第六話 この国を支えた人
最初の一歩を踏み出せた、そのレベルの事だけど私は嬉しい!
何年も冷遇され続けたことに対して、確かに怒りはある。私は女神様じゃないから。
だけど、新しい価値観というのは受け入れるのに大きな覚悟と受け止めようとする意思が必要だと思う。もちろん、そしてそれを拒むのが一番楽な選択肢であると私は知っている。
前世の話で例えてみれば、いわばここは田舎のおじいちゃんやおばあちゃんが多い場所だ。
昔からの伝統を重んじて、新しい革新的な物を遠ざけてきた場所。そんな場所に革新的な考えの人物…イレギュラーが混ざればどうなるか。上手く受け止めて貰えれば転びながらも前に進むし、受け止めて貰えなければ排除という形の答えを得る。
まあ要するに、村八分のような状況なんだろう。もちろん、聖女という女神様の威光があるからこそ贅沢は許しませーん!みたいなだいぶ優しい嫌がらせだった訳だけれども…。
「聖女様、良いですか!その服は女神ローゼフィール様の御力があるからこそあなたが身に付けることを許されているのです!本来ならば清らかな信徒達の生まれでもないあなたがその貴色を身に纏うことなど本来はありえないことなのですよ!」
(アッハイ…、これ平安の頃にあった紫が一番偉い色なんだぞ!お前なんでちっちゃい頃から王族でもないのに段階飛ばしまくってその色着てるんだー!みたいなイチャモンでしょうか。)
「聖女様!なぜそう価値のない民にまで癒しの力を与えるのです?!なぜあなたは女神ローゼフィール様の力を神聖視しない?!…なぜ、なぜ!!そんなあなたが聖女なのです!!」
(ローゼフィール様自身は飽くまで困っているから貸している、みたいな印象でしたしお会いしていないから当たり前なのでしょうがだいぶ実物と齟齬がありますねぇ…。
ローゼフィール様は慈悲深く素晴らしい女神であることは間違いないですが、この国に向ける感情は親愛というよりも心配や哀れみに感じたんですよね…。それをここで告げたとしても嘘だ!!!!!みたいな反応されそうですし、受け止められないでしょうね…。)
「……どうしてなのですか、聖女よ。なぜ、そのように偉大な女神ローゼフィール様の青薔薇をそのように酷使するのです。…あなたは本当に聖女なのですか…?」
(癒しの力を使うなと言われてだいぶ経ちましたからねぇ…、そりゃあこの国全域に薄く癒しの力を行使する時間を増やしていれば奇跡の名を冠する青薔薇とて萎れるでしょうに。そもそも私としては新しい内蔵が増えましたね!みたいな認識でしたが、やはりここでは青薔薇というものはそれだけでローゼフィール様の奇跡と捉えて信仰している。
…力を使うのをやめれば萎れていない青薔薇にすぐ戻るのでしょうが、現状維持をしなければ後々に手遅れになる状況…。教皇様の言う事を優先することは、出来ない。)
「フッ、ハハハハッ!!お前など、お前など聖女などではない!!聖女様の皮を被った偽物め!!!そのようなお前に女神様のブローチが相応しいものか!!!」
(これは…長くは持ちませんね。何らかのチャンスを伺って待つことが出来たけれどここからは私の命を賭けたチキンレース開幕ですね。
…ここまで、始めの一歩を踏み出すのが大変だと…時間が掛かるとは思っていませんでした。教皇様が乱心するのは無理はない、ここで私が死んだとしても自己責任だ。もちろんそれは女神様にも伝えるけれど、悲しい顔をさせてしまう事になるだろうしそれに…それに!
私はまだこの国を支える事を成していない…!
こんなところで終われない、終われるものか!この命が尽きても、この国の輝きを絶やさない…その為に今はその時が来るのを待つ!!)
教皇様に散々迷惑と心労をかけてしまったなぁ、そう思いつつほんの少しだけ嬉しかったりもする。
教皇様は心の底からローゼフィール様を敬愛しているのだろう、その結果の憎悪だとしたなら私はそれを甘んじて受け入れるべきだ。彼からすれば意味のわからない無駄なことをし続けているのだから。
あ、いやもちろんもう過労死チキンレースは勘弁願いたいですけども!!!
ええ、普通に死にたくないですし!!今からシアローゼ王国で生まれる発明品見るんじゃいって目標も生まれてますし!!
「…ふ、ふふふ!もうすぐですよ、きっともうすぐ真実もこの世界の美しさも改めて教会の皆さんに見せられる日が来ます。」
その為のチキンレース、賭けに勝って得たチャンスを逃す訳にはいかない!
ローゼフィール様に安心してこの国を見守っていただく為に。教皇様達に女神様の意思を伝える為にも。…私の新しく出来た目標の為にも!
さあ、シアローゼ王国を支えてきたあなたに私が見てきた素晴らしい世界を…その可能性を伝えさせてください!国王陛下!!
◇◇◇
「よくぞ我が城に参った、聖女マリアローゼよ。して、息子たちから聞いたわしに聞かせたい話とは何かのう。」
荘厳な雰囲気の玉座に座るその人から発せられる緊張感…!そして何事も起きていないように我関せずといった表情でこの場を見守っている宰相と直属の護衛達…!!
今まで見てきた人間の中で一番強く、いくら前世というアドバンテージがあっても埋まらない経験の差…!
きっと普段の国王陛下とは雰囲気からして違うのだろう、後ろでアルベルト様とレガルド王太子殿下が戸惑っているのを感じる。
これが、シアローゼ王国を守り続けてきた…人間の完成系とも言えるべき晩年の王…!
「このようなお見苦しい姿で国王陛下に相見えることをお許しください。…若輩者であり、教会の方々からも未熟とされた私の価値を…陛下に見定めて欲しいのです。」
緊張なんてしてる場合じゃない!
私はこの人に、この国の夢を見せなければいけない。
それが今何も出来ないちっぽけな存在である私のできる精一杯の行動で、もう時期現役を退くであろう彼等への餞!
気合いを入れろ、マリアローゼ!
胸を張れ、マリアローゼ!
私はこの国の全ての人間に夢を見せる女!
スゥ、と深呼吸をすると丁寧に言葉を連ねる為に真剣な眼差しで国王陛下を見つめる。
「…私はいずれ何の神秘がなくなろうと、何が起ころうと倒れず皆が笑う国を見たくここまで行動を起こして参りました。
今の私では、たった一人の聖女ではこの国全てを救うなど不可能…!ですが!この国を長く支え特別視扱いされていなかった影の存在であった存在を強く国民にアピールし、市井の民であれ貴族であれ身分関係なく安心して眠れる日々を実現したく思い行動を…」
「その影の存在というのは医者の存在のことか?それならわしとて憂いておる。もちろん聖女であるおぬしが鼓舞し必要な存在であると伝えるのが一番だろうが、国王のわしが言ってもある程度の効果は期待できる。
……ふむ、困ったの。この程度では合格点など与えられぬが。」
知っていたんだ、医者の存在…!
そして彼らの疲弊と彼らを鼓舞する必要性!
それに気がついていた王に対し、王子達に言ったようなある意味浪漫じみた発明品の話などでは通用しないとはっきり分かった。
それが本当に実現できるのか、どのようにして作るのか…それを問い詰められてしまえば私もアルベルト様とて答えにつまる。
そういった物があったことは分かっていても、ある程度の簡単な原理はわかっていても専門職ではない以上この場で実現可能だと思ってもらえるほどの設計図も詳しい説明も出来ない。
仮に一つ何かを作成可能だったとしてそれを伝えても、それで認められたら国王陛下から求められる役割は発明家になってしまう。それじゃだめだ!だって、それじゃこの国で生まれた…作られたものではなくなる!
それでは発展させたとは言えない…!
嗚呼…この人凄いな、羨ましいかも…!
私もこの人と同じ年齢の時にここまで国を支えられる存在になりたい!
流れる汗を拭って笑う。
「ならば、次に私が進言するのは食物に関してでございます。」
そこまで頭脳明晰なあなたなら、きっとこの話に乗ってきてくださる…!
ここからが、勝負です!!
需要があるのか分からないとりあえず脳みそにある物語文字にしてみるべ!的な勢いで書き始めてほかの作者様方のようにちゃんとプロットなど建ててませんので誤字報告してくださった方、本当に助かります!ありがとうございます!!
くわえていやマジで需要あるのか?と思いながらの投稿なので評価してくださってる方もいて嬉しいです!
脳みそのプロットには基本的に第1章が終わる頃の物語まではありますので、それらを全て投稿してから改めて需要があるのか拝見いたします!
それまでは文字起こしに時間がかかりますし、確実に何時とは言えませんが基本的に毎日か二日に一度の更新ペースになると思われます!
初めての試みの為、手探り状態ですがどうかお助けくださると助かります!これからもよろしくお願いいたします!