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第四話 定員オーバーです兄上!



「それで結局マリアローゼ様は『本なり』知ってるんですか?」

「こうしてかつての同郷としてわかった事ですし、敬称などは不要ですよ。…それよりも、その『本なり』は日本の時の作品のタイトルですか?」


あれから転生者同士であることをお互いに確認し合い、ある程度の協力関係を見込めそうだと思ったゆえの話し合い。

しっかしこの反応…このマリアローゼは原作を知らないくせにクラッシャーしちゃった感がプンプンするぞ…!!


え?これあなた追放されてたら確実に幸せになってましたとか言っていいのか??


『そうなんですね!じゃあ私酷い目に合わされてきましたしこの国とおさらばします!!』

みたいなことになってみろ!!

強制ざまぁ発動強制デットエンドですけど?!?!

もしかして…詰み回避したと思ってたけど全然回避出来なかった説あるってコト…?!




え?これガチで詰んでない??

『本なり』知ってますかって言ってその中身伝えなかったら怪しい!信用出来ぬ!!!になるだろうし、教えても離反フラグ経つよね…??



俺が攻略するべきなの、国からの亡命じゃなくて転生聖女だったりする…?




◇◇◇



頭の中の監督がリングにタオルを投げるか投げないかのせめぎあいをしている時だった、少し応接間の扉の方がザワついたかと思えばこちらに許可をとることもなく扉が開く。


俺とは違う深い赤髪、金糸をたっぷりと繕った豪華な衣装をたなびかせながら歩くその人は。

原作における聖女を追放した悪役、時期国王のレガルド第一王子だった。




ひょ、ひょええぇぇー!!!困ります!!あー!!困りますお客様あぁー!!!

定員オーバーです兄上えええぇぇぇっっ!!


しかも兄上超絶マリアローゼ睨んでるから!!兄上俺たちその人敵に回したら死ぬから!!!!ねえ!!!!



「お前がローゼフィール教会に反発し続け、この国を異様にしようとしている聖女か。」



兄上!!!!もうお口チャック!!!!!




兄上の突然の登場、からの暴言…しかもその前のなんか世界の真理っぽいみたいな事を聞かされたというのに、マリアローゼは真剣な面持ちで兄上の方へと向き直りその場で祈るように跪く。


「お初にお目にかかります、レガルド王太子殿下。…私がローゼフィール教会の教えとは違う考えを持っていることは事実です、ですがこのシアローゼ王国を陥れようなどと考えたことは一度たりともありません。

…どうか、言葉を紡ぐことをお許しください。」

「ハッ、それらしい言葉を並べるのが上手いな。だがそのような戯れ言を紡ぐことを許す気はないし、弟を惑わす事も許さん。」

「ならば、この場に同席して下さって構いません。私の思う何もかもをさらけ出すと…こちらに誓います。」


険悪なピリピリとした空気の中、マリアローゼはただでさえ身につけていたのが浮いていた女神のブローチを取り外すと兄上へと捧げるように掲げ持つ。


貧民と変わらない服装、あまりにも質素なその姿はこめかみの青薔薇さえ無ければこの国のどこにでもいる女性のようにも見える。

もしかして、俺はマリアローゼという存在の在り方を…見誤っていたのではないのか?

兄上がブローチを取り上げるように手に収める姿を見て、そう思わずにはいられなかった。

今ここで始まるのは、前世の知識や原作の知識など何ひとつとして関係のない正真正銘“シアローゼ王国の選択”の始まりではないか?


だとすれば、俺はこうしてぼんやりしている場合なのか?!?!

しっかりしろ、しっかりこの二人の話に食らいつき…そして王国の存続に繋ぐ!

それが俺、…アルベルト・シアローゼのやるべき事だ!!



「私はこの王国に産まれ落ち、十七年間癒しの力を貸し与えられた存在としてこの国を見て参りました。

しかし直接この手で癒す事を許されたひと握りの貴族の方、教会の方なのです。」

「…当然だろう、聖女の持つ癒しの力はそういった替えがきかない尊い人間を癒す為だけに行使するべきだ。平民や貧民、商人などはいなくなったとしてもまた次が生まれる。だが、貴族達はそうはいかない。」

「分かっております。…長い年月の積み重ねは安定の為に必要不可欠なもの。けれど、本当にその他の人々は切り捨てられるべきではないはず!」

「それは綺麗事にすぎん、この国に何万の民がいると思う?…その民が一人転べばお前はその度に癒しの力を使うとでも?そんな国の姿を異様と言わずしてなんという。」


マリアローゼと兄上の問答だが…、前世という平和な価値観を抜きにして見れば言っていることは兄上が正しいと第二王子の俺が言っている。

マリアローゼが言っていることは綺麗事にすぎず、いわゆる理想系…いつかそうなればいいねという現実がわかっていない少女の甘い夢のようにしか感じない。


その考えでは前世の俺としても、この国の王族の俺としても賛同できない。



だが、俺は知っている…!

聖女がこの国を去った後の姿を…!国の滅びを…!!

なら、この滅びかねないマリアローゼの思想を受け入れるべきなのか…?!




「違います、そんな表面の話をしたいのではありません。」



そんな迷いを払うように、聖女の凛とした声と青い瞳が兄上と俺を射抜く。

なぜだろう、彼女はあんなにも小柄なはずなのに。

無茶な理想を語っていたとしか思えないのに。


マリアローゼの姿と、父上の姿が重なるように感じた。




「私はこの先の未来、聖女を必要としないシアローゼ王国を目指しているのです。」





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