序幕 いつもの目覚め
真っ暗な世界から一気に引き戻される。目を開けると、いつもの僕の部屋だ。
「ん〜!はぁ…」
大きく息をつき、立ち上がってカーテンを開ける。真っ白な陽光とともに、いつもと変わらない風景が目に飛び込む。いつも変わらない風景が僕は好きだった。でも、少し悲しい気持ちにもなる。簡単な事で、今度来るであろうイベントの後ではこの部屋の狭さじゃ暮らせないからだ。でも、その時は彼女と一緒に…
お湯を沸かしながらチョコクロワッサンをレンジで二十秒程加熱する。するとチョコが適度に溶けて自分好みの熱さと食感が楽しめる。加熱が終わると皿の上にサラダと一緒に盛る。良いタイミングでお湯が沸いたのでインスタントコーヒを淹れて、皿と一緒にテーブルへ。
「いただきます。」
一人で暮らすとどうしても挨拶が疎かになりがちで、いつも意識的に言うようにしている。そして一口クロワッサンを頬張ると シャクッ! という音と共にバターの匂いとチョコの甘さが口一杯に広がる。
「うん。美味しい…で、今日の予定は…」
カレンダーを見るとそこには、
「大学はいつも通り、あー…あと千香の片付け見なきゃ…」
朝食を終えると歯を磨き、髪を整え着替える。そして準備をして、家の玄関まで行く。ドアを開けるといつもの風景が見える。一歩外に出て、振り返って家の中を見るといつも通り片付いている。
「千香ももうちょっと片付けるの覚えてくれればな…」
彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ
「まぁ、なんとかなるか。」
そんな小言と少々の諦め、次への希望を見つつ僕は今日も大学へと向かう。