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第二話 聖女?との邂逅


この『本なり』の世界における聖女はタイトルからしてもわかる通りヒロインでもあり、主人公だ。


産まれる時に女神ローゼフィールから癒しの力を授かり、聖女の証としてローゼフィールを象徴する青薔薇をこめかみ辺りに生まれつき生やして産まれてくる。

その青薔薇を通して癒しの力を行使する為、青薔薇はイコールで聖女やローゼフィールを意味する象徴花でもあるのだ。

実際このシアローゼ王国でも青い色は尊い色とされ、特別な行事がない限り王族やローゼフィール教会のトップ一部の高位貴族、聖女しか身につけることを許されない色だ。


そんなわかりやすい聖女なら追放するわけないだろ!と突っ込みたくなるところだが、確か『本なり』の偽聖女は聖女への嫉妬への執念からか、元々の才能からか偶然青薔薇を作り上げることが出来てしまった花屋の娘で、その青薔薇を常に耳元にさしていた為に見分けがつかなかった。

癒しの力で証明したのかしなかったのかはニワカの俺にはわからないが教会の言う事に反発した聖女…つまり原作主人公のマリアローゼが邪魔な存在と認識されて追放されたという筋書きだった。

だが追放されても獣の国に拾われるし、普通に癒しの力が使えているのは生まれついた時から生えている特殊な器官の女神の青薔薇があるからで、なんならその青薔薇の力は聖女を常に癒している為に聖女が怪我をする事や病気になる事はない。


ない、はずなのだ……!!!





◇◇◇



「ち、父上!私の勉強不足でなければ聖女は女神ローゼフィール様の加護により病や怪我などをする事がなかったはず…。ならば何故そのようなことに?」

「それがわしにも分からぬのだ、これまでの歴史を鑑みても聖女は老衰以外で死ぬ事は無かった。…だが、今代の聖女は明らかに様子がおかしい。

然し二権分立である以上、王族である我らにローゼフィール教会は唯一内情を探れぬ存在ゆえにおかしいということ以上の情報がわからぬ。さらに言うならばその聖女自体一度公の場に出たのみで、市井にも現れておらぬという。」

「なるほど、それはおかしいですね…。市井の民に聖女の存在をアピールする為にも普段ならば姿を見せているでしょう。」

「そこでだ、アルベルト。お前は現在市井にも出ておらず、外交の勉強故長く他国にいた。我らでは病になっている、などの誘いではあちらも勘づくだろうが長らく姿を見せていないお前ならばあちらの警戒も薄いだろう。

何より王族と不干渉であるといえどもこの干渉は十分に許容出来るものだろう。」


なるほど、充分に言い訳が出来て更に王族という身分から断れない状況を作るから聖女について探ってこいって事か。

渡りに船だな、聖女が転生者かどうかはさておいてそもそもその聖女がマリアローゼであるのかという疑念も晴らす事ができる。


「分かりました。それならばこのアルベルト、父上の耳となりましょう。」

「まだ成人していないお前に頼むことではないが、だからこそ確認できる機会だ。頼んだぞ」



父上との話を終えて、様々な可能性を考えながら自室へ向かうものの所詮俺の知識は妹からの感想や表紙のイラストのみという頼りないニワカ知識だ。

ここまで展開が変わってしまっている以上、原作の『本なり』の知識は役に立たないとすら考えていい。



だああぁぁぁー!!!!!


いや記憶戻った時も思ったけどハードモード過ぎない?!普通転生してたら原作知識で知ってるー!みたいなのが普通だろー!!!!

いや人生においては今のわけわかんねー!って状況の方が正しいけれどもー!!!!


あの時と同じように自室のベットの上で頭を抱えながらゴロゴロと転げ回る。

何年も経っているくせにやってる事変わらないじゃねぇか!!!!

とにかく聖女だ、聖女にさえ会えれば全てがはっきりする!


これが偽聖女ならとっとと密告して本物の聖女に就任させればよし、転生者の聖女ならこっちの事情とを合わせて伝え同じ方向へ向かえばよし!

そもそもが亡命して逃げようとしていた位の人間だ、失敗した所で逃げ出してしまえば命だけは助かるだろう。……国はしらんけど。





◇◇◇




「お初にお目にかかります、アルベルト殿下。私は今代の聖女を勤めさせていただいているマリアローゼと申します。御身の不調を教えて下さいますと、助かります。」


うん、原作と同じく本物の聖女の方のマリアローゼだな。


はちみつのような優しいふわふわとした金髪を後ろで緩く三つ編みにまとめた、青い瞳の優しげな美少女だ。





でも原作と同じなのここまでだけぇーーーー!!!!!!!



なんだお前?!?!仮にも王族と会うっつってんのになんで貧民が着るみたいなボロボロの白いワンピースなんか着てんの?!?!

お前青いシスター服をドレスみたいにした綺麗な服追放される時も着てただろ!!!!!

しかもお前!!!髪括ってんのそれ麻紐だろ!!!!それロープだから!!!!髪紐じゃねーから!!!!

何当たり前みたいにそんなんで髪の毛括ってんの?!?!?!


しっかもそんなボロワンピースに今だけ付けてきました!みたいな感じで女神のブローチ付けてんじゃねーよ!!!

胸元のブローチだけ明らかピカピカで普段から着けてないの丸わかりじゃねえか!!!

確かそれ癒しの力の循環サポートする超重要アイテムだっただろ!!!!!

追放された時に取り上げられて獣の国の王様がお前の為に奪いに来てたじゃねえか!!!!!


いや、まあ、まだここまではまだ…!!いや良くない!!良くないがまだわからんでもない!!!でもなぁ、お前さぁ!!!!!






お前力の使いすぎで青薔薇枯れかけてるじゃねぇか!!!!!!!!!

国王より先に主人公死にかけててどうすんだ!!



いや、クールになれ!俺…!!まずはこいつが原作マリアローゼなのか転生者なのかを確認する必要がある…!!

正直妹いたお兄ちゃん魂が!!!心配ですって叫んでますけど!!!!

何があったんだよお前ぇって叫びたいですけど!!!!!!



「んッ、んん!初めまして女神ローゼフィール様の愛し子、聖女マリアローゼ。この度はわざわざ私の不調の為に足を運んでいただきありがとうございます。

実は外交の為他国へ行った際に流行病を貰ってしまった様でして…ゴホッ」

「それはいけません!直ぐに治療をさせて下さい…!喉を痛めているのですか?」

「ええ、ゴホッ!これは感染するものだと聞いています…、聖女様のお手を煩わせない為にも教会の方は一度外へ向かって貰ってもよろしいでしょうか?敬虔な信徒である貴方達に病を移したとなれば、心優しき女神ローゼフィール様を悲しませてしまうでしょうから…ゴホッゴホッ」


ちょっとわざとらしいとはいえ本当の感染症なら面倒だからだろう、何よりこんなところで王族との言い合いなど馬鹿らしいに違いない。教皇自らは赴いていない今、女神を言い訳とした言葉は効いたらしく恭しく礼をしながら


「身に余るお言葉、ありがとうございます。アルベルト殿下のおっしゃる通り聖女様に余計な力を使わせる訳にはいきません。扉の前で待機しておりますので、治療が終わればお知らせください。」


来ていた軍団の中で一番地位が高いらしい男が言い終わると大人しく応接間から離れていく。よしよし、やはり成人していない、しかも他国へ勉強しかいっていないという立場もあって特に王族だからと警戒はされていないようだな。


しかし聖女とそれほど大きくない声ならば誰にも聞こえない状態になったとはいえ、どうやって自分が転生者であり、どういう状況なのかを聞くのがいいか…。




バカ正直に聞いて原作マリアローゼだった場合…

『俺、実は転生者なんです!元日本人です!本なりの世界ですよねここ!』

『何言ってるんですか…?アルベルト殿下ではなく、もしや影武者…?!』

『アルベルト殿下じゃない偽物だと?!スパイだ!!殺せー!!!』

斬首ッッ!!!



もしマリアローゼが転生者だった場合…

『俺、実は転生者なんです!元日本人です!本なりの世界ですよねここ!』

『そんな…、私以外にも転生者がいたなんて!私の邪魔をするつもりなんですか?!』

『話を聞いてくれー!』

『正体がバレた以上ここにはいられません!さようなら!』

ざまぁ発動!!!斬首ッッ!!!




どう考えてもバカ正直に言うべきではないな…詰み状態が加速して毒杯で死ぬより先に首と体がさよならバイバイしそうだ…。


となれば、慎重に前世のワードをさりげなく混ぜこみつつマリアローゼの目的を探るのが最善か…。

さりげない前世のワードってなんだよ……、しかもマリアローゼが日本人じゃなかった可能性もある……。







「他国に行った際に寿司を食べましてね、やはり生はいけませんね。腹を痛めてしまいましたよ」



もうどうにでもなーれ☆



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