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Starlit 1996 - 生命の降る惑星 -  作者: 月夜野 すみれ


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第十一話

 和実(かずみ)が大学を出た頃には戦争は始まっていた。

 原因は人口問題ではない。

 すぐ隣の惑星はまだ無人で、今、人が住めるように改造中だったのだから。


 ノトスとアクィロの戦争は、あっという間に戦火を広げていった。


 和実の住んでいたラクリマが中立を唱えていたのはほんのわずかな間――和実が大学へ行っていたくらいの期間ですぐにノトス陣営についてしまった。


 和実は大学を出るとすぐに永世中立国メディウスにあるクィエス研究所に入り、土壌改良の研究とコンピュータのプログラム関連の研究に携わるようになった。


 大学院でとった博士号は他にもあったのだが特にこの二つに興味があったのと、そういくつも手を出せないので他は諦めた。

 一花(いちか)の祖国ロングスも、アクィロ陣営について戦争を始めてしまった。


 クィエス研究所は永世中立国にある総合研究機関で、ここで研究されていないものはないと言うほど大規模なところだった。

 所在地はメディウスだが運営しているのは国際連盟である。

 だからメディウスといえどクィエス研究所の研究には口を出せない。


 クィエス研究所のあるメディウスは戦争に巻き込まれるとしたら最後だろうと言われていたが研究員の祖国のほとんどはどちらかの陣営に属して戦争をしていた。


 まだ中立を保っている国もいつ戦渦(せんか)に巻き込まれるか分からない。

 研究員達は祖国の家族を思って戦々恐々としていた。

 当然、休み時間の話題は戦争のことばかりだった。


 とはいえ中立国のメディウスにいると戦争は遠くの出来事のように感じる。

 実際、今のところは対岸の火事なのだが。

 そのため、アクィロとノトス、どちらに非があるかという議論が起きても深刻な対立にはならなかった。


 そんな時、ラクリマのライスにある化学兵器工場で事故が起きて有毒化学物質が流れ出した。

 ライスはゼピュイルとの国境の近くだった。


「ラクリマはゼピュイルに攻め込む気だったのか!」

 ジムはたまたま隣にいた和実に食ってかかった。


「まさか。ゼピュイルは中立国だろ」

 とは答えたものの、言っている自分でも空々(そらぞら)しく聞こえた。


 今時『中立』なんて、まだ戦争を始めていない、と言う程度の意味でしかない。


「ならなんで、ゼピュイルとの国境付近に化学兵器工場なんて作ったんだ?」

 ジムの問いに和実は答えられなかった。


  * *


 ティアがいると知ると、近隣の村からも来て欲しいという要請があった。

 そのためティアは近隣の村にも度々出かけていた。


 ケイとラウルはその都度ついていった。

 影でどう思われてるか分からないが、自分達が目を離した隙にティアが襲われでもしたらボディガード失格である。


 一緒にいるうちに三人は更に親しくなっていった。


「あの備蓄庫ってなんのためにあるの? まさかケイに作られたってわけじゃないんでしょ」

 三人で昼食後のお茶を飲んでいるときにティアが言った。


「俺の祖父も入れたから、俺だけのためじゃないのは確かだな」

 ケイが答える。

「なんで誰でも利用できるようになってないのかしら」

 ティアが首をかしげる。


「置いてあるものから見て軍の備蓄庫だったからだろ」

「『ぐん』って何?」

 ティアが訊ねた。


「軍隊って言うのは戦争をするための組織だ」

 ケイが答える。

「戦争って?」

「国同士の争いだよ」

 ラウルが言った。


「国って言うのは?」

 ティアに聞かれてケイは言葉に詰まった。


 ケイ達が産まれたときには既に国家というものは存在しなくなっており、戦争というものもなかった。


 村同士の戦いが起きることは稀にあるが……それも戦争というのだろうか?


 それくらい集団戦がほぼないから当然軍隊もない。

 しいて言うならミールが一番軍隊という組織に近い。


 昔、戦争が存在していた頃、平和を願った人達は今の状態を想像しただろうか。


 文明が崩壊し、国家すら存在しなくなった原始的な世界、それが今のアウラだ。

 国も軍隊も戦争も、ケイ達が産まれたときには既に存在しなかったのだからティアが知ってるわけがない。


 ケイはなんで自分が知っているのか、よく分からなかった。

 多分、祖父が教えてくれたのだろう。

 祖父は物知りで色んな話をしてくれた――特に審判前の話が多かった。

 ケイが国の説明に苦労しているのを見てラウルが話題を変えてくれた。


「ケイのおじいさんってどんな人だったの?」

 ラウルの問いに、

「ケイにおじいさんがいたって話は聞いたことあるけど、ご両親の話をしたことはないわね。どうして?」

 ティアが訊ねた。


「物心ついたときには祖父しかいなかった」

 ケイが答える。

「おじいさんってどんな人だったの?」

「祖父は物知りで……手品が得意だった」


 子供の頃は魔法使いだと思ってたというのは気恥ずかしくて口に出来なかった。

 三人の年が近い上に、もう長く一緒にいたせいもあって一度話し出せば会話は弾んだ。


 とはいえケイは相変わらず自分の生い立ちなどはほとんど話していないが、それを言うならケイもラウルの経歴などは知らない。


 自分も話す気がないから無理に聞くことはできない。

 と言っても気にならないわけではないのだが。


 ラウルとは、たまたまミールの連中に囲まれたところを助けてくれたのが縁で一緒に旅をするようになった。

 別にピンチだったわけではないが助けてくれたことには代わりはない。


 生い立ちどころかラウルがミールに狙われてるのかどうかさえ知らなかった。

 もっとも銃を使っていると言うだけでミールにとってはラウルを殺す動機になるのだが。


 それを言うなら今ではティアやこの村の人間も同様である。

 だから本来ならケイはあまり他人と関わってはいけないのだ。

 ケイと関わっただけでミールの攻撃対象になる。


 だからなるべく人と関わらないようにしてきたつもりだった。

 それでも関わらずにはいられなかった。

 結局、人間というのは一人では生きられないのだろう。

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