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「だから、どうして一人で行こうとするの!」
リルが耳元でわめき、ルーは無言で背中に抱き着いていた。
「ごめん」
静音は電光石火の動きで移動する自分にくっついてきた二人に驚きながら詫びた。
「ずっと一人で行動してたんで、つい」
「静音は契約主だから、いつでも私たちを呼び出せるけど、私たちの方からは呼ばれなきゃ来れないのよ!」
「え、そうなの」
「そうなの!」
瞳を潤ませてリルは訴える。
「私たちが一緒なのが嫌なら仕方ないけど、そうじゃないなら連れて行って」
「そうね。うん。申し訳ない」
静音は戸惑いながら頷いた。
こちらの世界に来てから、他者との間に距離を置くのは当たり前だったので、リルの近さには慣れない。信用するのとはまた違う感情があって、警戒心も僅かながらないわけではないのだ。
ルーが背中に抱き着いてきたのにも驚いた。
リルはともかく、ルーは今までは適切な距離を持って接していたはずだ。
「ルーもそう?」
背中に向かって問うと、ルーはすっと身体を離した。
「あなたを慕わしく思うのはリルと同じなのだろう。この感情が契約によってもたらされるのだとしたら、難儀な事だとは思う」
自動人形が恐らく初めて自覚した感情がそれとは。
静音は申し訳ないような気もした。
何故なら、リルはともかく、ルーに関しては、本人の意志を確認もせず魔力を注いでしまったのだから。
「私もまさか、こんな風になるとは思わなかったのよね。傷つけたお詫びに、残り少なくなった動力源を分けてあげるくらいの気持ちだったから」
何事も、確認は大事だ。
「なんだか申し訳ないわね。今更なかったことには出来ないみたいだし」
「難儀とは思うが、契約を破棄してほしいとは思わない」
ルーはどこかしら憮然とした調子で言った。表情は変わらなかったが、微かに不機嫌そうな雰囲気になった事を静音は感じとった。
「変化がとても興味深い」
「楽しんでいる、という事よ」
リルが代弁するように言った。
「そうなの?」
「そういうことなのだろう」
「そう。ならいいんだけど」
今回も少なくて申し訳なく……




