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すぽんと頭からワンピースを被る。
城の侍女が用意してくれたものを未だに順繰りに使っている。
着る物にこだわりがないわけではないが、シンプルで全く飾りがなく、綿生地で肌触りが良い上、脇や胴部分にゆとりがあって動くのが楽、という静音にとっては好ましい事この上ない一品であるのだ。恐らく擦り切れるまで着る。
アンナは一体、どこでどうしてこれを購入したのだろうと思う。
上流階級の女性が身につけるのであれば、ドレスは絹であろうし、装飾が全くない形からしても、高級な服飾店で手に入れたものとは思えないが、生地の品質や着心地を思えば、平民の一般的な購入先で入手できるとも思えない。
可能性としては、上流階級御用達の店に特注で作らせた、だろうか。
確か一日で揃えたように思うので、そうであれば相当急がせたのだろう。
それが出来たアンナは一体どういう出自の侍女だったのか。
城に勤めるということは貴族の娘である可能性もあるが、そういう出自の娘を果たして静音のような人間に着けるかどうかも判らない。
着心地が良すぎて連日着まわしている以上、擦り切れる日も近いと思われ、そうなったらどうやって換えを入手しようかと思う。
「え、もうちょっと素敵な服着てもいいんじゃないの。毎日それじゃ飽きない?」
とリルが言った。
確かに、たまには違う服も着たいとは思うが。
「この世界の服って趣味じゃないのよ。フリルも刺繍も嫌いじゃないけど過剰だし」
コルセットも勘弁してほしい。
コルセットと言えば。
「下着もなんとかしたい」
そういえば、スニーカーもいずれはすり減るだろう。今は魔力シールドで持たせてはいるが。
「過去発達した文明があったのなら、それ少しくらい残ってないの?」
リルもルーも同時に首をかしげた。
「例えば伸縮性のある布とか。あ、そういえば、ゴムの加工品とか存在するのかしらね」
ルーが傾げた首を元に戻した。
「あるぞ」
「ほえ?」
***
思わず間抜けな声を出してしまったが、ルー曰く、キシュキナの街に行けば商店が残っているという。
一万年前の商店……
微妙な顔をしたらしい。ルーがそうではない、と手を振った。
「『維持』で保たれている在庫倉庫がある」
聞けば、『維持』というのはそれなりに強固な魔法らしく、魔力変動に巻き込まれてさえも壊れもせずにそのまま海へ沈んだり、地に埋もれたりして残っているらしい。
「キシュキナの街はこの島に一部だけ残っている」
砂浜から、初めて森に入った。
ルー達魔導人形がずっと手入れしていたのか、それともこれもまた「維持」なのか、ならされた道がきちんと通っていて歩きづらいということもない。
鬱蒼と茂った森の中に小動物の気配はあったが、アルトナミの森のように、危険な動物や魔物はいないようだった。
三十分程歩いた所で、突然開けた場所に出た。
森の中に埋もれるように存在する「街」。
不思議な光景だった。
残っている建物は少しも傷んでいるように見えないのに、そのすぐ隣には朽ち果てた建物の残骸がある。
「維持」で保たれている建物とそうではない建物があるのだろう。
静音は、残っている建物を順番に覗いて何を売っていた店なのか確認していった。
その多くは倉庫や保管庫で、建物が残っているというより、部屋が残っていると言うべきか。
食べ物屋の保管庫には新鮮さを保ったままの生鮮食料品が並んでいた。
穀物棚には、袋詰めされた……
「ああ!米がある!」
静音は思わず声を上げて駆け寄った。




