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誰が勝つのか

「それではアイス、チョコ、かき氷の中から1つ思い浮かべて人に見えないようにスマホかメモに書いて」

 兄が進行するのに合わせて僕たちが動く。僕はスマホにチョコレートと打ち込んで、画面を伏せた。


「これ、アピールの順番も大事だからじゃんけんで決めよう。負けた人からね」

 僕のパーを出す癖を祖母も知っていたようだ。僕、祖母、兄、母の順番に決まった。


「うんっと……甘くて溶ける」

 僕は無難にアピールする。他の3人が何を描いているのかわからない今はそれが最善に思えた。

「……歯にしみる時があるねぇ」

 祖母が言った。なんだ、祖母はチョコではないのか。指名するとしたら祖母かな?

「カップに入れてあるものだよ」

 兄が言った。兄もチョコではなさそうだ。僕は焦りを感じる。もし、母まで違っていたら……。

「食べるとキーンとなるわね」

 母が言った。かき氷かな? 残念ながら仲間は居なさそうだ。僕はそれぞれの回答を予測する。かき氷が歯にしみるとはあまり聞かない気がする。しみるといえば甘いものか、冷たいもの、おそらくアイスクリーム。カップに入っているのはかき氷かアイスクリーム。そして、キーンとなるかき氷。祖母か母と答の被っていそうな兄を指差すのが僕の必勝方法だけれど、母も祖母も兄の事は指差さないだろう。仲間の可能性があるから。となると勝負に出るしかないか。兄と被って居るのは祖母か母か。


「では指名タイム。いっせーのーで!! で少数だと思う人を指差すよ、いっせーのーで!!」

 母と兄と僕が祖母を指差した。祖母は僕を指差している。上手くいったぞ。これで兄が祖母と同じ答なら僕の勝ちだ。


「2度目行くよ!! いっせーのーで!!」

 僕は祖母を指差したまま、他の3人の指先が自分に向かっているのを見た。

 しまった。祖母は、2人を指差さないことで仲間だと伝えたんだ。僕の無難なアピールがそれに負けた。



「雄大、お題は何だったんだい?」

 祖母がのんびりとした声で僕に問い掛ける。

「チョコレート」

 僕が答えると3人ともが安心したような顔をした。やっぱり仲間は居なかったらしい。

「母さんはかき氷だよね」僕が確認する。

「そうよ。わかり易過ぎたかしらねぇ。ちょっとお茶取って来るね」

 母はそういって空のグラスを持って立ち上がった。母がグラスを2つ持って帰ってきて、一つを祖母に渡した。受け取った祖母は喉を鳴らして飲み干してからこう言った。

「結構、頭つかうんねぇ、わたしゃ、アイスクリームを思い浮かべていたよ」


「俺の答次第で母さんか、ばあちゃんの勝ちが決まるな」

 にんまりと兄が笑ってもったいつけるようにゆっくりスマホを出した。

「アイスクリームだよ」

 兄の言葉に祖母がガッツポーズをして喜んだ。普段の優しい雰囲気に似合わず祖母も負けず嫌いなのだ。



「じゃあ、本番してみようか」

 勝って上機嫌な兄が言う。

 リベンジに燃える僕は力強く頷いた。

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