便所飯その2
どうしよう!? トイレを水浸しにしたのがバレた!
で、なんで便器から女の子が出てくるのー!?!?!?
私の思考は完全に停止してしまい、動けなくなってしまった。
女の子は私を下から上へ舐めるように観察している。
「ふーん、ずっと見ていたけれど直に会うのは、はじめてだわ」
なんだか気味が悪い。
「だっ、誰!?」
「え!?私の事を知らずにここのトイレを使っていたわけ!? ありえなーい!」
なんか、口ぶりが一昔前の女子高生みたいだな?
女の子はふふんと鼻をならしてこう言った。
「まあ、知らないほうがいいってことも世の中にはあるのよ。私はあなたのことよく知ってるけれど」
「わっ、私の何を知ってるって言うの!?」
思わず声がうわずる。
「いじめられてて友達がいないとか、保健室登校だとか、心療内科に通ってるとか、彼氏がいなくてムラムラして……」
「だあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!それ以上言うなあー!」
私は謎の女の子の口を両手で塞いでそれ以上言わせるのを阻止した。
私も乙女だ! これ以上言わせてなるものか!
女の子は私の両手をどけながら、わかった、わかった、と言って笑った。
「とりあえず、卵焼きのお礼があるしね! もう長いこと私のことはみんな忘れていたから嬉しかったし……私は愛美って言うの。よろしく」
「よ……よろしく」
「伊乃里ちゃんのことはよく知ってる。 これからね、私に卵焼きずっとくれるなら、伊乃里ちゃんをちょっとした魔法少女にしてあげる!」
「魔法少女……?」
「そう!好きな時に霊体になれるようにしてあげる!
そしたら異世界へも行けるし人の心の中にも入れるし、遠い場所にもひとっ飛び!
あ、もちろんね、霊体だから幽霊や神様とも話せるよ」
「えっと、霊体になってる間、私の体はどうなるの?」
「私が借りることになるけど、それでもいい?」
愛美はニヤッと笑った。
「じょ、じょ、冗談ーー!!」
こんな得体のしれない存在に大切な体を預けられるものか!
「わははは、嘘嘘! 体と魂って実は見えない鎖で繋がれてるから大丈夫! ただ眠った状態になってしまうけれどね」
それから愛美はちらっと横目で私を見て言った。
「実は私は弁財天の卵なのよ」