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月影映る・海  作者: 林伯林
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 破壊された神殿周辺は立ち入り禁止地区とされ騎士が常に巡回しているが、アルトナミ王都の人間はあの日の騒動を見たが為、傍に寄ろうとするような物好きは存在しない。


 時折好奇心に駆られた子供が境界ぎりぎりの場所で中を伺っていたりするが、悪戯で立ち入るようになるまでにはまだ多少の時間は必要だろうと思われていた。


 それがため、滑るように境界線を越えて中へ入っていく黒い人影を最初は見間違いだろうと見送った。


 だがそれが、間違いなく人であると認識した直後、騎士はそちらへ駈け出した。


 「待て!ここは立ち入り禁止だ!」


 仲間の大きな声に、近い所にいた騎士たちが数人わらわらと寄ってきた。




 瓦礫をよけもせず、崩れた礼拝堂の中へすいすいと入って行った人影は、魔法陣が立ち上がっている光の柱の傍で歩みを止めた。


 「何が起こるか判らない!今すぐ立ち去れ!」


 黒いワンピースを着た黒髪の女だった。


 振り返りもしない。


 頭のおかしい女ででもあろうかと舌打ちして、強制的にどかせようと走り寄って手を伸ばす。


 腕を掴もうとした時、女がちらりとこちらへ顔を向けた。


 真っ黒い瞳にはっとして手を引っ込める。


 女は掴まれようとしていた腕を伸ばし、光の中へ無造作に手を突っ込んだ。


 「おい!」


 驚いて騎士が引き戻そうともう一度手を伸ばすも、女はそのまますっと光の柱の中へ入ってしまった。




 そして、騎士の目の前で光に紛れるように消えてしまった。




 何が起こったのか判らず、騎士たちはその場に立ち尽くした。



*** 


 王都に渡り人が現れた。




 報告を受けた王は詳細を知る為に目撃した騎士を呼びよせた。



 「私が見たのは、黒い髪と黒い瞳の女で、すぐに魔法陣の下の光の中へ消えてしまいましたのではっきり顔を見たわけではありません。それが渡り人ではないかと言ったのは遅れて駆けつけた同僚です。同僚は浄化の旅に参加していたので遠目にも背格好は酷似していると」


 同僚の方にも話を聞いたが、「恐らく間違いない」と言った。「あの漆黒の髪は渡り人以外には見たことが無い質感」だと。


 一体、どうやって現れたのか、その場にいた騎士たちは皆目見当がつかない、と言った。


 街門に確認したが、出入りの痕跡はなかった。


 忽然と現れ、瓦礫をものともせず、するすると壊れた神殿内へ入って消えてしまったのだ。




 転移魔法の使い手である、と王は再認識した。




 「何をしに現れたのだ。またひと騒動あるとでも言うのか。折角落ち着いてきたのに」


 王の傍らで王子は呟いた。


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