一幕 三年前…
三年前のこの物語の主人公とヒロイン、その二人の話
三年前…
寿人「僕は此処の大学じゃなくて、もっと都会の大学を目指すことにしたんだけど。」
学校からの帰り道、そう言いながら心臓をバクバクさせているこの少年は稲田 寿人、この時は広島の高校に通う三年生だ。そして一緒に帰っているのは彼の彼女、沖島 千香で、この日二人は進路指導があり帰りが遅くなっていた。
千香「ふーん。良いんじゃない?」
思ったより安心できる返事で寿人は胸を撫で下ろした。予想では別れようなんて言われるかと
思っていたのだ。だが遠距離恋愛になってしまう可能性が高かった。なぜなら、
千香「私は山口とかそこら辺にいこうかなぁ。まぁ、どこでも一緒か!」
なんて、目標の定まらないことをずっとこの少女は言っているからだ。そんな危なっかしい少女を寿人はとても好きだった。寿人は小学校、中学校、高校と受験をし勉強にずっと追われていた。しかしこの少女は「やりたいことをやる。自由に生きる」をモットーにしているかのような生活で、その自由さに寿人は惚れたのだった。
寿人「まぁ、今の時代デジタルで色々できるしね。心配して損したよ。」
今、この時代は遠距離でも様々なことができて、ビデオ通話などで会うこともできる。その点の自由度も上がっていた。
千香「なにそれ〜。あ、ケーキ買ってこ?ケーキ!」
通学路の途中にあるケーキ屋を指差し、彼女は寿人を引っ張る。
寿人「はいはい、全く…自由だね、千香は。」
そんな高校三年生を過ごし、受験。二人はめでたく大学に合格した。寿人は大阪の大学、千香は島根の大学に進学し、今までの関係を続けながらそれぞれ一人暮らしを始めた。しかし千香は自由な性格ゆえか、片付けや色々な支払いなどが壊滅的に苦手だった。そのため彼が電話やビデオ通話などで彼女をコントロールすることになり、今に至るのだ。
次回から本編入ります!