寄り道したいと言った。


「いいけど、どこへ行くの?」

「あの森によりたいの」

 ティアが少し離れたところにある森を指した。


 ラウルがケイを見る。

 ケイは肩をすくめた。


 どうせ自分達は護衛だ。ティアの行きたいところについていけばいい。


 ティアは森に入ると樹の枝がとぎれて日差しが差し込んでいるところを目指した。

 そこでしばらく草をかき分けて何かを探していた。


「何を探してるの?」

「えっとね……あ。あった!」

 ティアは花の咲いている草を指した。


「これ、葉っぱが甘いの」

 ティアはそう言うと葉っぱをちぎってケイとラウルに手渡した。

 噛んでみると確かに甘い。


「葉っぱだけだと探しづらいから花が咲く季節を待ってたの」

 ティアはその草を根本から掘り返した。

 同じ草をいくつか掘り返すと大事そうに抱える。

「あの子達へのおみやげよ」

 ティアはそう言った。

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