オラール王国へ
翌日、オラール王国の使者の一行は国へ帰って行った。見送る義務は無かったのでイレーネは皇城に行かなかった。もう二度とあの失礼な男の顔を見る事は無いだろう。この二日間で一年分ぐらいの災難を受けたような気がしたが、何故か楽しかったのも正直な気持ちだった。静かな午後のひと時を過ごしている所へ、書簡が届けられた。封書は見たこと無い封印が押されていたが中を見るとそれはあの男からだった。
――王子の教育の件は本気だ。悪いようにはしない。絶対に来てくれ―――
と、だけ前置きも無ければ何も無い用件だけの文章。本当にあの男らしいと思った。
此処で無い場所――確かに心が揺れる。自分は生まれかわりたかった。だから何もかも白紙に戻したのだ。それでも過去はついて回った。あの男とまた会うのに抵抗を感じるが、役目が違うのだから四六時中会う訳では無いだろう。しかし誰も知らない土地で本当に自分がやっていけるのかと思うと迷うところだ――しかし決断した。この話をナイジェルに言うため皇宮に向った。私的な話だからと告げていたので通されたのは後宮の一室だった。ツェツィーリアの同席も頼んでいたので最初に彼女がイレーネを迎えると、直ぐ後にナイジェルも現れた。
「イレーネ、話とは?」
「はい、陛下。わたくしの為にお呼び出し致しまして申し訳ございませんでした。実は、わたくしはこの度、オラール王国へ行こうと思いましてそのご報告に参りました」
「オラールに?何故また急に?」
イレーネの意外な話にナイジェルとツェツィーリアはお互いに顔を見合わせ驚いた様子だった。
「はい、先日のオラールの使者から幼い王子・・・王位継承者の教育をして欲しいと要請がありまして、わたくしも考えましたが良い機会では無いかと思ったのでございます」
「使者?あのクロードとか申した者か・・・」
ナイジェルはそう呟くと考え込んだ。そして続けて言った。
「イレーネ、此処はそんなに居心地が悪いか?もしそうさせているのなら私が出来る事は何でもしよう」
「陛下、お心だけで十分です。確かに思ったより大変でした・・・・陛下もツェツィーも、わたくしなどの為にお心を砕いて頂いて、本当に申し訳なく思っております。しかし人の感情までは操れない事は十分お分かりでございましょう?周りにわたくし達を理解して貰うには時間が必要なのです。でも、その時間をただぼんやりと過ごしたくないと思います。ですから少しの間、お暇させて頂きたいと思いますの」
もう昔のイレーネでは無いとナイジェルは分かっている。泥沼に沈んでいた彼女は自分で這い上がって今、此処にいるのだ。その彼女が決意した事だ、止める事は出来ないだろう。自分の力のなさに情けなく思うだけだった。
「・・・・イレーネ。本当にそなたは強くなったな・・・わかった。だがそなたの帰る場所は此処にあると忘れないでくれ。何時でも私とツェツィーリアは待っているのだから・・・」
ツェツィーリアも涙をいっぱい溜めて頷いた。
「ありがとうございます。とても心強いです。ツェツィーそんなにすぐ泣いては駄目よ。永遠の別れでは無いのだから・・・」
「イレーネ様――っ」
ツェツィーリアは堪らずイレーネに抱きついた。可愛いツェツィー一番つらいのは彼女と過ごせない事かもしれない。今では本当に一番心許せる相手だったのだ。泣きじゃくる彼女にイレーネもナイジェルも困り果ててしまった。しかし最後はナイジェルが泣くツェツィーリアを引き取ってくれたのだった。
イレーネは出発前にオラールのクロードの元へ書簡を送っていた。先にそれが着くだろう。返事を待つつもりもなく出した次の日に出発した。ふざけた男だったが王子の教育の件は本気のようだったから心配はしていない。それと一応、王子の教育のみ受けるとわざわざ書いた。自分の教育とか何とか言っていたのは冗談だろうが一応念のためだ。それを書いた時、ふと思った。端から見ればナイジェルはずっと他の妃を娶らなかったから、あのように思われるのだと初めて知った。
(おかしいわね。そんなことは全く無いのに・・・)
皇后時代、ナイジェルが彼女に指一本触れる事は無かった。彼が触れたのはそれこそ大神殿で行なわれた婚儀での誓いの口づけだけだった。後にも先にもそれだけだし、当然他の男性との関係は無い。でも普通は信じ無いだろう。隠すつもりは無いが言う必要も無いと思う。いずれにしてもあの男は危険なのだから近づかないように気をつけるだけだ。
ナイジェルの計らいでイレーネ達の道中は危険が無いようにと皇家の紋章の入った馬車と近衛兵をつけてくれた。帝国内でそんな一行に危害を与える者はいないだろう。そして同行者は本人の希望もあってリリーだけを伴いようやくオラールの王都へ到着した。
そして王城に向かい宰相のクロードを呼び出して貰った。連絡はしていたと言ったが城門では聞いていなかったようだった。書簡は届いている筈だが・・・イレーネは少し心配になったが、隣国の帝国皇家の紋章が入った馬車に乗る貴人を門兵達は追い返す事はなかった。しかし入城を許されたが城の一室でかなり待たされた。
そしてやっと現れたのは見た目若いが落ち着いた感じで怜悧な目をした見知らぬ男だった。そして耳朶には太陽の刻印を模った黄金の耳飾りをしている。彼も王族なのだろうと一見して分かる。デュルラーでは皇族は宝玉の環をはめるがオラールでは耳飾りなのだ。その男は不審そうに問いかけてきた。
「クロード・セゼールに用事とおっしゃるのは貴女ですか?」
「はい。ご本人様へお聞きして頂ければ直ぐに分かるかと思うと、先程も申しましたが?それに前もって書簡もお出ししておりますし・・・もしかして今日、セゼール様はいらっしゃらないのでしょうか?」
男の顔がいっそう険しくなった。
「・・・・・確かに意味不明の書簡は今朝届きましたが・・・私がクロード・セゼールです。しかし貴女を私は存じません」
「えっ!」
イレーネは驚いて目を見開いた。
「そんな馬鹿な・・・首席宰相のクロード・セゼール様ですよ?」
「はい。私がそうです」
「でも、確かにそう名乗っておいででしたし、ではこれをごらん下さいませ。王子の教育をと依頼されております。貴方の名前で」
イレーネはそう言って、彼が帰り際に送ってきた書簡を見せた。クロードと名乗る男はその封印を見て驚いたように見ると急ぎ中を検めた。
「・・・・この字は・・・」
その時、急に外が騒がしくなったと思ったらバタンと大きな音をたてて扉が開き、男が飛び込んで来た。それこそクロードだ。
「クロード!帝国皇家の馬車が外に何であるんだ?誰が何しに来たんだ?えっ?イレーネ!」
「やはり、貴方でしたか・・・帝国で私の名を騙ってらしたのですね。全く、父上が付いていながら何をなさっていたのか・・・」
イレーネは何が何だか分からなかった。目の前にクロードと名乗った者が二人いるのだが、見知った者はそれを騙っていたと言っているのだ。
「騙り・・・それでは王子の話しは全て嘘でございますか?」
「イレーネ!それを受けてくれるのか?」
騙った男は嬉しそうに言った。
「陛下!まずは私に説明して下さい」
もうひとりのクロードが相変わらず失礼な男を〝陛下〟と呼んだ。
「陛下?まさか貴方・・・」
「何か大変失礼な事を致したようで、申し訳ございませんでした。私の名を騙った者は国王アラン・ドュ・オラールでございます」
「いや・・・その・・イレーネ。騙すつもりは無かったんだが・・・国王だと名乗って行ったら、迎える側が大げさにされるから嫌だったんだ。色々羽を伸ばしたかったし・・」
イレーネは驚いたなんて簡単なものでは無かった。もう頭の中が真っ白になってしまった。何と軽はずみな行動なのだろう。しかもあの喧嘩だ。国王同士ならまだ良いが、一介の臣下ごときがとる態度では無かった・・・だがあの場で彼は身分を隠していた。
「貴方はそれなのに陛下にあのような喧嘩を仕掛けたのですか!あれではあの場で殺されても文句は言えなかったのですよ!もう少しで一国の王をお手打ちにしてしまうところでしたわ。ご身分を偽るなんて・・・」
「陛下!何をなさったのですか!喧嘩って?父に訪問の様子を聞いても口が重かったのですが・・・いったい何を?」
「ふん、透かした奴に女の扱い方を教えただけだ!ああもういいだろう?さあ、イレーネ王子の所に連れて行ってやる!さあ」
アランはまだ愕然としているイレーネの腕を引いたがショックで動こうとしない。アランは舌打ちをして彼女を荷物でも背負うかのように肩に抱えあげた。イレーネはまるで少女のように軽かった。
「何をなさいますの!下ろして下さい!」
イレーネは足をバタつかせようにも腕で押さえ込まれ、仕方ないので彼の背中を自由な手で叩いたがビクともしなかった。イレーネの悲鳴と王の豪快な笑い声は王宮の奥まで響き渡るようだった。
そして王子宮に行くと思ったらそこはどう見ても後宮だった。所狭しと、甘やかな香がたかれている。柱も壁もいきなり絢爛豪華になっていた。何事かと美しい女達が様子を窺うようにじっと見ているのがわかる。しかしそれを見て騒ぐものがいないところを見ると、日常茶飯事なのかもしれない。好色な王と噂は聞いていたから何時もこんな風に女を攫ってきては後宮に閉じ込めるのか?イレーネはそう思うと、ぞっとした。冗談半分に言われた言葉を急に思い出してしまった。早く逃れなければと一層抵抗を強くし始めた時に、アランが大声で誰かを呼んだ。
「レミー!約束のものを連れて来たぞ!」
そしてすとんと下ろされた下に、大きな碧い瞳をいっぱいに開いた子供がいた。髪は短く柔らかな金色をしてくせがあった。とても可愛らしく母親がかなりの美人だっただろうと予想できる。
「イレーネだ。仲良くするんだぞ!」
王子は興奮して言葉もでないようだった。ただ、うんうんと大きく頷いている。
手荒く連れて来られたのが後宮だったからどうしようかと思ったが、王子の為と言うのは本当らしい。イレーネは呆れたものの可愛い王子には敵わなかった。
ふわりと王子の前に座りこむと微笑んだ。
「イレーネと申します。お友達になりましょうね」
そう言って腕を広げると、王子は驚いたように見たがその腕の中に飛び込んで来た。小さな温もりはとても柔らかく愛しげで、イレーネはぎゅっと抱きしめた。
「イレーネはとってもいいにおいがするね?大すき」
小さな王子は正直な気持ちを言った。
「おっ、なになに。いい匂いだって?どれどれ」
アランはしゃがみ込むと、ふざけた調子でイレーネの後ろから王子ごと抱きしめた。そしてイレーネの首元で大きく息を吸った。
イレーネは驚いて振り返ったが、振り返った方向が悪かった。真横にアランの顔があったのだ。彼はニヤリと意地悪そうに口の端をあげた。唇が触れそうな位置だ!イレーネは一瞬で真っ赤になって、慌てて顔を戻した。
「陛下!ふざけ過ぎでございます。私は王子のお相手をする為に参りました。貴方様のお相手をする為ではございません!それと申し上げますが、貴方が懸念しておいでだった事も一切ございません。わたくしは全く興味がございませんので!」
アランはむっとした。ここまで拒否された事は無かったからだ。クロードを名乗った時は仕方が無いとは言っても、今は正体も分かって自分が国王なのだと彼女は知っている。それなのに此方が気の有る態度をしてもこの有様だ。本当に身持ちが硬い生娘か人妻のようだ。
(生娘は別として人妻?まだ彼女はあの男が忘れられないのだろうか?)
そう思うと苛々してくる。
「ああ、お前はレミーの教育係り。それにお前は俺を嫌っているだろう?だから他の女のように俺の寝床に入りたがらない!それくらい分かっている!こっちもそれでありがたいと言うもんだ!」
売り言葉に買い言葉だったがこれで二人の関係ははっきりした。明日には後宮中に新しく入って来た女は自分達のライバルでは無くて、只の教育係だというのが回るだろう。隣国のかなり身分の高そうな貴婦人だがそれだけで容姿を気にするものでは無いとも・・・・
<閑話> 小さな王子
レミーはアランを嘘つきだと思っていた。母親がいないからレミーの為の女の人を連れて来ると言ったのに来た人皆、レミーを邪魔者扱いしたからだ。仲良くしてくれるのはアランがいる時だけだった。レミーが侍女達のしていた内緒話を聞けば、その人達は王の寝床に入りたいからだとか言っていた。寝床?レミーはみんなが入りたがるのが分からなかった。前に一度一緒に寝たことがあったが、その時大変な目にあったからだ。アランの寝相が悪くて下敷きになり危なく窒息して死にそうだったのだ。でも、それをしたがってアランが怒って追い出した人が何人もいた。だからどうして怒るのか分からなかったので聞いてみた。
「父上、どうしてあの人たちが父上の寝どこに入ったらだめなの?」
「なっ!お前どこでそんなこと聞いたんだ!」
「ねぇ~なぜ?」
アランは頭をがしがしかいてどう答えたものかと考えた。レミーが純粋な瞳で見上げている。
「えっとな、寝床に入っていいのは俺の専用で、お前の為に来てもらう奴はお前専用だから余計な仕事をしたら駄目なんだ。分かったか?」
「お仕ごと?寝どこに入るのがお仕ごとなの?」
「そ、そうそう!お仕事。寝かしつけてもらうお仕事。だから残業してもらったら疲れてお前の相手が出来なくなるだろう?」
「でもなんで父上はおとななのに一人で寝むれないの?ぼくはちゃんとひとりで寝ているよ」
「うっ、それはだな…そうだ、大人になったら一人だと寝れなくなるんだよ」
「ふ~ん、父上みたいにあばれるからかなぁ~おとなしく寝かせるため?」
「まぁ、そんなもんだ。暴れ方は違うけどな」
「ふ~ん・・・そうだよね・・・ぼくは父上といっしょに寝たときはたいへんだったもん」
レミーの不審そうな瞳が痛いアランだった。
「そ、そうだ今度は寝床に入りだがらないように婆さんにしたぞ。年寄りは寝床に入る仕事は大変だから希望しないし、お前は孫ぐらいだからきっと可愛がってくれるぞ」
レミーはぷーっと脹れた。
「イヤ!だってみんなの母上は若くてきれいなのにイヤ!父上のせんようだってきれいな人ばっかりなのに、ぼくだけなんてイヤだもん!」
「嫌だって?今までと違ってやさしいぞ。絶対いいぞ」
「そんなにいいなら父上のもそんなひとにしたらいいじゃない!でも父上はきれいな女のひとからいっぱいかこまれて、鼻の下をのばしているんだよね?ぼくも父上と同じことをする!鼻の下をのばすんだ!」
「鼻の下って・・・お前、どこでそんな言葉を覚えるんだ?全くだから目を光らせる教育者がいるっていうのに・・・はぁ~」
結局年配の女性を連れて来てもレミーは納得せず、教育係りは空席となってしまったのだった。そしてデュルラー帝国から戻って来たアランはイレーネから返事も貰ってもいないのにレミーへ約束をした。
「レミー、今度な。隣の国からその国で一番高貴な地位にいたいい女を予約して来たからな」
レミーは頷いただけで喜ばなかった。またどうせしわくちゃの女の人だろうと思ったのだ。一番高貴というのなら尚更だろうと―――
だからイレーネを見た時は驚いてしまった。とっても優しそうで、今までの人達と比べ物にならなかったのだ。それにとっても良い匂いがしていた。他の子供達の母親の方が綺麗かもしれないが、その母親達は皆、白粉と香水の匂いが強くて気分が悪くなるから嫌だった。それに抱きしめてくれた人は今まで誰もいなかったのだ。しかし、レミーは心配になった。また若い人なら父親の寝床に入りたがるかもと。だから聞いてみた。
「イレーネ。父上の寝どこにはいりたい?」
イレーネがぱっと頬を赤らめた。
「レミー様!そのようなお言葉どこで覚えられたのですか?そういう言葉を子供は使ってはなりませんよ。お答えしますが、私はレミー様の為に参りました。あなたのお父様の為に来たのではありませんから、その、ねど・・・コホン。そういうところには入りません!」
「よかった。父上はお仕ごととかいっていたんだけどね、父上を寝かせるの大変だとおもうんだ。だってすごいんだよ。ぼく死にそうになったの。ゴロンゴロンてくるし足やうでがバタンバタンってとんでくるしね。イレーネがもしいっしょに寝たらたいへんだもん。よかった」
仕事?確かにそれはそうかもしれない。王としては子孫繁栄の重要な仕事だろう。イレーネは苦笑してしまった。しかしこんな子供から言われるくらいアランの寝相がすごいとは・・・
「イレーネなんでわらっているの?」
「お父様は本当に困った方と思ったのですよ」
「そうなの。ぼくにウソばっかりついていたけど今度はウソじゃなかった!父上が国いちばんのこうきでいい女をつれてくるって!イレーネはほんとうにそのとおりだもん」
イレーネは子供に軽く言っただけだろうと思うのだが〝高貴ないい女〟とアランが評してくれていたのに少し驚いて頬がまた熱くなったような気がした。
「イレーネ、なんで今度は赤くなっているの?あっ、父上だ!」
レミーは弾けるように飛び出して行った。体当たりするレミーをアランが高く抱き上げていた。嬉しそうに笑うレミーとアランは二人の間に入っていけないぐらい本当に仲のいい親子だ。アランがレミーを肩に乗せるとレミーがイレーネに向って言った。
「イレーネ来て!」
レミーは片方の手でアランの髪の毛を掴んでイレーネに手招きをしている。アランは痛そうにしかめっ面だ。イレーネはクスリと笑って二人のところに行った。
「おはようございます。陛下」
「ああ、おはよう」
「イレーネ、あのね」
「うわっ!レミー動くな!落ちるぞ!うわっ、いってぇー」
レミーがバランスを崩してアランの肩から落ちそうになった。イレーネは慌ててそれを支えて、レミーも必死でアランの髪を引っ張ったので落ちるのは免れた。アランとイレーネは同じタイミングでほっと大きく息を吐いた。
「陛下!レミー様が落ちたら大変でございますでしょう?もう下ろして下さいませ」
「イヤだもん」
「嫌だってさ」
アランがニヤリと笑って言ったのでイレーネは、むっとした。
「レミー様、私が抱いて差し上げますから宜しいでしょう?」
「うん。イレーネがいい!やわらかいしいいにおいだもん」
レミーはそう言ってイレーネの胸の中に飛び込んだ。
「おい!何だそれ?お前ずるいぞ」
レミーはイレーネに抱っこしてもらって甘えているのをアランが忌々しげに睨んだ。
「陛下、先ほどクロード様が探されておりましたから、早く王府に行かれた方が宜しいかと。それでは私達は失礼致しますわ」
イレーネがつんとして言うとさっさと立ち去りだした。レミーは父を見た。悔しそうな顔をしている。イレーネはレミー専用だと言ったのに何かと彼女に構ってくるのが心配だっだ。前より絶対会いに来る回数が多いのだ。父親にイレーネが取られそうで心配だった。直感で父親がライバルだと感じていた。
「父上、イレーネはぼくせんようだからね。大きくなったらぼくの寝どこにはいるんだもん。だからとっちゃダメだよ」
イレーネもアランもぎょっとして小さな王子を見た。
「イレーネ早くいこうよ。じゃあ父上、ごきげんよう」
小さな王子はにこにこ笑いながら父親に手を振ったのだった。
今回やっとアランの正体が出せました。ほっとしてます。前置きみたいなものが続き、うずうずしてました(笑)私の路線から想像された方も多いと思いますが・・・分かりやすいパターンの伏線でしたしね。宰相ごときとの恋愛でわざわざ隣国まで行かせません!イレーネには幸せになってもらわないとですね~という訳でこれからどんどん盛り上げていきたいと思います。