特別編
ボクは彼女に気付かれないように魔法を使うことにした。彼女の後ろに密かに霊を召喚する。前後から挟み撃ちすれば、この彼女が作り上げた偽りの記憶も消えるはずだ。「ばれないだろうか?」でもこのままだと‥ボクは消え去る!間違いなく!!
ボクは周囲に魔法円を描いていく。彼女は気付いていない。ボクと彼女では彼女が圧倒的に有利だ。だから先手必勝、一撃で決めるしかない。ボクは自分のプラーナが高まっていくのを感じた。彼女は余裕の顔だ。たとえボクが死んでいたとしても、もし仮に彼女がボクのお母さんと呼ぶ人であっても、ボクは後悔しない。今ここで全てを終わらせよう。
「ねぇ、もう終わらせない?」よし!魔法円は完了した。後は動くだけだ。だが最後に、もう一度だけ彼女に確認したい。「全てを終わらせるつもりはないのか?」を。だが彼女は「終わらせる?嫌よ。そんなつもりはないわ」とあっさり言った。決まりだ。ボクは彼女の背後に魔法円から召喚した霊を置いた。彼女をボクと霊が前後から挟み撃ちで攻撃に転じる。解放したボクのプラーナは一気に高まりを見せた。
だが彼女は余裕の表情だ。ボクのプラーナを見ても全く動じない。「キミには消えてもらうよ、ボクの転生呪文でね。」教室がガタガタと揺れ始めた。ボクと召喚した霊のプラーナがまるでプラズマのような光となり、前後から彼女を包み込んでいく。「ボクの勝ちだね。さようなら」ボクは勝ちを確信した。たがその瞬間、ボクのプラーナが押し返されていく。いや、弱まっていった。
「残念ね。言ったでしょ?ここは私の魔法の中だと。あなたの攻撃は私には通じないのよ。」ボクの足は思わず後ろに下がった。その時、ボクは気付いた。いつの間にか、足元に魔法円が敷かれている事に。「転生するのはあなたよ、さようなら」解放された彼女のプラーナがどんどん高まっていく。そして彼女の身体から放出されたそれは、ボクを包み込み魔法円に飲み込まれるようにして消滅した。魔法で敗れたボクはこうして完全に消えたのだった。
「馬鹿ね。魔法で私に勝とうなんて。私が封じた結界内であなたに勝ち目なんてないのに。でも、これでやっと気兼ねなくグラウンドを走れるわ。」少女は窓の外を見た。暖かい木漏れ日が教室に差し込み彼女をキラキラと照らしていた。