便所飯その1
私は吐き気を堪えながら弁当包を広げる。
「うう…臭い」
え?別に便所でなくて廊下とか屋上とかがある?
いやいやいや、ああいう青春ドラマのワンシーンに出てきそうな場所は私の天敵であるリア充や不良の溜まり場と化している。
屋上や廊下で仲間と弁当というのに憧れを感じる連中は多い。
なので私は何故か誰も寄り付かない旧校舎のトイレを陣取っている。
便器の蓋は空けて座っているから臭いがするが、しかたない。
私はお世辞にも華奢なほうではない。デブとまではいかないがいい体格をしている。
そんな私が安っぽいプラスチックでできた蓋に座ろうものならヒビが入ってしまうかもしれない……さすがにそれはヤバい。
「……あ!」
私としたことが大好物の卵焼きを、あろうことか便器の中に落としてしまった。
「さようなら、私の卵焼き、せめて成仏してくれ……」
私は仕方なく流すことにした。
ズゴゴゴゴゴゴ…………!!!!ごぷッ、ぶしゃあああああああ!!!!
「え!? 詰まった!?」
卵焼きが詰まってしまったのか、水が便器から溢れ出してきた。
しかも尋常な量ではない水が。
あっという間に足元は浸かってしまった。
……ヤバい。
逃げるか!?
いや、だって誰も私がやったって気が付かないはずだし……!
ん!?ちょっと待って??なんか便器から出てきた!?
んなバナナ!
便器から出てきたのは私と同じ高校の制服を着たツインテールの女の子だった。
首には太めのロープを輪っかにしたものがネックレスのようにぶら下がっていた。
その子は 口を何故かもごもごさせている。
「……ごっくん、あー美味しかったあ!」
女の子はそう言うと背伸びをして見せた。