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月影映る・海  作者: 林伯林
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 寒い地方にある温泉には非常に興味をそそられた。

 月神と精霊しか辿り着けない、それゆえ人には全く知られていない場所があるのだそうだ。


 「オウナ北はね、景勝地が沢山あるのよ。人が住むには適さない所でもあるから、今中央を席巻している帝国とやらは全く興味を示さないし」


 周辺諸国をじりじりと削る政策を続けた結果、次々と併合、属国化を遂げ、オウナは帝国以外なんとか国としての体をなしているのはイオジノレ他数える程しかないらしい。それも代替わりした若い皇帝が積極的に攻め始め、風前の灯だとか。

 大きな国をカリスマが治めるのは、古今東西長持ちした試しは無いが、どうなるだろうかと静音はぼんやり思う。現皇帝がカリスマかどうかは知らないが。


 この世界の事は、いつまでも他人事だ。


 「そのうち金木の森へも行きましょうか」


 月神の言葉に顔を上げる。


 「南の大陸ですか?」


 精霊のみが住むと聞く大陸を、月神やその眷属は「金木の森」と呼ぶ。

 文字通り、金に光る樹木が森をなしているからだそうだ。


 「あそこはあそこで面白い土地なのよ。静音は前から興味があったのよね?」


 「ええ」


 「あなたなら行こうと思えばすぐに行けるのでしょうけど、ちょっと待ってね。訪問に適した時期があるから」


 「え、適さない時期に行ってはいけないんですか?」


 初めて聞く話だ。リルもそんな事は言っていなかった。


 「いけなくはないわ。ただ、金木は眠る期間があるから、訪問はその頃が望ましいのよ」


 「眠るんですか?」


 「ええ」


 不思議樹木なのか。光るという以上そうなのだろうが。


 「極のほうの大陸も時期があります?」


 「そっちはないわ。夏場の晴れた日を選べば絶景よ。寒いけど」


 それはまあそうだろう。

 静音はハブ中継部屋に南半球の魔法陣がないか探しに行こうと思った。なければ設置に行こう。


 静音は月神の気の乗った魚をぱくりぱくりと齧り取りながら、先の計画をぼんやりと立てる。

 それを見て、月神がほっと胸をなでおろしていた事には気が付かなかった。

 更にそれを見て、イェルキラ達も同様に安堵していた事にも。


 彼らの思惑に静音が気づいたとて、それでどうこうという事もない。

 浄化が終わった時から、静音は命が尽きるまで、好きに生きると決めたのだ。


 「まあでもまずはオウナの北へ行きましょうよ。案内するわ」


 月神は楽しげに言った。

 静音は頷いた。


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